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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
ロームズ医学大学開校

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開校式・入学式(1)

医学大学の入学式は、次話になりました。

 午後3時、領主屋敷に国務費担当大臣のメイデン伯爵37歳が、生き別れになっていた息子ハルト11歳を連れてやって来た。


「いらっしゃいませメイデン伯爵様。家令のオールズと申します。只今主は、ネイゼス中級学校長と一緒に出掛けております。直ぐお部屋にご案内いたします。メイド頭のソルがお世話いたしますので、ご用がありましたら何なりとお申し付けください」


オールズの挨拶に続き、ソルが笑顔で礼をとり、他のメイドに荷物を持たせて部屋へと案内していく。


「父様、とても立派なお屋敷ですね。それに、メイドさん達も優しそうです」


「そうだなハルト。ご領主であられるロームズ辺境伯様は、成人されたばかりの15歳で学生だが、文武両道であり医師資格も取られている天才だ。誘っていただいた期待を裏切らぬよう、しっかりと勉学に励みなさい」


「はい父様。必ずロームズ辺境伯様の後輩として、ラミル上級学校に入学します」


ハルトは希望に胸を膨らませ、キラキラした瞳で父親に誓う。

 母はメイデン伯爵家のメイドだった。主との恋愛を許さなかった正妻に追い出され、死ぬまで父親の名を明かさなかったが、「お前の父親は立派な方です。訳あって結婚は出来なかったけど、とても優しい素晴らしい方です。だから、奨学生として上級学校に行けるよう、勉強を頑張らねばなりません。そして王宮で働きなさい」と、口癖のように言っていた。


 ハルトは母を亡くし死にかけていたところを、イツキの手紙を読んだ父親によって助けられた。正妻と別居してでも自分を引き取ってくれた父親は、母が言っていた通り立派な伯爵様であり大臣だった。

 突然貴族に、しかも伯爵家の子息となったハルトは戸惑ったが、母の遺言でもある王宮勤務を目指して、頑張ろうと決心しロームズにやって来た。



 午後6時、イツキは夕食前に、屋敷に住む全員をリビングに集めた。


「この屋敷で暮らす新しい仲間が加わりましたので紹介します。ロームズ領の職員になったエリーザと、中級学校に入学するハトルです。エリーザは屋敷の事務仕事と、王宮メイドの経験を生かし、ロームズ領以外からの来客の世話をします。ハルトはメイデン伯爵の子息ですが、僕がロームズ中級学校の入学を勧め、第1期生としてラミルから来て貰いました。では、自己紹介を」


イツキは暖炉の前に立ち、屋敷に住む者とメイド達にカルート語で2人を紹介する。


「本日より3階でお世話になるエリーザです。精一杯務めますので、どうぞよろしくお願いいたします」


エリーザは屋敷に住む者の顔ぶれに緊張しながらも、王宮メイドらしく美しい所作で礼をとった。


「ハルトです。一生懸命勉強を頑張ります。ロームズのことは何も分かりませんが、早く慣れて友達も作りたいと思います」


ハルトはこの場に居るのが誰なのか分からないが、子供らしい挨拶をして頭を下げた。


「それでは、私から屋敷に住まれている皆さんの紹介をいたします。1階の部屋から順に、リビングの隣の部屋は医学大学のムッター薬学部教授、その隣は空室で、その隣は領内の軍と警備隊の事務担当であるグライス準男爵、向かえの部屋が屋敷の警備隊長コウタさん、その隣は教育部からの出向で来られたゴウダイ副部長……」


家令のオールズは、部屋毎に名前を呼び、呼ばれた者は手を上げ簡単に挨拶をする。

 この自己紹介は、遠いロームズに息子を預けるメイデン伯爵の為に行っている。もちろんメイドを指導する立場のエリーザに、全員の顔を覚えさせるためでもある。


「13日からは、医学大学の入学式に向けての来賓が、レガート国、カルート国、イントラ連合国からもやって来る。学生の一部もこの屋敷で暮らすことになっている。暫く大所帯になるが、皆さん、折角ですからこの機会に親交を深めてみてください」


イツキは領主として今後の予定を言い、来客ではなく新しい住人が増える時は、必ずこうして集まり顔を覚えてもらうと伝えた。

 続いてオールズは、医学大学の入学式の2日後までは滞在者が多いので、食事時間と食事場所について説明していく。


「屋敷で暮らしている者は、今まで通りダイニングで食事し、来賓は会議室で食事をしていただきます。昼食が必要な方は、朝食時間に必ずメイドに伝えてください。また、朝夕食が要らない場合も早目にお知らせください。なお、お風呂とトイレにつきましては、これから先、男性が屋敷の外に造った新しい風呂とトイレを使うものとします。連絡事項は以上です」


オールズは必要な連絡事項を伝え、新しい風呂とトイレは、今から使用を開始すると言った。この屋敷の欠点は、部屋数は多いのに風呂とトイレが少ないことだった。

 先日見付けた3階まで一杯に住人が増えれば、最大50人が住むことが出来るのだが、トイレと風呂は明らかにケンカを誘発するレベルだった。


「おお、それでは、今夜から新しい大きな風呂に入れるのだな」

「ムッター教授、それでは夕食前にご一緒しましょう」


風呂好きなムッター教授とデローム教授は、嬉しそうに立ち上がると、我先にとリビングを出ていった。他の者達は夕食を食べにダイニングへと向かう。この屋敷のダイニングには、8人掛けの大きなテーブルが2つ設置されており、同時に16人までが食事をすることが出来た。


 今日現在の滞在者は、イツキ、パル、ハモンド、メイデン伯爵、カイ領主の子息クスコ。住んでいるのは家令のオールズ、グライス、コウタ、事務官のビンツ、ハキル学長、4人の教授、ネイゼス中級学校長、人事部エンケル副部長、教育部ゴウダイ副部長、新しく入ったエリーザとハルトで合計19人である。


 食後にそれぞれ自分の部屋に戻ったところで、イツキは3階に住むハモンドとパルとエリーザに、ハルトの面倒を見るように指示を出し、自分はメイデン伯爵を連れて自分の執務室に向かった。



「3階は主に薬学部の学生と、女性と男性の事務官が暮らすことになります。少し寂しいかも知れませんが、勉強をする環境としては最適だと思います」


「はい、ありがとうございますロームズ辺境伯様。この屋敷は、本当に教育関連の方ばかりで安心です。でも、本当に宜しいのでしょうか……このような特別待遇で……」


メイデン伯爵は、ハルトを他の家に下宿させるか、カルート国の生徒と同じ寮でも構わないとイツキに申し出たのだが、イツキがどうしても自分の屋敷に住まわせたいと言って、少し強引に決定していた。


「メイデン伯爵、実はまだ、話していない重大なことがあります」


イツキは自分の好きなハーブティーを、2人分のカップに注ぎながら切り出した。


「医学大学の特別医学部に、ハキ神国の第2王子ラノス様と、ハキ神国軍総司令の子息でもある従者のクロダ君が入学してきます。そして来年から、カルート国のシルバ皇太子も、聴講生として入学してきます」


「な、ハキ神国の王子!それにカルート国の皇太子ですか?」


予想外の話の内容に、メイデン伯爵は驚きの声を上げ、大きく目を見開く。


「そうです。そして2人の次期国王は、この屋敷に住みます。どうやらハルトは、3つの国を繋ぐための大きな役目を神より授かったようです」


イツキはそう言い終わると、ゆっくりと香りのよいハーブティーを飲み始める。今夜のハーブティーは、緊張を和らげ精神を安定させる効果のあるものだった。


「…………」


メイデン伯爵は、あまりの内容に頭がついていけず、震える手でカップに口をつけた。


「そして僕は、レガート国のリバード王子も、この屋敷に連れてきます。ハルトには飛び級で……2年後には上級学校に入学して貰います。そしてリバード王子に仕え、3国の王子が連携してギラ新教と戦えるよう、僕の下で働くことになります」


「ロームズ辺境伯……あなたは、貴方はいったい何者なのですか?」


3国を繋ぐとかリバード王子に仕えるとか……それがまるで決定事項であるかのように言い切る目の前の領主に、メイデン伯爵は得体の知れない恐ろしさを感じた。

 ブルーノア教会の神父だと名乗って手紙をくれたが、話す内容はまるで秘書官や国王のようである。いや違う……まるで……まるで神の使いのようではないか。


「メイデン伯爵、僕はサイリス(教導神父)を従える者です。そして、ランドル大陸の民を、悪新教であるギラ新教から、守る役目を神から与えられた者です」


イツキの言葉にメイデン伯爵は再び目を見開き、慌てて立ち上がるとドアの前まで下がり、カタカタと小さく震えながら最上級の礼をとった。


「ど、どうぞハルトを、よ、よろしくお願いいたします」


メイデン伯爵は、それだけ言うのが精一杯だった。イツキが放つ神気のようなものに気圧され、頭を上げることも出来ない。


「大丈夫です。私に全てお任せください。ハルトはメイデン家の跡取りとして、立派に役目を果たすでしょう。どうぞお立ちください。メイデン伯爵、僕はロームズ辺境伯です。どうぞお間違えなきようお願いします」


イツキはにっこり笑いながら、メイデン伯爵のカップにハーブティーを注ぎ足した。




 ◇ ◇ ◇


 1月12日、ロームズ中級学校の開校式と入学式が行われた。

 会場は医学大学3階の大講堂である。

 列席者は、領主であるイツキ、役場長であるドーレン男爵、オールズ準男爵、グライス準男爵、パル騎士と役場の職員数名、カルート国からは隣町のカラギを預かるスニフス、ウエノ村村長のベディト。そして、ネイゼス校長と教師10名、生徒88名とその親達90人だった。


「皆さんこんにちは。ロームズ辺境伯、キアフ・ルバ・ロームズです。今日ここに、ランドル大陸では類を見ない、飛び級ありの特進コース、普通の進学コース、就職専門コースという、3つの将来が選択できる特別な中級学校が開校いたしました。それぞれのコースは、2年生から選択することになります。ただし、特別に学力ありと認められた者は特進コースに進み、4年で卒業し、13歳から入学可能になった、ラミル上級学校の受験を目指します。就職専門コースを選択する者には、農業・商人・木工職人・その他の技術職に就けるよう、特別講師による教育を行い、社会に出ても即戦力になるよう指導を行います」


「オオーッ!」(父兄の皆さん)

「エエーッ!」(教師と生徒の皆さん)


領主様の話を聞いた全員が、想像以上のコース内容に、期待と驚きの声を上げる。

 中級学校と言えば、10歳になる年から入学可能で17歳まで在学でき、5年から6年で卒業するのが定番だった。

 順調に学んだ子は、10歳になる年に入学し14歳で卒業する。それは上級学校が15歳になる年から入学が可能だったからである。


 しかしイツキは、ロームズ中級学校の在学年数を、4年間という1年短縮した特別コースを設けたのである。

 ちなみにハルトは11歳で、既に2年間中級学校に通っていた。

 今回イツキは学生の募集にあたり、既に中級学校に在学している者も、2年生までの在学生はOKとし、学力によって学年を決定すると要項に書いていた。

 入学生の内54人は、9歳か10歳で初級学校を卒業したばかりの子供達だったが、残りの34人は、既に中級学校に通っていた子供達だった。

 カルート国からの転入者は、質の高い教育を期待して入学してきた者が多かった。


 教師達が驚いたのは、就職コースの話を聞いていなかったからである。

 校長は聞いていたのだが、早くても来年からのコース選びになるので、専門の教師や講師を雇う方が先だと思い、詳しい要項が出来てから説明するつもりでいた。


 驚きの領主の話から始まった入学式も、なんとか無事に終わり、生徒達は医学大学の研究棟の2階へと向かう。新1年生の54人は2つのクラスに分かれ、1ー1、1ー2の教室に向かう。転入組の生徒は、2ー1、3ー1、3ー2のクラスへと向かった。


 レガート国から来たハルトと、薬草園で働くピアラの妹ミリム12歳が向かう3ー1は、レガート国語で授業を行うクラスだった。他のクラスは全て、1年間はカルート国語で授業が行われる。

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

怒濤の3月も間もなく終わります。少しは落ち着いて執筆活動出来るようになると思われ、サクサクと話を進めていくぞ!と、自分に活を入れました。

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