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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
入学試験と旅立ち

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試験結果と卒業式

 12月16日、朝食を食べに行くと、食堂内は大騒ぎになっていた。

 卒業試験の結果は、午前中に張り出されていた。

 3年生の追試者は、明日の午前中に追試が行われることになっている。


「奇跡だ!追試が1つしかない……」

「ネロス、追試になって喜ぶな!今日は午後から超スパルタで勉強だぞ」

「分かったよクレタ。ありがとう。俺、みんなと一緒に卒業できそうだ」

「当たり前だろう。俺と同室なのに留年とか……俺のプライドが許さない!」


イツキに個室を譲り、学年トップのクレタと同室になっていた侯爵家3男のネロスは、神とクレタとイツキに感謝しながら、追試者一覧を見ながら感動していた。

 3年生の授業は午前中までで、午後からは自由時間となり、寮で荷造りをしたり、明日の謝恩会の出し物の練習をしたりする。



 昼食時間、いよいよ1年生と2年生の試験結果が貼り出される。

 皆の関心は、自分の成績も然る事ながら、イツキの成績に向けられていた。

 イツキを天才だと信じているイツキ親衛隊は、イツキは絶対10番以内に入っていると公言し、流石にそれはないが、総合得点は30番以内くらいで、科目によっては10番以内の科目があるだろうと予想する者が半数。番数が上位でも、欠点が必ずあると予想する者が半数いた。


「イツキ君ありがとう。今年は1年から3年まで、1人の留年者も出さずに済みそうだよ。14日の職員会議で、これはイツキ君効果だと教師達が言っていた」


食堂に向かうイツキに、にこにこと嬉しそうに話し掛けてきたのはオーブ教頭だった。


「特に2年生は驚く程に成績が上がった。イツキ君が同じ試験を受けると決まって、2年生の授業を1度も受けたことがないイツキ君に負けるなと、担任3人がかなり発破を掛けたんだ」


やはり嬉しそうにイツキに声を掛けたのは、2年の担任であり化学部の顧問であり、経済学と化学を教えているカイン37歳だった。


「それにしても、イツキ君はいったい何時勉強をしているんだい?あんなに毎日忙しそうに働いていたのに、天才って勉強をしなくてもいいのかなぁ……」


「ポート先生、僕はもの心ついた時から勉強を始めて、9歳で一通りの勉強を終らせました。普通の子供が遊んでいる時、ひたすら勉強をしていたんです。僕は学ぶことが楽しくて、知識を身に付けることに貪欲だっただけです」


 カインの隣に居たイツキの担任のポート30歳は、イツキの話を聞いてため息をつく。

 いくら貪欲でも、9歳までに一通り学べる訳がない……と意見したかったが、教え子であるイツキの成績が、群を抜いていることが嬉しかったし自慢だった。


 食堂に入ると、全員の視線がイツキに向けられる。

 待ってましたとばかりに、親衛隊長のクレタが、親衛隊の全員を引き連れてイツキの前に整列する。


「イツキ様、ぶっちぎりの1位おめでとうございます。親衛隊の全員、欠点を取ることなく無事卒業と進級できます。ひとえに、イツキ様のお陰です」


「「「おめでとうございますイツキ様。そして、ありがとうございます」」」


クレタの畏まった祝辞と挨拶に続き、親衛隊員の祝辞と感謝の言葉が贈られる。


「皆さん、ありがとうございます。これからも皆さんの手本となれるよう頑張ります。・・・僕……1位だったんですか?」


イツキは挨拶を返しながら、自分が1位だったのかとクレタに訊いた。


「もちろんですイツキ様。ご自分で確認してください」


クレタはそう言うと、掲示板へと案内するように歩き出す。

 掲示板の前で大騒ぎをしていた学生達は、イツキが来たと分かり道を開ける。


「ねえイツキ君、確か君はレガート文学史とレガート経済史は解答できなかったと言っていたよね?僕の聞き間違いだったのかな?」


2年A組の教室でイツキと一緒に試験を受けた、執行部副部長でありイツキ組のヨシノリが、、確認するように質問した。同じクラスの学生も「俺も聞いた」「俺も聞いたぞ!」とちょっとだけ怒っている感じで同意する。


「はい、()()()解答できませんでした」

「「「…………」」」(回りに居た皆さん)

「そ、そうだったんだ……()()()ね・・・」


元気のない声でヨシノリは返事を返した。

 実はヨシノリ、レガート文学史とレガート経済史は得意だった。

 我こそは1位だと思っていたのに、レガート経済史はイツキの従者であるパルが1位でイツキは2位。結局ヨシノリは3位だった。

 そしてレガート文学史は、植物部のリョウガが1位でパルが2位、イツキが3位でヨシノリは4位だった。


 結局総合得点2位のパルに66点差をつけ、イツキは堂々の1位だった。

 イツキ組の他の2年生は、ヨシノリが6位、執行部副部長のミノルは8位、執行部会計であり発明部のインダスは13位、風紀部副隊長のヤンは29位でギリギリ上位30位にランクインしたが、同じ風紀部2年隊長のエンドの名前は無かった。でも、欠点も取っていなかった。


 3年生のイツキ組は、不動のトップ4を、クレタ、エンター、インカ、パルテノンが占めており、親衛隊副隊長のモンサンは20位に浮上。体育部の部長でありイツキ第2親衛隊の隊長ピドレは、上位には入らなかったが欠点は無かった。

 1年のイツキ組は、ナスカがトップに返り咲き、2位がイースター、3位がトロイだった。トロイは苦手な外国語を、イツキのため、ランカー商会のために克服した。


 今回の試験の成績で、来年度前期に北寮の入寮が決まったのが、新3年がパルと、新2年がナスカとイースターだった。ヨシノリは元々公爵家の子息で北寮である。





 12月17日午後、3年生はお世話になった先生方を招いて、体育館で謝恩会を行う。

 歌あり芝居あり一芸ありと、多彩な出し物を繰り広げ、笑いあり時折ちょっぴり涙ありで、残り僅な学園生活を楽しく過ごした。

 夕食時間は、在校生が卒業生に感謝を込めて、食堂で送る会を行う。

 各クラスで出し物を考え発表した後は、部活に分かれて違う出し物をしたり、部長や副部長や尊敬する先輩に、感謝の贈り物をしたりする。


 イツキは発明部の出し物に参加出来なかったが、贈り物を用意する係りに立候補し、新しく開発したペンを贈った。

 ちなみに今年度の発明部の3年から、部長のユージと副部長のペイルが、無事に隣国ミリダに国費留学が決まっていた。イツキにミリダ語を鍛えられた2人は、なんとかミリダ語でAを取ることが出来た。

 

 最後は今年度の執行部と風紀部の役員に成った3人に、在校生を代表してヨシノリとヤンが贈り物をする。これは全校生徒からカンパを募り、残る執行部と風紀部の後輩が用意したものである。


 学生達は午後10時頃まで、3年生との別れを惜しむように大いに盛り上がった。





 12月18日、とうとう卒業式の日がやって来た。

 午前10時、ホームルームを終えた3年生が、担任の教師の後ろに続き体育館に入場してくる。

 在校生並びに参列者は起立し、卒業生達に温かい拍手を贈る。


 ボルダン校長のやや長い挨拶の後は、3年生の優秀者表彰を受ける者が名前を呼ばれ、壇上に上がり校長から賞状を受け取る。

 校長は先ず、今年度の上級学校対抗武術大会の成績を読み上げる。

 そして、団体戦の優勝、準優勝、続いて個人戦で6位内に入賞した者の中から、3年生の名前を全員発表する。


「武術表彰、優勝、槍団体、ガイガー。剣個人優勝、エンター。体術個人優勝、インカ。以上3名は、上級学校対抗武術大会の代表者として前に出なさい」


教頭のよく通る大きな声が、体育館の隅々まで響いていく。

 名前を呼ばれた3人は、壇上に上がり校長の前に整列していく。


「武術表彰、団体戦槍部門優勝。部長ガイガー。上級学校対抗武術大会において、槍団体戦で見事に優勝し、ラミル上級学校に16年振りに優勝旗を持ち帰った。その功を称え優秀者として表彰する」


ガイガーは校長から賞状を受け取ると深く頭を下げた後、側に置いてあった優勝旗を校長に手渡した。参列者全員から優勝を称える拍手が贈られる。

 続いて個人で優勝したエンターとインカが賞状を受け取り、割れんばかりの拍手を貰っていた。


「続いてラミル上級学校長表彰、アタックイン代表チーム、ポルムゴール代表チーム。2つのチームの代表として、文学部部長ロードス、体育部部長ピドレは前に出なさい」


教頭の校長表彰という言葉と、その表彰者の名前を聞いて、学生達から大きな歓声が上がる。

 校長表彰は毎年行われる訳ではなく、学校に特別貢献をした者や団体が居た場合にのみ表彰されるので、学生達の喜びは大きかった。


「ラミル上級学校ポルムゴール代表チームは、ロームズ辺境伯杯において、全上級学校、地方のレガート軍、警備本部隊、軍本部、王宮代表チームを破り、見事に優勝した。また、ラミル上級学校アタックインチームは、マキ領代表貴族チームに破れはしたが、見事に準優勝に輝いた。レガート国全土に我が校の名を轟かせた、出場者全員を校長表彰するものである」


ロードスとピドレは、恭しく人数分の校長表彰を受け取った。



「続きまして、特別功労表彰を行います。発明部、植物部、化学部の部長は代表して前に出なさい」


教頭の言葉に、一瞬参列者全員が『えっ?』という顔をする。

 特別功労表彰は、これ迄のラミル上級学校の長い歴史の中でも、数回しか行われていない表彰である。学生や参列者達から「おおーっ!」と驚きの声が上がる。


「発明部、植物部、化学部は、力を合わせレガート国の特産品を作り上げた。その功績を称え国王陛下より、特別功労賞を賜ることになった」


校長が特別功労賞の説明をすると、壇上にエントン秘書官が上がってきた。

 会場に居た全員が、国王陛下の代理である秘書官に、正式な礼をとり頭を下げる。

 3つの部の部長であるユージ、パルテノン、クレタは、緊張して壇上に上がり、秘書官の前でもう1度礼をとった。


「特別功労表彰。ラミル上級学校の発明部、植物部、化学部は、ポルムゴールとアタックインという特産品を作り、全上級学校のみならず、全国民の手本となり、国難である薬草不足を解消し、ポムによる新たな産業をレガート国にもたらした。その多大なる功績を称えここに表彰するものである」


エントン秘書官は、3人の部長に各々の部活の名前の入った表彰状を手渡した。

 副賞として3つの部には、国王陛下より特別活動費という名目の賞金も贈られた。もちろん会場は拍手と歓声に包まれていく。



「続きまして、卒業証書授与式を行います。3年A組、文官コース代表モービル(植物部副部長、ロームズ医学大学助手決定)、B組軍コース代表インカ、C組警備隊コース代表エンター。そして、3年生首席クレタ。以上の4名は、成績優秀者として代表で卒業証書を受け取る者である」


4人は壇上に並び、クラスの代表、学年代表として卒業証書を校長から受け取る。

 代表者と同時に、同じクラスの学生は起立し頭を下げていく。

 卒業証書授与が終わると、校長は壇上から教員達の席に戻っていき、モービル、エンター、インカも自分の席に戻っていく。

 クレタはその場に残り演台の前に移動すると、卒業生を代表し、先生方・列席者・自分を育ててくれた家族・そして在校生に向かって、用意していた謝辞を読み上げていく。 


 クレタの謝辞は、大切な友へという手紙形式で始まった。

 その友とは明らかにイツキを指しており、それは全学生並びに全教師にも分かった。

 そしてクレタは、友への感謝と先生方への感謝、そして愛情一杯に育ててくれた両親への感謝を語り、掛け替えのない同級生との友情を語り、最後に後輩たちへのメッセージで締め括った。


 最後の言葉は、「我々卒業生は、後輩に恥じることなく、これからもギラ新教と戦い、如何なる時も誓いを忘れない」だった。

 クレタが話し終わると、3年生とその家族は全員起立し、恩師に向かって一礼し、列席者に向かって一礼する。


「これを持ちまして、1098年度、ラミル上級学校の卒業証書授与式を終了いたします」


教頭は少し鼻に掛かった声で、卒業式の終了を告げた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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