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貴族院2ー12 エンシェント・ドラゴンと帰還

「さて、帰ろうか」


 俺の言葉にアナスタジウスがぎょっとする。


「い、今は夜だぞ?」

「ああ、その通りだ。夜だな」

「夜は危ないだろう? 視野も確保できない上にモンスターからは丸見え……普通は野宿するだろう」

「ああ、そのつもりだったが、まだ夜になっても間もない。こんな時間から野宿は面倒だ」

「面倒だからと言って危険をかえりみず帰還するのか?」

「そう危険なことか?」


 俺はクイと顎でメンバーを見直させる。

 メンバーの中には賢者級魔導士フェリスにエンシェント・ドラゴンのシェスタ。それに魔王までもいるのだ。そこに勇者とくれば一国相手でも勝てそうなメンバーではないか。

 死にかければ、普通の少女の中にいる慈悲の神エイルが傷を癒してくれるだろう。

 こんな親切サポートまでありながら臆して帰らないという選択肢は俺にはない。

 それに気づいたのかアナスタジウスが――、


「これは戦力過多だね」


 ふぅとため息を吐きながら仕方なしという顔になるアナスタジウス。


「それじゃ帰路につこうか」


 俺が言うと同時にフェリスが索敵魔法を飛ばす。

 俺もすかさず索敵をする。


「モンスターがこっちをみているが、やはりというべきだろうか? エンシェント・ドラゴンのシェスタに気圧されて近づこうとしない」

「ふむ、私には何も感じないが……」


 アナスタジウスがシェスタを見つめる。


「普通の人間には感じ取れんよ。勘がいい奴なら感じるくらいだろう」

「私は魔除けか何かか?」


 シェスタがぶすりと頬を膨らませる。


「まぁそう拗ねるなよ。エンシェント・ドラゴンはいるだけで他のモンスターは委縮してしまうのは世の原理……そう気にすることはない」

「お前達は委縮していないが?」

「いや、今この瞬間にでも襲われればどうするか、と頭を抱えているのが本音だ」

「そ、そうなのか?」


 アナスタジウスがうんうんと頷きフェリスは素知らぬ顔をしていた。


「私はそんなに怖いものなのか……」


 シュンと落ち込むシェスタ。


「年齢にもよるがエンシェントになるとその場にいるだけで「場が凍る」といわれている。実際そうではないんだがな……例えばそのあふれ出ている生命力を抑え込むだけでかなり変わるだろう」

「む……あふれ出る生命力? むむむ……」


 歩きながら何やら力をこめ始めるシェスタ。


「はぁ!」


 バッと両手を広げ、にこやかになるシェスタ……生命力が全く感じられない。


「お、おい! モンスター除けが効力を失くしてどうする! 全員応戦用意!」


 ばっと全員が戦闘態勢を取る――が、モンスターは襲ってはこない。


「はっ、エンシェントだか何だか知らないけど私がいるのを忘れていない?」


 俺の後ろでトボトボ歩いていた無口なまーちゃんがポロリと零す。


「そういやお前……魔王だったな」

「そう! 魔の王と書いて「魔王」、それこそ私の存在!」


 髪をなびかせるとブワリと魔の瘴気もなびいていく。

 その瘴気はかなり濃く他のモンスターも恐怖で襲っては来れないのだろう。


「さぁ、先に進むわよ」


 俺達を先導するまーちゃん。


「まーちゃん」

「なによ」

「そっち逆方向」


 まーちゃんを正解の方向に導きながら俺達は進んでいく。

 途中錯乱したモンスターが何匹か襲ってきたが俺が軽くいなして終わった。




 街に到着し冒険者組合に行くまでの間に色々と問題があったがそこは王族のアナスタジウスが問題解決に動いてくれた。

 冒険者組合内に入りギルドマスターことイフォリア・ハイデンバーグ・ソードマスターが俺達を出迎えてくれた。

 奥の部屋に案内され俺達はメニュー表片手に各々食事や飲み物を要求する。


「それで? 問題は解決したのかな?」


 清涼な声質で聞いてくるイフォたん。


「まずは食事をさせてくれないか?」

「ああ、そうだね。まさか夕日が落ちて星空が上っているのに帰ってくるなんて思わなかったからね」


 俺達はソファーに腰かけ各々が注文した食事が運ばれてくるのを待つ。


「ところで一人……人数が増えてるね」

「ああ、こいつはエンシェント・ドラゴンのシェスタ。よろしく頼むぜ」

「どうも、人間の国は初めてなんですが私が滞在してもよろしいのでしょうか?」

「…………ふ~む、エンシェント・ドラゴンか。まさか本当に?」

「ここでドラゴンの姿に戻る訳にはいかないでしょう?」


 シェスタが礼儀正しく返答を返していく。


「まさかこんな幼そうな男の子がエンシェント・ドラゴンだなんて……」

「それはもういいよ。報酬の話でもしようじゃないか」


 俺は運ばれてきた料理に手をつけつつ報酬の話に切り替える。

 他のみんなも食事に手をつけ頬を撫でている。


「ああ、報酬か……そうだね。君たち全員に冒険者ギルドでの無条件クエスト受注を許可しよう」

「ふむ、勇者ランクBのフェリスでも上位のクエストを受けれると?」

「ああ、嬉しいだろう?」

「正直いらないかな。俺達は貴族なんで冒険者組合のクエストは受けないよ?」

「む……なら金貨かい? そうだね……今回の報酬は国からも金貨が出ると思うけどまずは国に報告しないといけないんだ」

「報告なら私がしておこう。報酬も私がゆーくんに渡すので結構」


 ぴしゃりと話を遮るアナスタジウス。

 顔は笑っているが相当気に障っているご様子なアナスタジウス。

 そりゃ王族なのに今回のグランド・オーダーを知らなかったのだから仕方ない。


「むぅ……なら他に何がいいんだい?」


 逆に聞かれると困ってしまう。

 金はアナスタジウスからもらえるとして――他に何がいいか……。


「食事が終わるまで考えさせてくれないか?」

「ああ、いいとも」


 俺は報酬に何がいいか考えながら食事を口に運ぶ。

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