怨の記憶
『僕にチカラをくれ!』
僕の中に住まう開かずの鍵と呼ばれている少女に僕は大きな声で届くように叫んだ。
少女は数秒の間、目をパチくりとさせて少々驚いた顔をしていたが、次第に何かを企んでる怪しい顔にへと変貌した。
『ナンデ?』
異能力に執着しすぎているのは本当のこと。僕は特別だからと安心しきっていたが、世の中には『もしも』が起きることが沢山ある。その事を今回改めて身にしみるように理解した。
『異能力が消えたんだ。僕に異能力が無いと知られてしまえば僕は……』
『コワイノ?』
『そっそれは…………僕は捨てられたくないって必死なんだ。たぶん……だから……』
『良いヨ……でも交渉として鎖を解いて。今回はひとつだけでもいいカラ。』
『これの事?』
『鎖ひとつが魂の欠片と禁忌の異能力が込められテル。コレは消えることもない強大なチカラ……』
『これを外せば僕は……』
『元に戻れル……』
惑わしの言葉に乗り僕はひとつ彼女の鎖を解いた。しかし、その異能は体の負担と理性が壮大なものだった。
僕が解いた鎖は《怨》
悲しみと憎しみを膨らませ膨らめば膨らむほどチカラが大きく強くなるというものだった。
この異能力を受け継いでからこの異能力が生まれた時の記憶が流れ込んだ。
いじめっ子の子供はとある犬を木を縛り毎日毎日イヌを傷つけた。
犬を助けようとした子供までもを傷つけた。
周りは助けてくれない。
『ワンワン』と助けを求める犬と『ごめんなさい……タスケテ』と助けを乞う子供。
そんな彼らの『何で自分なんだ?』『なんで助けてくれないの?』という憎しみと悲しみが膨らみ、ある日いじめっ子の男の子は犬の傷ついた足のように足が痛み出した。
そして、次に首が座らなくなった。そして声が急に出なくなり、最後には少年は犬のように『ワン』と鳴く事でしか喋られず犬のように毛が生え小さくなり、犬の姿に変わってしまった。
これが、《怨》の生まれた理由。それだけではなく世界の悲しみと恨みを吸収して、破壊まで追い詰めた。
それが、開かずの鍵のチカラのひとつだった。
感情を支配されていく犬のように忠誠心も強く恨みと悲しみでしか感情を露わにすることが出来ない悲しい異能力だ。
『ヘタをしたら……異能力ニ支配サレルノ』
『えっ……』
『デモ……君にはトモダチ居るから大丈夫ダネ』
そして僕は記憶を怨みで埋め尽くされたままに戻ってきてしまった。
犬は主人に忠誠心があるという。
近くにいた棗先輩と棗先輩の友達の『イヌガミ』に本能的に甘えてしまった。
棗『何がそんなに悲しいの?何かあった?ルト君……』
イヌガミ『異能力の臭いがするな』
棗『ルトから?』
イヌガミ『そうだぜ…プンプンする』
棗『異能力は消えたはず……』
イヌガミ『異能力を新しく手に入れたっぽいが危険な匂いがする』
棗『ルト……何かしたのか?』
ルト『僕は使えない子なのか?棗……僕は生きていたらダメなのか?』
棗『そんなことはないよ』
ルト『僕は禁忌のチカラを手に入れた……殺されるのか?死なないといけない?』
棗『大丈夫……俺とこいつ(イヌガミ)で守るから。絶対に』
ルト『好きでこんなカラダに……でも異能力を僕は欲で……』
イヌガミ『お前は悪くないぜ?世の中可笑しいことに異能力を差別化してる。お前じゃない。この世界がおかしいんだ。』
棗『居場所がないなら俺と来るか?ルト……』
イヌガミ『楽しいぜ?こいつ(棗)と一緒だと』
ルト『……うん。』
その日の夕方からルトの姿を戦闘部隊・防衛省の中で見た者はいないという。
ルト(2度目)の行方不明。
ロマ『またアイツ~どんなに攫われたら気が済むんだぁ?』
ファラ『まだ誘拐って決まってないけどね~』
ロマ『ウガーーー!!』




