損失
傷もなくルトさんがひょっこりと帰ってきた。
しかし、少しだけ様子が可笑しかった。私が話しかけても気付かずヒョロヒョロ~っと検査室へひとり向かった。
検査室には多数で行わなければ出来ないものとひとりで異能力だけを大雑把ではあるが、確実に調べることが出来るものととある為にルトさんはそこに向かったのだろう。
しかし、引っかかる事があった。戦闘部隊の中でもKと同じ程の異能力を持ち、いまではVの重鎮であり、要となりつつある特別な特殊能力を持つルトさんが何故……今更異能力を調べに言っているのかを。
異能力が消えるものがいるとは聞いたこと後あるがそれは小さな異能力のみであり、ルトさんには有り得ないことだ。
そして、聞いた話によるとルトさんは異能力に頼りすぎ、それと共に異能力に執着しすぎている傾向にあるとの報告を受けていた。
だから、もしもの為とコッソリ覗いたら…思いのほか暴走はしていなかった。
だからルトさんは大丈夫だと安心しきって部屋に入って『ルトさん~』と声をかけた。
すると……そこには診断結果の髪を片手に持ち唇を噛み締め悔しそうにしているルトさんの姿があった。
ナノハ『ルト……さん……??』
ルト『ナノハさん…………どうしたんですか?』
微かではあるが涙ぐむ彼の姿があった。私の予想ではあるが、まさか……異能力が消えてしまったのだろうか?
ナノハ『ルトさん……あの……』
ルト『……ごめんね。今はひとりにして欲しいんだ。』
ナノハ『あっ……そっそうですよね!?はぃ……わかり……ました。。』
僕は何か悪い事でもしたのだろうか?昔からそうだ。何もしてないのに決まって運命の様に僕には悪いことばかりが起きる。
無能力者どったのもそうだ。
そして、ここに来てからも念能力だからと誘拐されたり、たくさんの人に迷惑をかけて僕はその恩を自分の持ってる力で恩を返そうと任務もきちんとこなして頑張って来たのにも関わらず、自分に異能力がないとなれば……もぅ、僕がここにいる意味も無いじゃないか。
いっその事、ここで事務でもやるか?しかし、僕はパソコンなんて触ったこともない。今時代、パソコン出なくても携帯ひとつである程度のことは何でもできる時代だ。腕時計に万歩計が付いたり、ダイエットアプリが出てきたり、世界の機能性は昔と違って伸び続けている。
そして、そこには必ずしも異能力の力が必要不可欠であり、世界は異能力が無いと生きてはいけないということでの象徴でもあった。
こうなってしまった僕は暴走なんてする気力すらも起きず放心状態であった。
それは学校でも変わらなかった。異能力が使えなくなったとのこともシャドに伝えると顔を歪め惜しいことをしたなとでも言いたげそうに渋々……、『わかった』と一言いい、僕は危険能力クラスから去ると思ったが、今までのやってきた事の口止めと僕の知識を買いシャドは僕を危険能力クラスに留めた。
もちろん、それも理由ではあるが、危険能力クラスの人が異能力を失ったとなればシャドの落ち度として咎められるかもしれない。
そのための防止策でもあるのだろう。
ナノハさんには伝えはしなかった。学校の同級生にもそれは同じ。しかし、唯一の僕の理解者『棗先輩』は僕が異能力を失ったのにも関わらずに今まで通りに気さくに話しかけてくれたり先輩なりに僕を気にかけてくれた事がとても嬉しかった。
棗『異能力が無いからなんだ?お前はお前だろう?ルト……』
ルト『棗先輩……』
棗『困った事があれば何でも言えよ?俺が手伝ってやる……。』
ルト『異能力……く』
棗『それは無理だな』
ルト『ですよね……アハハ……』
棗『でも……案外まだルトの中にも異能力に近いものが眠っていたりしてな』
ルト『異能力に近いもの………ん?…』
棗『どうかしたのか?』
ルト『あっ。それがあった。』
棗『ルト??』
ルト『僕……また異能力使えるかも。あいつの願い事を叶えれば……』
棗『あいつ?』
ルト『僕の中に誰か居るからそいつは……ってそんな事を話してる場合じゃないですね…話はまたします…だから、暫く気を失うかもしれないので見てくれますか?』
棗『あぁ。』
ルト『じゃぁ……。』
棗『いってら……(これでいいんだよな?禍神……)』




