きっかけ
僕の師匠の【シキ】さんはとても強くて優しくていい人だった。
【シキ】さんはなんでもできる完璧な人だと思ってたけど、案外そうでもなかった。
【シキ】さんはとても容赦無くて何と言うか、
人間にあろう感情というものが無いのか、背が高くて強くてモテモテなシキさんは何時も誰かを泣かせて帰ってくる。
その度に難しい顔を浮かべてタメ息を漏らしている。
そんなシキさんが血を流し真っ青な顔をして帰ってきた。
話によれば、シキさんを思いすぎたとある女の子がシキさんに攻撃を仕掛けてきたそうだった。
そして、あろう事か…
その女の子にはシキさんの異能力さえも通らず、こうして帰ってきたという次第だった。
『シキさん大丈夫ですか?』
コクリっと頷くシキさんは医療班に手当されながら
まるで、『心配かけてごめん』とでも言っているのかペコペコと頭を僕にさげていた。
『シキ!動くなって言ってんだろうが!アホ!』
がしかし、ペコペコし過ぎて、医療班の人に軽く叱られてしまうシキさんだった。
『あの人の事……気になるだろ?』
突然、俺の前に現れたロマさんはシキさんに容赦ない医療班の彼女について教えてくれた。
『あいつはな…………シキの彼女だ。そして兼:シキの幼馴染。』
その時、今まで不明だったのに納得がいった。あれでもシキさんは人間としての感情があった(とても失礼)
シキさんは彼女の……えっと…………
『彼女はみんなから【ティノ】さんって言われてる。』
『ティノ?なんか不思議な名前ですね。紅茶のような……』
『まぁ……ここにいる殆どが本名じゃないからな。ティノやシキもな。』
ロマさん曰く、色んな任務を遂行するに当たって有名になる人ほど、個人情報保護や周りにバレないようにコードネームみたいに自分で考えたり人につけたり貰ったりして、実名でなく仮名でこの世界に棲むという人が多数なようだった。
『あの……それだったら僕は……』
『あぁ!お前は……まだ無名だし弱ぇから大丈夫だよ。多分……。ってか、そう言えばお前が特殊異能者ってのは知ってるが、ところで能力何なの?』
とあるキッカケで始まった俺の初任務。
『って事で、ひとり初任務だ。はじめての〇つかい的な?まっなんかやばそうだったら通信機とか使えば良いから。一様、お前の任務先の近くでほかの任務に当たってるやつとか居るし……』
『大丈夫なんですか?』
『わからん。難易度的には低いがたまに偽装で任務届け出すやつとかいるからな…頑張れとしか言いようが無いな』
『えぇ!』