二度目の邂逅
先週こちらの投稿ができなくて申し訳ございません。
ちょっと何ぞが多い回となっていますが、どうぞ
「「「おおおおおおおお!!」」」
会場に歓声が鳴り響く。
それは闘技場の中心にて、イクドが相手の盾ごと斬り裂いた事に対する歓声であった。
「勝者、イクド!今回の武闘大会の優勝者は『Bランク冒険者』、イクド選手だぁぁあああ!」
「「「わぁぁあああ!!」」」
アナウンスに再度歓声が響き渡る。
そのうちにイクドの対戦相手は姿が消え、近くの出入口から再度現れる。
いわゆる、こういう大会において死者が出ないようにと使われている『魔道具』の効果だ。
「では、表彰を開始します!受賞者は登壇してください!」
会場の中央に現れた表彰台に選手達が上がり、賞賛の言葉と共にメダルを貰い、少しした質問に答えると言った形だ。
「──優勝おめでとう」
「『総組合長』にそう言って頂けるとは、光栄です」
そう言ってメダルを目の前の女性──『総組合長』から受け取る。
「そう言えば、その剣はこの前壊れたものを買い換えたものですよね?相当な名剣に見えますが、どこで?」
「これ、ですか……実はココ最近できて有名になり始めている『ノウト武具店』で購入したものです」
「そう……私も今度、行ってみようかしら?」
「俺……いえ、私も今度、オーダーメイドで作ってもらう予定ですので、これ以上のものもあると思います。」
「そう、情報ありがとう。では、司会さん、そろそろ」
「──これにて、『アドヴェアス武闘大会』を閉会いたします!選手の皆様、お疲れ様でした!観客の皆様、名残惜しいかも知れませんが、来週には『Aランク昇級試験』もありますので、またその時に!」
こうして、レイの『Aランク昇級試験』までのイベントが終わりを告げた。
「いやぁ、いい宣伝になったね。今度二人に会ったらお礼を言わなくちゃ」
「ん、思ったよりも、参考になった」
「そうですね……でも、私でもそこそこまで行けた気もしますが……」
そんな会話をしているのはお馴染みの三人である。
「さて、そろそろ行くかな?」
「ん、【転移】する?」
「うん、お願いしようかな──いや、ちょっと待って。二人で先に帰っててもらってもいいかな」
「へっ?どうかしたんですか?」
「んー、どうってことは無いよ?多分この場に留まってるだろうから、先に挨拶だけでもしておこうと思ってさ」
「ん、じゃあ先に帰るよ?シリ」
「はい、では後ほど」
その言葉を残して、二人の姿は消える。
周りの観衆が移動する中、レイはその場から動かずに一方向を見続ける。
そこには黒ローブの人物が、レイと同じように立っていた。
周りを移動する観衆は、どこからどう見ても怪しいソレに全く以て反応せずに歩みを進めている。
そして人間が誰もいなくなったところで、黒ローブは声を発した。
「──『武闘大会』、面白かったかい?私は面白かったよ」
「僕もだよ」
「そうか?俺は矮小な人間が、我々に及ばない、程度の知れたチカラで争うのが滑稽で面白かったんだが……君はどうして、面白いと思ったのかな?」
「……どうしてそれを聞くのかな?」
「いや、ね。キミという『存在』の、その価値観が気になっただけだよ」
その言葉に答えないレイに、黒ローブは──
「じゃあ、質問を変えようか。何故、人間を助けたんだ?」
──そう、問いかけた。
「あの時、君はあそこまでしてあの街を救う必要があったのか?何故、どうして助けたんだ?──ああ、助けるのに理由が必要無いって言う答えはなしだよ」
「うーん、じゃあ『戦いたかった』って言うのはどうかな」
「『戦いたかった』?……ふふ、それは悪くない理由だな。くくく……」
レイの答えのどこに面白さを感じたのかはわからないが、腹を抱えて笑った。
「……でもさ、『戦いたい』って言うのは、その『戦いたい』という理由にも、『チカラを使いたい』とか、『守りたい』理由があって然るべきだよね」
「……そうかな?『戦いたい』と思ったからそうした。それで問題『無い』でしょ?」
「へぇ、なるほど面白い。道理で……いや、道理が無いって言った方がいいかな」
その言葉に少し驚いたようにそう言うと、両手を広げてこう言った。
「──キミ、コチラ側に来る気は無いかい?」
「……どういう意味かな?」
「そのまんまの意味さ。勧誘だよ」
「悪いけど、そちら側──外側には行けないよ」
「……どうしてだ?」
「僕は僕で、ある程度の身の程は知ってるってことだよ。まだ、やらないといけないこともあるしね」
「へぇ、そうかいそうかい。ここで面白くない理由だったら殺していたところだよ」
「へぇ、僕を殺せると?」
「生きているなら殺せても問題は無いだろう?」
「それもそうか。……そう言えば、まだ君の名前を聞いてなかったけど、教えて貰ってもいいかな?」
唐突な質問ではあったが、黒ローブはそれに答えた。
「んー、特にこれと言ったモノがあるわけでも無いのだが……そうだね──」
そう言って片手を広げて、もう片手を胸に当てる。
「そうだね──『ナイ』と。そう呼びたまえ」
「じゃあ、僕は僕で名乗らせてもらおうかな。僕は『レイ』。それ以上でも以下でも、それ以外でも無い」
二回目の邂逅でやっと名乗りあった二人はそのままでしばらく固まると、どちらとも無く笑みを浮かべる。
「……さて、もうそろそろ行くよ。今頃お店が大変になってそうだしね」
「ああ、なら最後にひとつ。君には借りがあるからね。なにかあったら言うといいよ。最も、それを叶えるかどうかはその時の気分次第だけどね」
「それこそ、僕が覚えていたらだけどね。それじゃあ、もう行くよ。またね、ナイさん」
その言葉を残して、レイの姿は消え去った。
「さて、思っていた以上に面白い『存在』だったね……連絡はしなくていいか。アレは僕の玩具だ。だからせいぜい──」
──つまらない消え方はしないでくれよ。
そんな声が、誰もいなくなった闘技場に響いていた。
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「あ、レイさん!遅いですよ!宣伝の効果で大忙しなんですからね!」
『ノウト武具店』へと帰って来たことに気がついたシリウナがレイへそう言った。
「ああ、ごめんね?どんな感じかな」
「かなりの人が押しかけてて、ウルさんも出て貰ってるんですからね!」
「そっか。在庫を聞きたいからヴァニラかウルを探してるんだけど……」
「二人ともロビーにいます」
「ありがとう」
礼を言ってそちらへと向かえば、二人は近くにいたのでまとめて伝えることにする。
「レイさんじゃないですか。帰ってたのですね」
「『創造主様』、売上は好調です」
「それよりも、聞いて欲しいことがあるんだけど……『外側』がいた」
その一言に、二人の笑みが消える。
「これにより、『精霊の森』の警戒態勢を引き上げる。ヴァニラ、一旦『精霊の森』へ帰還して警戒レベルの引き上げを。ウルは他の【王位精霊】たちに通達、後に各【属性精霊】へ伝達をお願い。【精霊門】は二人が行ったあと念の為閉じておくからそのつもりで」
「「御意に」」
その言葉に二人は迅速に行動に移した。
「あとは……あ、在庫確認二人にするの忘れてた」
こうして、『精霊の森』の警戒レベルは引き上げられ、レイは『ノウト武具店』の在庫確認で苦労するのであった。




