『アドヴェアス』と『武具店』
もう少しで100部ですか……早いものですね。
まあ、練習も兼ねてのこの話だったのですが、思ったよりも興が乗ってここまで来ました。
何を言われようと、完結までは書ききるぞー!
【冒険者都市】と名高い『アドヴェアス』は【都市】と呼ばれてはいるが、その実一つの『集団国家』に等しい。
その成り立ちは500年ほど前、『冒険者』というものができてから少しが経ち、ある国家間で『戦争』が起きた時の話だ。
不幸なことに、そのれらの国に訪れていた『冒険者』達は『国家』と『冒険者組合』による強制招集により、無理矢理戦わざる負えない状況が生まれてしまった。
このままでは、自由を謳う『冒険者』が国家間の争いに巻き込まれ『傭兵』と変わらなくなってしまうと危惧した当代の『組合総長』が、ひとつの街を作り、こう宣言したのだ。
『不遇で不当な扱いを受けた冒険者たちよ、この地に集え。そうすれば自由を再び与えよう。そして、それを妨げる『国家』よ。覚悟しろ。我ら『冒険者組合』は貴様らを許さぬであろう。決して、な』
その言葉に『冒険者』達は皆集まった。
それを妨げようとする国家もあったのだが、それは集った『冒険者』達に潰されてしまった。
そして、こう言われるようになる。
『『冒険者組合』は、【冒険者都市】は敵に回すな。滅びたくないのなら』
と。
──【冒険者都市】『アドヴェアス』の成り立ち
より一部抜粋。
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「ようこそ!『ノウト武具店』へ!」
店を開け、元気な声でそう宣伝する。
レイは現在、【冒険都市】『アドヴェアス』にて武具店を経営していた。
既に『アドヴェアス』に到着してから一週間が経過している。
「おっ、レイさんじゃねぇか。開店おめでとうございます。一週間後の『Aランク昇級戦』、みんな楽しみにしまますぜ」
「あっ、来てくれたんですね!ありがとうございます!どうぞ見ていってください」
「おうよ!それと、『錬成師組合』からも武器を仕入れてるんだっけか?あそこは面白くて使える武器も作ってるからなぁ。取り敢えず剣を探してるんだが、どっちだ?」
「向こうにありますよ」
「おう、ありがとな」
そう言って奥に進んで行く姿を見ながら、『アドヴェアス』に到着してからの日々を思い出す。
── 一週間前、『アドヴェアス』に着いてから、まずは『冒険者組合』へと立ち寄った。
勿論、『昇級試験』を受けるためだ。
──結論を言えば、『Aランク昇級試験』は受けられなかった。
理由はレイに問題があったのではなく、時期の方であった。
『Aランク昇級試験』など、そこまでの実力に至るものが少ないのでなかなか行われない。
そのため、娯楽の少ないこの世界では、それの観戦は大きなイベントとして扱われる。
更にこれは『娯楽』としての面だけでは無く、知名度を上げるためであったり、これを見る他の『冒険者』の学びの場にもなったりする。
それが理由で、『闘技場』などがある大きな都市で『Aランク昇級試験』が行われるのだ。
しかし、本当に時期が悪かった。
──今、この【冒険者都市】では『武闘大会』が行われているのだ。それも、三日間ほど使って。
もともとイベントのため、周知させるという理由で一週間は日を置くのだが、イベントとの兼ね合いで二週間後となったのだ。
そして今日はその大会の二日目、最終戦が行われるのは明日だが、武具の損傷が大きかった人などが買い替えに来ていたりするのだ。
故に、『Aランク昇級戦』は十日後となる。
ちなみに他の『ランク昇級試験』があるものはレイの『昇級戦』の前座試合として行われるため、イリスの『ランク』は上がっていない。
「これを買おうと思うんだが……どうだろうか」
「んー、前に使っていた武器と重心が似ていますが、長さが少し短いのでここぞという時に……」
「あー、だよなぁ。ほかにもいい武器は多いんだが、使い勝手を考えると、見つけるのが大変でな……」
「それなら、これとかどうでしょう?」
「おおっ!いいなこれ……これにしよう。これにも【魔法】が『付与』されてるのか……効果は?」
「『無眼』、鑑定結果を表示」
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てつのけん
製作者
純魔鉄製の剣。
魔力を流すと剣が微振動を起こし、切れ味を各段に上昇させる。
使用者には振動が伝わらないように作られている。
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「げぇ!?純魔鉄製って、マジかよ……高ぇだろ」
「でも、『Bランク』になってから大分活躍していますし、かなり稼いでいるでしょう?」
「……まぁ、そこそこにはな。だが、次のはオーダーメイドで、自分専用の高性能なヤツをどこかで頼もうと思っていたんだが……いや、これも十分主武器として使えるんだが……うーむ」
「なら、こういうのはどうでしょう?あなたがこの剣で『武闘大会』を優勝すると言うなら、これ一本の代金だけでオーダーメイドを作りますよ」
「本当か!?」
「ええ、それによってこの店の広告にもなりますから。その際にはその剣はそのままあなたの物で良いですよ。それこそ、売っても壊してもあなたの自由です」
レイの提案に食いついた『冒険者』に、こちらにも利益があることを説明する。
「いや、こんなにいい剣を売るとか……ましてや壊すなんてできねぇよ。……良しっ!買った!」
「ありがとうございます」
そう言って代金を受け取る。
「それでは、『武闘大会』頑張ってくださいね。僕も観戦に行きますので」
「ははっ、なら尚更無様な戦いはできねぇな。……そういや、名前を言ってなかったな」
「『イクド』さんでしょう?知ってますよ。楽しみにしてます」
「おうよ!……しかし、これ程の武具製作の腕があるなら『冒険者』なんかやらなくても十分やって行けるんじゃないか?」
「どちらも、やりたくてやってることですから」
「だよな。そうでも無けりゃ『Aランク』になんかなれねぇよな」
「まだ『Bランク』ですよ。あ、そう言えばイクドさんは『魔纏』使えましたっけ?」
「ああ、使えるが……それがどうかしたか?」
「もし、困ったら使ってみてください。そうですね、【飛斬】を使ってみるのも面白いかも知れませんね」
「?よく分からんが……覚えておこう。──おっと、長話しすぎたか。じゃあな」
手を振りながら去って行く姿を見送り、見えなくなったところで店に戻る。
「今日も繁盛してますね」
「シリのおかげだよ。適正価格を知らなかったらここまで来れなかったよ」
「そんなこと言っても、まだ一週間しか経っていないんですけどね」
それを言ってため息をつかなかったのは、やはり多少慣れ始めたのだろう。
「で、明日観戦に行くって言ってましたけど……私一人でやるんですか?『奴隷』一人で店員をさせるとなると本来、かなりの信頼が無いと任せられませんし……それを私が満たしているとは思えませんが」
「何言ってるの?三人一緒に行くに決まってるじゃん。もうチケットも買ったし」
「じゃあ、休みにするんですか?明日は最終戦もあって、かなりの売れ行きが予想されますが……」
「?……しないよ?って、ああ。店員というか、店番の心配をしてる訳ね。それなら大丈夫。そろそろ紹介しておこうか。『──我が名の元に、汝らが馳せ参ずる為の門を開く』【精霊門】」
レイが空に手をかざせば、そこには金装飾の荘厳な【門】が現れる。
「へっ?」
「──『解錠』」
突然のできごとに戸惑うシリを他所に、どこから取り出したのか、金装飾の【鍵】を【門】へと差し込み、回す。
そして、その中から──
「召喚に応じ、馳せ参じました、『創造主様』」
地に届くほど長い白髪の女性が歩みい出て、レイの前に跪いた。
「随分と成長したね。『ヴァニラ』」
「知識もそれ相応に。どれもこれも、御身あってこそです」
褒められたのが余程嬉しいのか、頬に朱を滲ませながら、そう答える。
「今、『子供達』はどのくらい?」
「私を入れて十人で、必要な知識もあります。『人間』としての見た目は私が十七程として、そこから二の刻みで下がっていきます。選別は私が行っても?」
「じゃあ、頼むよ」
「おまかせください」
「あ、あの……ソレは?」
シリが、少しの怯えを混じらせながら問いかける。
「ソレとは失礼な……私はレイ様の第一の【眷属《子供》】、『ヴァニラ』というステキな名があるのです」
「子供って、レイさん既婚者だったんですか!?しかも十人って……イリスさんでは無理がありますし、まさかほかにも!?」
「勘違いしないで下さい。私がレイ様の【眷属《子供》】で、その他九人は私とレイ様の【眷属《子供》】です」
「あなたが子供で、一人で九人ですか!?すごい……凄すぎるっ!?」
「そうです。レイ様はすごい御方なのです!さぁ、もっと畏れ戦くのです!」
自信満々に透き通った声で言うのを聞きながら、シリはレイを見て『ここまで常識ハズレだったか……』という様な顔をする。
「シリ?どうして、そんな変な顔を……?」
そしてそんなところにイリスがそう言いながら現れた。
「聞いてくださいよ!レイさんが──」
「?この子、あの時レイが創った?」
「はい、ヴァニラと申します。イリス様」
「ん、イリスでいい。それにしても、おっきくなった」
「ええ、多少なりとも大変ではありましたが……今は【無属性王位精霊代理】を務めるまてまに至りました」
そう言って、和気あいあいと会話し始めた二人を見て、シリは唖然とする。
「え、イリスさんも知って……?というか、今【無属性王位精霊】がどうとか……えっと、どういう状況ですか?」
そこで、レイが一言。
「要約すると、僕の【眷属《子供》】兼【無属性王位精霊代理】にお店を任せてるってこと」
「いや、それを聞いてさらにわからなくなりましたよっ!イリスさん!レイさんの説明でわからないので、私にもわかるように説明してください!」
「……?そのままの意味」
「レイ様が凡人程度に理解できるほどの領域にはいないのですよ」
「ダメだこの人たち、話が通じない!」
そんな風に騒ぐ彼女たちを見て、レイは──
「──平和、か。悪く無いね」
──そう言って、口元に笑みを浮かべるのであった。




