表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!  作者: ナリア
彼らは『世界』に名を残す。
95/127

銀狐とレイ

今週も少なくて申し訳ございません。


どうぞ


──どうして、こんな事になっちゃったのかな。


鎖で繋がれている中、ふとそんなことを思う。


しかしながら、それと同時にこの状況も長くは続か無いのだろうとも感じている。


目には見えていないのだが、確かにそこに何かがいて、確実に自分らを蝕んでいるのだ。


見えなくともわかるのは、恐らく自分の持つ『技能スキル』の影響なのだろうが、この状況ではどうしようもない。


などと、どこか他人ごとのように思いながらも、一つ、ため息をつく。


──『踊り子』として売られてから、『主人』を殺してでも逃げてしまおうと考えていたのに、それすらできそうに無いですね。



そんなことを考えていた時だった。



ナニカが、流れる。


肌に、触れる。


質量を伴わない、『魔力』ですらないその『ナニカ』が、部屋の壁など、それどころか遮るものは何も無いと言わんばかりに通り過ぎる。



── ?自分は今、どうして悲観的になっていた? それは、どうしてだった?


そんな疑問が脳裏を過ぎる。



──そうだ、目に見えないなにかが自分を蝕んでいたからだ。



しかし、改めて感覚を研ぎ澄ませてみれば、そこには何もいない。

カラダの不調も無くなっている。



──まるで、最初から何も『無かった』かのように……



──それがわかった時、尾や耳の毛が逆立った。



『無かったこと』にされかけたのだ。

それも恐らく、何者かの手によって、意図的に。



理解できなかった。



なぜ?どうして?何の意味があって、こんなことを?


思考を巡らせるが、答えは出なかった。



──どれだけ思考に没頭していたのか、気が付けば扉から声が聞こえ、そこにふたつの『気配』があった。



片方はこの『奴隷商』の商人、片方は知らない『気配』なので、恐らく客だろう。



──いや、ふたつだけじゃない!?



『気配』とは、本人から滲み出、溢れた『生命力』だ。

『溢れ出る』、すなわち自分の『生命力』が外界へと影響を及ぼしているのだ。



そして、ふたつ『気配』があった事で気付けた。


──そのふたつの間に、不自然なくらいに何も無い空間があった。



扉が開き、その向こうが顕になる。


そこに居たのは、腰まで伸びた白い髪の人物。



──ダメだ、コレはコロセナイ。



本能が、警鐘を鳴らす。

一見すればか弱な少女の様だが、本能が見た目に騙されるなと叫ぶ。



そして、纏っている雰囲気を見て、気が付く。



見えない何かを消し去った『ナニカ』を起こしたのは、この存在だ。



気が付けばそれは、銀色の瞳で自分を射抜いていた。


できるだけ目立たないように息を潜める。

しかしそれとは対照的に、身体は恐怖に震え始める。


会話は聞こえないが、『気配』でわかった。


──私は、この存在に買われてしまった!


それは当たっていたようで、手を引かれ、連れて行かれる。



──コレはコロセナイ。


──いや、『殺せる』『殺せない』、以前の問題だ。



『本能』と『理性』の意見が合致した時、私の意識は遠のいて行った。



------------------------------------------------------------



(……あれ、ここは──っ!?)


目が覚めるなり、ガバリと身を起こすと己の身体を確認する。


(よかった、消えて無かった)


「──あ、目が覚めたみたいだね」


安心したのも束の間、声のする方を振り向けば、そこには銀色の双眸があった。


──そして、恐怖が甦った。


「う、あ……」


身体が自分の意志に反して、ガタガタと震え始める。


「……?怯えて、る。レイ、なにか、した?」


「いや、何もして無いけど……うーん、あ、そういうことか」


そう言ってひとつ指を鳴らせば、すでに恐怖心は無くなっていた。


「アレだね。以前のイリスの時と同じだよ」


「ん、理解」


「あれ……どうして……」


気が付けば恐怖心は無くなり、それどころか目の前の存在に対して『恐怖心』そのモノが湧かなくなっていた。


「落ち着いたみたいだし、自己紹介からだね。僕はレイ。『錬成師』で【冒険者】。よろしくね」


「ん、イリス。『魔王』で【冒険者】」


「ああ、これはこれは、どうも……『シリウナ』と言います。……って、えぇぇえええ!?ま、『魔王』!?『魔王』てあの『魔王』ですかっ!?」


二人に続いて名を告げると、大きな声を上げた。


「あの『魔王』ってどの『魔王』のこと?」


「そりゃあ、『魔大陸』で『魔族』を取りまとめていて、近頃こちらの『大陸』にも手を出してきている『魔王』ですよ!ウワサでは暴虐の限りを尽くし、部下であろうと逆らえば見せしめに殺されるという……その『魔王』がこの娘ですか!? んな馬鹿な!?」


「へぇー、やっぱりそういう認知のされ方なんだね」


まくし立てるシリウナだが、それに対して落ち着いた様子で対応する。


「いやいやいや、本来『魔王』って、畏怖の対象ですからね!?……というか、そんなのと普通に一緒にいる貴方は何者ですか! やんごとなき立場の人間ですか!」


「そんなことは無いよ」


【精霊帝】ではあるのでかなりの立場ではあるのだが、これも嘘では無い。


まず、前提として人間ではないからだ。


「まあ、それは置いておいて……君はいま、僕の『奴隷』って事になってるけど……まあ、気にしなくていいや。めんどくさいし」


「……『奴隷』ですよ?あんなことやこんなことをやれと言われれば拒みづらい立場の『奴隷』ですよ?それでいいと言うなら、いいんですが……」


「いんじゃない?一応『常識』を知ってる人を買うつもりだったから」


「『常識』を知るためだけに買ったんですか!?『踊り子』で高い私を!?」


レイのひとこと一言に反応するシリウナであった。


「……この人、ツッコミ役?」


「そうだねぇ、いい買い物だったかもね。それと、『踊り子』じゃないでしょ?」


「……へ?いや、私は『踊り子』で、商会の人も言ってましたよね?」


「でも、違うよね?『無眼』、【情報開示】」




------------------------------------------------------------


シリウナ・フォスオブ LV85【30】 Age18

種族:人間[獣人:狐【変異種】]

職業:暗殺者【踊り子】

称号:【変異種】【族長の娘】【天才】【銀狐】

体力 50000/50000 【5000】

魔力量 50000/50000 【5000】

魔力 55000 【6000】

筋力 600000 【4500】

敏捷 900000 【7000】

耐性 30000 【3000】

魔耐性 20000 【2000】


固有技能ユニークスキル〉:殺傷本能 気配把握 狐火【蒼炎】


技能スキル〉: 暗殺術Lv9 暗器術Lv9 短剣術Lv8 鑑定Lv9 看破Lv8 隠蔽Lv8 気配遮断Lv7 隠形Lv7 偽装Lv8



------------------------------------------------------------



それが現れると同時、空気が冷たく凍りつく。



「──で、それがわかってるなら、どうして買った?本当は買われた後に『主人』を殺して逃げようと思ってたんだけど……そうね、『取引』しない?」


「取引?」


「そう、取引。殺したい相手の一人や二人くらいいるでしょう?どうしても殺せない様な立場でも、それを殺してあげる。その代わり、貴方は私の願いをひとつかなえる。どう?」


それは、悪魔的な『取引』。


もし、誰かしらを殺したくても殺せない様な状況であれば、魅力的な『取引』だが──


「んー、一応聞くけど……望みは?」


「…………そうね。とりあえずは私を解放してくれるだけでいいわ」


「……本当にそれだけでいいの?」


「それだけも何も、重要なことでしょう?」


先程の口調とは打って変わって、冷たさを持った声でそう言う。


「……ふーん。ま、人の望みに口を出すつもりは無いけど、本当に望んでいることは口に出すのが一番だね。それと、とりあえず今そういった人は居ないから、『取引』も無しで。まあ、その代わりある程度自由に過ごしていいよ」


「…………そう?なら自由にさせてもらいますよ? まあ、『殺れ』と言われれば何時でも言ってくださいね?」


冷たい声はどこへやら、最初の口調に戻したシリウナはそう言って座り直す。


「──さて、そういう・・・・話は終わりにして、遊びに行こうか!」


「ん、どこに行くの?」


「うーんとね、ここには『温泉』があるらしくてね?今日この時間なら人も少ないだろうし、行こうと思ってさ」


「ん、いく」



「っと言うわけで……ヘイ、シリ!行くよ!」


「……えっと、私ですか?『奴隷』ですよ?」


「関係ない!行こう!」


「ん、はやく、シリ」


「ち、ちょっとまってくださいよぉ!」


そうして二人は彼女の手を引いて、宿を飛び出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【『ハズレ』と言われた生産職は我が道を行く】
並行して書いているものです!(完結しました!)
イロアイの魔王〜魔王認定された男子高校生はアイの罪歌で世界を染める〜
新作始めました!
こちらの方もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ