ピンチ?
新章スタートです。
章名に関しては暫しお待ちを
「……日差しが直に当たると少しキツいな」
「そりゃあこれだけ良い天気ですからね。何かいい事でもあるんじゃないですか?」
──その日は、雲一つ無い晴天だった。
「いつもと同じ仕事をしていていい事があるかどうかは甚だ疑問ではあるが、まあ、そうであると信じて仕事をこなすしかないだろ」
「へいへいって、これって悲鳴じゃないですか?」
「ん?これは……だが、『気配察知』に反応は無いが……ッ!上だ!」
次の瞬間、地が爆ぜ土煙が立ち込める。
「くそっ、敵襲か!?ったく、これのどこが『いい事』だってんだ!」
「いや、まだわかんないですよ!?もしかしたら中から美女が出てくるかも──って、へ?」
「んな馬鹿な事言ってないで援軍読んでこ──は?」
二人の衛兵は言葉の途中で、目の前の光景に目を奪われた。
──何故ならそこに、白銀の天使がいたのだから。
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「いやー、風が気持ちいいね」
「ん、気持ちいい、けど……」
そう言いながら下を見れば遥か下に大地が見え、その上にあるものはまるでミニチュアのように小さい。
そして雲一つ無い晴れた空。
しかしその大地と空は上に行ったり横に行ったり、はたまた回転したりと無茶苦茶になっている
「あくろばっと飛行、だっけ。あれやめて欲しい」
そう、今レイは【白銀刃翼】で移動しているのだが、何故か知らないが急上昇・下降、急旋回やら回転やらをしまくっているのだ。
「えー、楽しいのにー」
「かかる重力を、いちいち【重力の魔眼】で軽減するのも大変」
「あー、そっか。イリスにもかかるの忘れてたや。んじゃあ、一直線に飛びますかね──【風撃】」
【白銀刃翼】の機能で急加速して真っ直ぐに飛んでいく。
この速度ならすぐに街に着くと思われ──
「レイ、今通りすぎた」
「えっ、あれ?ホントだ。【法則無効】、【再加速】っと、ここだね」
「……速度は?」
「……えっ」
「えっ?」
──結局、そのままの速度で地面に突っ込むのであった。
「ケホケホ、いやぁ、着地のことは考えてなかったや。生きてる?」
「……なん、とか。この感覚、『体力』もってかれた」
「じゃあリンゴジュースのむ?回復するよ?」
「……ん、のむ。……ほんとだ。回復した。なにコレ」
「そういう仕様です、とだけ言っておこうかな。それよりも早く入ろっか。──えーへーさーん!入っていい?」
「あ、ああ。その前に『ステータスプレート』を出してくれるか?」
「はいこれ。ところで、連れの子が『ステータスプレート』を持ってないんだけど、どうにかならないかなぁ」
「あなたが保証人になれば一定期間までなら入れますよ。あなたの分と、『ステータスプレート』が無い分割増しの彼女の分の入街税がかかりますが、手持ちは?」
「はい、コレで」
「では、ようこそ『モニア』の街へ!歓迎します!」
手に税を乗せると、衛兵は笑顔でそう言った。
「わたしの分も、ありがと」
「どういたしまして、それじゃあ行こうか」
──こうして【精霊帝】と『魔王』の二人は、いつぶりかの人里に足を踏み入れた。
「ねっ、いい事あったでしょう?先輩」
「……そうだな」
背後でそんな会話もされていたのだが、二人が気づくことは無かった。
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「さて、我々は今、危機に瀕しています」
宿をとってベッドに腰掛けたレイは、早々にそんなことを言い始めた。
「危機?」
「そう、実は──」
そこで少し間を置いて、一言。
「──お金がありません。稼がないと生活できません」
──と、言うわけで、今レイがいるのは剣と盾のマークの建物。
「やって来ました、『冒険者│組合』! 」
「『冒険者│組合』? 」
レイの言葉に首を傾げる。
「あれ?有名だと思うんだけど……って、ああ。イリスには記憶が無かったんだったね。簡単に言うといろんな依頼をこなすことで報酬が手に入るっていう仕事斡旋所みたいな所かな。ちなみに他にもいろいろな『組合』があるけど世間一般で『組合』って言うと『冒険者│組合』になるからね」
「ん、わかった」
「じゃあ、テンプレ期待して行きますか」
「『てんぷれ』?」
「というわけで、行っきましょー!おっ邪魔しまーすっ! 」
イリスは「あ、そのノリで行くんだ」と呟くのも気にせず入り口を開け放つと、中にいた全員の視線が集まり──固まった。
(ありゃりゃ、やっぱり『技能』の影響が出ちゃってるかな?いや、固まってるうちの何人かは彼我の差のわかる実力者、後の数名は影響すら受けない程の馬鹿か……あ、馬鹿がこっちに来た。テンプレかな?)
「おい、嬢ちゃん。こんな所になんのよ……ブクブクブク」
「おい、どうした!いきなり泡なんて吹いて……ゴフッ!」
「いったい何だってんだ!?とりあえずこいつら運ぶぞ!」
突然泡を吹き始めたり、血を吐いたりした冒険者を、その仲間が引きずって運んでいった。
「……あのー、イリスさん?やりました?」
「殺ってはいない。ただちょっと【死の魔眼】で見ただけ」
「あぁ、テンプレが遠ざかって行く……」
「ん、それよりも、登録は?」
「あー、行こっか。次のテンプレがあるかも知れないしね!」
そう言いながら受付へと歩みを進める。
「『冒険者』登録したいんですけど……」
「登録ですか?別室で行いますのでこちらへ」
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「ではまず初めに、お二人の『職業』をお願いします」
「無職です」
「……『ステータスプレート』に記載されている『職業』をお願いします。お持ちでしたらそれを見せてくれれば」
「あー、『錬成師』です。これが証拠です」
『ステータスプレート』を見せながら言うと、難しい顔つきになる。
「『錬成師』ですか……本気ですか?いえ、『ステータスプレート』があるので嘘かどうかを疑っている訳では無いのですが……」
「ああ、本気だよ。それにこれでもちょっとは強い自信はあるしね。ダメ、かな?」
「あれが、ちょっと……?」
イリスがポツリと零すが、幸い誰にも聞こえてはいない。
「い、いえ、ただ『冒険者』は基本自己責任ですのであなたの身に何かがあってもこちらは責任を負いませんので悪しからず。で、そちらの方は『ステータスプレート』をお持ちでは無いようですが……『鑑定魔道具』の使用に料金が発生しますが宜しいですか?」
「はい、大丈夫です……くっ、最後の生活費が……!」
「……凄い貰いづらいですが、確かに。では、『限定鑑定』……犯罪称号無し、『職業』は『魔王』ですか、珍しい──って、『魔王』!?」
『魔道具』の『鑑定』結果に本来有り得ないものが映り、悲鳴に近い驚愕の声を上げる。
「あー、それね。よく見ればわかると思うけど、【魔眼の王】っていう意味合いだから、詳細をよく見てみて」
「えっ、……本当だ。失礼しました。それより『職業』の詳細が簡易ではありますが見えるというのは、知らせていなかったハズなのですが……」
「ま、細かいことはいーからさ、次々」
「はぁ……まあ、いいでしょう。『仮証明』ができるまで『冒険者組合』について説明しましょう」
納得はしてないようだが渋々説明をし始めた。
要約すれば
・『冒険者』はランク制度であり、下からE、D、C、B、A、S、SSである。
ランクアップは一定回数クエストをこなすか実績で上がるが、Cに上がる時以降は試験を受ける必要がある。
・クエストには【常駐】、【一般】、【指名】の三つがあり、【常駐】【一般】の二つはランクがあり、『冒険者ランク』の一つ上までしか受けることができず、【指名】は個人やパーティーへと依頼であるため、ものによるがほぼどのランクでも受けられる。
とわいえ、本来実績を積んだ者達への【指名】が多いので、最初のうちは気にすることは無いという。
・『冒険者』の問題は自己責任である。
と言った感じだ。
「せんせー、質問でーす」
「先生ではありませんが……どうぞ」
「どんな人でも最初は最下位ランクからのスタート何ですかー?」
「いえ、最初の『入会試験』をクリアしたあとに『ランク選定試験』を一度だけ受けられます。まあ、これでは『C』までしか上がりませんが……っと、『仮証明』ができました。どうぞ」
木の板に焼印がされただけの『仮証明』が手渡される。
「で、『入会試験』とは?」
「『採取系』、『雑務系』の二つと、『ランク選定試験』を受けるのでしたら『討伐系』も必要ですね。それらを最低一つずつクリアしてきて下さい。もちろん報酬も出ます」
「──よし、行くよイリス!今晩のご飯代だ!これが無ければご飯抜きだよ!」
「……レイなら、そこら辺から捕まえてきて、何か作りそう。だけど、いつまでも頼ってられない、いく」
報酬の辺りを聞いた二人は、その場から駆け出した。




