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勇者said:そして彼らは旅に出る

この章最後の話です。

「ここ、は?」



──先ほど眠りについたハズなのに、気がつけば白く輝く空間にひとり立っていた。


いや、今しがた目の前に金に輝く髪の少女が現れたから、ひとりではなくなった。



「君は?」


『私は、『聖剣』に宿る。【光】の『精霊』。ここはアナタの夢の中に作り出した、擬似的な空間』


「名前は?」


『──私に名前は、無い』


その言葉に少し寂しさを感じるが、特に何かが言えるわけでもなく、「そっか」と言うだけにとどまる。


「で、どうして今日現れたのかな」


『──『精霊の森』にて、何かが起こった。確認しに行ってほしい』


「『精霊の森』?聞いたことがないな……」


少なくとも、この世界で習った一般教養や地名に関して憶えているが、聞いたことは無い。


『本来、場所は秘匿されているし、人間は基本知らない』


「どうして?」


「…………狙われているから」


この問いには少し考えてから答えた。


「狙われている?誰に?」


「『魔王』」


その一言に、自分も無関係ではないことに気がつく。


「なぜ、『魔王』が……」


「『王位精霊』が守るモノを、狙っている」


「それを奪われると、どうなる?」


「それは──ごめんなさい、時間切れみたい」


その言葉をかわきりに、白い世界を『黒』が侵食し始める。


「まっ、最後にそれだけでも──」


「今、この場で言えるのは、あなた達にとっても大変なことになるということ、だけ。だけど、行くか行かないかの判断は、あなたに任せる──」


──それを最期に、世界は光に包まれた。



「はぁ、全く、忌々しい『剣』。まさか、『心象世界』にまで干渉してくるとは……この『剣』の作成者には、注意が必要」


その言葉は、光輝の耳に届くことは無かった。



………………………………………………………………………………




「──そんな事言われたら、行かないわけにはいかないだろ」


そう呟きながら、身体を起こす。


(とは言ってもどうしたものか……とりあえずアドルフさんに──いや、ことの重大さを考えると『国王』様、かな)


「──どうぞ」


その言葉に、部屋の扉が開く。


「さすが『勇者』様です。もう気配を察知できるとは……」


「ははは、それ程でもないよ。それは置いといて、メイドさん、『国王』様に取り次いでほしいんだけど……いいかな?」


「『国王』様にですか?理由をお聞きしても?」


「至急、伝えないといけないことがあってね」



------------------------------------------------------------



「──ということがありまして……」


「ふむ、そうか……それは気になるな」


『聖剣』に宿る『精霊』のとの話についてを伝え終え、テーブルのお茶に口をつける。


内心、すぐには信じてくれないだろうと思っていたのだが、それどころかすぐに聞き入ってくれた。


「元々『聖剣』は『光神』が創ったと言われていてな。それであれば【光】の『精霊』が宿っていても何ら不思議でもない」


そう言って国王様は思考に耽る。


「うむ、もし何かがあるのであれば、向かうべきかもしれんな。何も無いならば無いでよかったことではあるし、それに今は『迷宮』の先には進ませられんしな。経験を積むためにも、行ったほうがいいかもしれん」


「なら、ぜひ──」


その言葉と途中で突然、バタン!と強く扉が開かれた。


「国王陛下!至急お伝えすることが──っと、対話中でしたか、申し訳ございません」


「いや、気にすることは無い……それで、どうしたのだ?レストよ。お主がそこまで慌てるのは珍しいな」


「お恥ずかしい限りですが……それどころではないのです!『精霊の森』に──」


「……想像よりも早かったな。いまそれに関することを『勇者』殿と話しておったのだ」


「……コウキ君と、ですか?ではもう【精霊帝】についてもご存知でしたか」


「うむ──ん?今なんと?」


「?『王位精霊』のさらに上位、【精霊帝】が誕生したと」


「我は『精霊の森』が襲撃を受けたと聞いたのだが?」


「えっ!?そうなのですか!?」



そのことは知らなかったのか、驚き声を上げる。



「うむ、その話は後ほど本人から聞くがよい。だが、どちらにしよ確認せねばならぬな。──それで、『勇者』殿よ。行ってくれるか?」


「もとより、行くつもりでしたから」


「助かる。とは言っても、理由の説明も無く唐突に『勇者』がいなくなると言えば民の者たちは不安がるであろう。三日後に『勇者パーティー』は見聞を広げるための旅に出るとして、出発パレードを取り行おう。それまでにレストとアドルフでルートとメンバーを決めよ」


「御意に」


「『勇者』殿はパーティーメンバーへの伝達を頼む」


「はい」


こうして、出発は三日後となった。


------------------------------------------------------------



──そうして、三日後の昼。



「……で、コイツらは誰だ?」


そう言って隆静が指すのは、集合地点にいる白ずくめの集団。


「あれじゃ無いですか?この前の『迷宮都市襲撃事件』のときの……」


「『無色ノ教団』だ」


桜の言葉に続けたのは、もう一つのパーティーのリーダー『赤坂 圭吾』だった。


「今回の『精霊』の件で、動くんだとよ」


「どういう事だ?」


「さあ?俺も詳しくは知らん」


「まあ、それでも『迷宮襲撃事件』のときも魔族を相手取れるような集団だし、実力的には申し分ないんじゃない?」


「ま、それもそうか」


そういう鈴と納得と言うよりは受け入れた隆静を見て、ため息を吐く。


「個人の事情ってヤツかね?っていうか、どうしてコイツらに気付かれないでやってきたんだ?」


「お前は何をブツブツ言ってるんだ?まあ、それは置いておいて、光輝。いつになったら出発するんだ?」


「アドルフさんが来るからそれまで少し待って……っと、来たみたいだよ」


「……スマン、少しギリギリになってしまった。何分、コイツがごねたもんでな」


「ごねてなどいませんよ。ただ、私はウワサの『教団』とやらが参加するとは聞いてなかったもので、事情を知ろうとしただけですよ」


会話の流れからして法衣を纏った見知らぬ人物がそのごねた本人となるのだが、この場にいる『勇者』たちには心当たりがない。


その中から、りあが問いかける。



「……そちらの方は?」


「おっと、これは失礼、『光神教会』【大司祭】を務めておりますニアラと申します」


「『精霊』に何かがあったと聞いて『光神教会』も動きはじめたみたいでな、我々の遠征に同行することになった」


「こう見えても【光属性魔法】

はLv10まで収めておりますので、最低でも足でまといにはならないという自身があります」


「というわけで、まずは途中にある『パラス帝国』に向けて行くからな……あ、ちなみにだが『無色ノ教団』については同行はするが別行動らしいから、そのつもりで」





──そんなやり取りをしつつ、彼らの旅は始まるのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「『勇者』が来る、か。それと、新たな『精霊』の頂点、【精霊帝】とやらが誕生したか」


水晶の連絡魔道具の前で、通達を受けた男が誰に聞かせるわけでもなく、ひとり呟く。


「『勇者』と言うからにはそれ相応の『チカラ』と『勇気』があるのであろうな?ククク、今から楽しみで仕方無いな。それに加え【精霊帝】と来たか…………時代が動くな。いや、大きなうねりが来ると言った方が正しいか。さて、そのうねりは──」



そう言いながら傍らにある剣を抜くと、禍々しいオーラを纏わせる。



「──我が欲求、どこまで満たせるものか……」



その目には、獰猛な獣を思わせるような光を湛えていた。

これにて『精霊の森』編は終了です。


やっと『光神教会』が出せた……


次の章はもう少し長くなりますが、テンポを上げていければな、と思っています。

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