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彼のモノ『』、故に

少し遅れてしまい、申し訳ございません。


6,000字ほど書いていたのですが、二回ほど全て消えてしまったので、半分の3,000程で投稿させていただきます。


それでは、どうぞ

「──さて、聞かなきゃいけないこともあるし、終わらせようか」


なんの前触れもなく、突然現れたレイはそう呟いた。。


「レイ、さん。待ってください。さすがのあなたでも、あの『災禍』相手では……」


「……へぇ、あれが【災禍】ね。『天鯨』、またの名を【災禍ノ鯨】」


この名はかなり有名で、零刀がいた王城の図書室にあった本にも書かれていた名前だ。


「って言うことは周りの取り巻きが『災厄』、『天泳鮪てんえいマグロ』かな?」


「ええ」


「へぇ、そっか……『無眼』、【一部情報を開示】」



------------------------------------------------------------

なし LV Age

種族:〔魔物〕

称号:【災禍ノ根源】【'6'v7#2の眷属】


固有技能ユニークスキル〉:天候支配 水分支配 下位種族支配 天泳 瘴纏


------------------------------------------------------------



「また文字化けか……まあ、もうわかってる事ではあるけどさ」


空を泳ぐ鯨を一瞥し、呟く。


「ん、呼んだ?」


「いや、呼んでないけど」


「ん、冗談。それより、間に合った?」


「うん、ギリギリね」


「……で、これはどういう状況なの?」


「イリスさんに、ドラちゃんまで?どうして……」


「いや、私は気付いて無かったんだけど……なんかコイツが『という訳で、ちょっと行ってくる』とか言って消えたのよ」


「いや、マグロ見つけたら当然の反応でしょ?」


「……そうなの?」


「いや、それは知らないけど──」


そう言いながら振り向き、一言。


「──アレは美味しい」


その言葉に、イリスがピクリと反応する。


「──レイさん!後ろ!」


「──『それは貪欲で暴食な樹木の枝』【禁樹ノ挿木】」


背を向けたレイの姿を隙と見たのか、『天泳鮪』が襲いかかるが、地から鉄が生え、貫かれる。


「『其れは他を求め喰らい尽くすが満たされぬ欲望の権化。ならば汝が満たされることは無く、ただただ際限無く喰らい尽くすだけ』──【貪欲ナル禁樹】」


『天泳鮪』を貫いた部分を起点として、枝分かれし始め、急成長する。


──その鉄の捕食者が、獲物目掛けて枝を伸ばし、飛び出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「なに、これ……」


私は、目の前の光景が信じられなかった。


「ギュアアアァァ……」


「ギュァアア!」



──私達があれだけ苦労してどうにかしていた『災厄』が、彼が生み出した鉄の木に次々と貫かれ、絶命していく。


「こんなの、おかしい。おかしすぎる!ありえない!アレは、そんな簡単に生み出していい存在じゃない!」


ドラちゃんの悲鳴混じりの声に、遅れながらも気がついた。



本来、『食事』というものは生命活動の維持であれ、娯楽であれ、何らかの目的が存在するものだ。


──それが、あの【樹】には無い。


ただただ、目の前の存在を喰らい尽くすだけ。


──いや、それならば一つだけ目的を見いだせる。



──ただただ、喰らい尽くすためだけに喰らうという、永遠に満たされることの無い目的が。



「んー、ちょっと効率悪いかな……『汝はそれでも満たされず、我が実を落としてさらなる欲を満たさんとす』」


そんなことを考えている私達等いざ知らず、彼はソレを増やし始めた。


増えたソレは際限無く伸びていき、さらに『天泳鮪』を喰らい尽くす。


そこから降り注ぐ血肉は少しも無く、それらの骸は全て喰い尽くされる。



「ギュォォォオオオオオン!」


しかしながら、それを黙って見ている『天鯨』では無く、咆哮と共に幾条もの【雷】をレイ目掛けて浴びせる。


「──『【禁樹】、防ぎなさい』」



辺りから枝が伸びて、その【雷】

受け止め、流す。



『ギュォォォオオオオオ!』


『災禍』が、霧をばら撒く。


「レイさん!その霧には『瘴気』が──」


「ああ、見えてる」



その一言を残して、霧に呑まれる。


「レイさん!」


「──ん、大丈夫」


私の声に、隣からイリスさんの声が返ってきた。


「見てればわかる」


その言葉に返答するかのように、突如吹き荒れた豪風に濃霧が吹き飛ばされた。


「まさか、そんな……いまの、【魔術】?ありえない、なんで、そんな……」




──【魔術】、それは人間などが使う【魔法】と似た、私たち『精霊』が扱うものである。


【魔法】は人間が、大気中などに存在する『魔素』を精製し直して『魔力』にしてから現象を起こすものだ。


それに対して【魔術】は、『魔素』そのものを直接操ることによって、直接現象を起こすものだ。

それすなわち、『自然』そのものを操ることと同義である。


それを、使ったのだ。


「……んー、普通に倒して、向こうに察知されるのも面倒だね────消すか」


──瞬間、背筋に悪寒が走った。


「『チカラの行使を決定。世界への被害を抑えるため、【擬似世界】を構築──』」



目を閉じるその姿は、ほんのりと光を帯びる。



「『【擬似世界】を主として、外界との接続を乖離──確認しました』」


何故か脳内にまでレイさんの声が響く中、『精霊の森』の外側にあったリンクが切断された。


レイさんが目を、ゆっくりと開く。



「『無にて切り裂き、虚無へ誘え』」



──次の瞬間、『天鯨』を含む世界がズレた・・・・・・



そこを起点として黒く見えるナニカが広がる。



──これは予想でしかないが、恐らく『虚無』なのだろう。


そこには何も無いが故に反射する光も無く、全ての光を呑み込んでいるから黒く見えるのだろう。



その『虚無』に、『天鯨』が呑み込まれていく。



『天鯨』は何かを叫んでいるようだが、こちらに聞こえることは無い。


「……少し、やりすぎたかな」



『天鯨』が呑み込まれたあとには、雲の断たれた空と、底の見えないくらいにまで裂けたかのように消失した大地。



それを見て、私は──



「ああ、なんて世界は、『理不尽』何でしょうか」



先ほどと同じ言葉を零し、笑みを浮かべた。



------------------------------------------------------------



「ふう、やっと終わったね」


「ん、終わった。【禁樹】がほとんど喰らってたから、そこまで多くなかった」


そう言う二人は既に掃討を終了しており、遺骸を回収していた。


「【食料庫フードストレージ】っと、これでいいかな。……鯨のお肉も少し残しておけば良かったかな?……そう言えば、みんなは?」


「ん、あっちに集まってる」


イリスの指を指す方を見ると、『王位精霊』とドラちゃんが集まっていた。


「ありがと、おーい、……って、あれ?なんでそんなに物々しい空気なの?なんかあった?」


「レイくん……ウルが、ウルが!」


よく見るとウルは横たわっており、心なしか透けて──否、確実に透けている。


「ボクが戻ってきた時にはもうこんなで、何もできなくて、それで、それで!」


「ワタシも、【魔力譲渡】したりしたけど、効果なかった」


「あたしは【火】だからなにもできないし、どうすることもできねぇ。でも、このままだと、ウルが!どうすれば!」


「これはさすがに……『生体魔素』そのモノがやられてるから」


各々が、己の無力さに打ちひしがれる。


代表として苦労し皆をまとめあげ、それでいて『親友』でもあった彼女たちの辛さは同じ立場にならなくてはわからないだろう。



「みん、な。そんな顔しないで、ください。私は、この選択で皆を救えたのならば、後悔は、ありません。強いて言えば、私が居なくなってからのあなた方が、心配ではありますが……」


そう言ってニコリと笑みを浮かべる。


「──皆さん、今までありがとうございました」


「ウルーーー!」


そんなウルにニアが抱き着き──



「『イグニアンネ、停止』」


「──えっ?」



──切る前に、レイの言葉によって強制的に止まらせられる。


「ウル、死ぬのかな?」


「私を形成するモノが、壊れ始めてますからね。さすがに、助からないでしょう」


「──そっか。でもなぁ……聞かなきゃいけないこともあるんだけど……あ、そうだ。少し実験させて貰ってもいいかな」


「……別に構いません。あなたのおかげで、助かったようなものですから。どうぞ、お好きに」


「──なにを、するつもり?ウルに何かするようならば、やめてもらう」


「──そうもいかないんだよね。『全員、その場から動くな』」


「さすがに、ボクも親友がどうにかされるのを黙って見てられないよ!【暴虐の雷嵐】!」


「──イリス、手出し無用」


雷を伴った嵐を、腕を振るうことだけでかき消す。


「──『我を邪魔することを禁ずる』」


「──ッ!?」


その言葉に、誰も動くことができなくなる。


「……こんなものか」


そして今度こそ、ウルを見る。


「……優しいん、ですね」


「そうかな?今だって無理矢理命令してるけど……」


「でも、誰も殺していない」


「──まあ、それが優しさに繋がるのかは一旦置いておいて、だよ。覚悟はいいかな?」


「ええ」


「なら、いくよ。──『我は望む。我が望む必要の無くなることを』」



そう言いながら、ウルにそっと触れた。



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