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襲い来る『災禍』

ついこのあいだまで電波が届かないような所に行っておりまして、投稿が遅れた次第です。


それでは、どうぞ

「さて、そろそろ彼女たちのやることも終わってるだろうし、戻ろうか」


「?なにしてるのか、知ってるの?」


レイの言葉に疑問を覚え、ぶつける。


「知らないよ。ただ、それに関してちょっと識ってただけ」


「その言い回し、よく使ってる。どういうこと?」


「んー、多分説明しても理解できないと思うよ?」


「ん、ならいい」


「はぁ、なんで私の『名前』が『ドラちゃん』になってるのよ……せめてらせめて『ドラ』にしなさいよ……」


そう呟くのは、二人とともに歩く、深緑色の髪の幼児、『ドライアド』こと『ドラちゃん』である。


ちなみにであるが、『名前』の変更を要求したのだが却下され、『ドラちゃん』に固定されている。


「それより、依代から離れて、大丈夫?」


「前はできなかったのに大丈夫になったのよ。植物があるところならね。だからさすがに砂漠とかは無理そうだけどね」


「レイの、おかげ?」


「ま、そういうことになるんだけど、そのせいで『ドラちゃん』になったこと忘れてないんだからね」


「んー、さすがに『進化』は予想外だったけどね──?これは……」


「あ、ちょっと!いきなりどうしたのよ!」


「……レイ?」


言葉を切り、急いで駆け出すレイを二人も遅れて追いかける。


少しすると木々が途切れ、視界が開ける。


「これは……そうか」


「なに、これ……」


「まさか、もう攻め込まれて……?」



──空を覆い尽くす、巨大な│魚の群れ(・・・・)であった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ウルが見つけ、ウィンが通達してからは早かった。


「総員!戦闘準備!【風】と【水】で相手の飛行妨害、【土】【火】で攻撃の対空布陣展開!」


(空からだとすると……『鳥類』の魔物かしら……?雲に隠れたのに、カタチがわからない?『隠密系統』の『技能スキル』かしら?)


色とりどりの光球や、小さな人型が陣形を取り終えるのを見届けながら思考巡らしていく。


「──それでも、位置はわかる。総員、撃てーー!!」


茶と赤が雲へと突き刺さり、少しして爆音。


『ギュォォォオオオオオン!!』


雲が吹き飛ばされるが、爆風などはその下に張られた【風属性】の防壁によって下に広がることは無く、直ぐに爆煙によって遮られる。


「今の……まさかっ!?」


「ウル?今の知って──くぅ!?マズい!防壁が突破される!」


【風属性】の防壁が何かに押しのけられるかのようにカタチを変えていく。


「【水】部隊!防壁の補強を──」


「ムリ!もう決壊する!!」


防壁をぶち抜いて現れたのは──


「『天泳ぐ鯨』、それは天を泳ぎ、操る。『天鯨』。そして自分の『下位種族』を引き連れて現れる、まさに『災厄』の根源であるからこそ名付けられた名が──」



『ギュォォォオオオオオン!!』



「──『│災禍ノカラミティ・ホエール』」



その『災禍』が、『災厄』達を率いてやってきた。





彼女らは、頑張ったと言えるであろう。


何せ、人間の付けたランクでは『SS』。

暴れれば、国の存続が危うくなるほどの、正しく『バケモノ』なのだから。


それに対して、各『王位精霊』を中心として、『精霊』達は奮闘し、率いられていた『災厄』を何体も撃ち落とし、『災禍』にもダメージを負わせていたのだから。



このまま行けば、もしかしたら倒せるかもしれない。


もし、この魔物が│普通の魔物・・・・・であったら、


さらに『瘴纏』という『技能スキル』を持っていなかったらの話だが。




『瘴気』は生命体にとっての猛毒である。

その毒は耐性のない人間などの肉体を持つ生物であれば生命活動が妨げられ、死に至る。


しかし、これは肉体が壊されることによって起こる現象では無い。


もっと正確に言えば、『生体魔素』の活動が妨げられ、結果弱った身体が生命活動を維持できなくなり、死に至るのだ。



ならば、肉体を持たずに、身体が【属性魔素】と『生体魔素』のみで構成されている『精霊』がそれを受ければどうなるか?



──答えは簡単


『あああああ!!』


『ぎゃああああ!』


『うわぁぁぁ!』



──降り注ぐ血や肉が触れる度に、『瘴気』がその身を犯していく。



(このままじゃあ、全滅する!どうすれば、どうすればこの状況を変えられる?!)


「ウィン!負傷者をこちらへ!」


「ウル?どうするつもり?」


「『──我は【水】、故に生命を、再生を司りし者なり』、それが私よ。一応『瘴気』を取り除く手段を持ってるの。でも、使ったらしばらくの間私は動けなくなってしまうの。だから、後はお願い」


そう言って、近くにいた『瘴気』に侵されていた『精霊』に触れる。



すると、纏わりついていた紫色のモヤが晴れていく。


(思ったより……キツいわね)


「ウィン、だから、ね。頼んだわよ」


「……わかった。ムリだけはしないでね。ボクも、なるべく早く終わらせるから!」


そう言って飛んでいく親友を見届けながら──


(ごめんね、本当は違うの。これは『治す』チカラじゃあ無くて、『移す』チカラ。『瘴気』そのものを、私の身体に移すチカラ。これは、変えるチカラのない私ができるせめてもの行為──)


「──それに私達が負ければ、世界的な危機になりかねませんからね。仕方ありません」


細やかな【水】を拡散していく。


「──私が潰えるのが先か、あなたが潰えるのが先か。勝負と行きましょうか」



繋げた【水】を通して、他の『精霊』達から『瘴気』を取り込んだ。



「う、あぁぁ」


あまりの苦痛に思わずうめき声を上げ、地に膝を着く。


(これが、みんなの受けていた苦痛。辛い、苦しい……けれど、『王』たる私が、ここで終わるわけには行かない!)


脚の震えを押さえつけ無理矢理に立ち上がって顔を上げる。



──その顔には、『瘴気』を身に溜めすぎたのか、紫色の紋章の様なものが浮かび上がっている。



()


己の身体から【水】を生み出し、それに『瘴気』を乗せて集める。


その【水】の色は、【紫】


『──我、『王位精霊』の名の元において、この地に【紫】の【水】を集わせ、我が敵を殺す、死の刃を!』


それは、自分の名を用いて行う【存在詠唱】。

自分の『存在』の『強さ』を利用して『魔力』などを従わせる技術であり、それによって威力も上がる。

威力に関しては『称号』によるところが大きく、『称号』の強力さによって変動する。



──しかし、リスクもある。



それは『名の強大さ』が行使するチカラに負けてしまうことによる【死】。


自分の『存在』が行使するチカラに負けてしまうのだ。


(結構ギリギリだけど、行ける──)


「──【死を齎す紫水の刃】!」


「ギュォォオオオ!」



──巨大な紫色の【水】の斬撃が飛び、『天鯨』を切り裂く。


「ッ!?マズい!」


『瘴気』の混じった血肉が、降り注ぐ。

それを見たウルは咄嗟にその血を操作し、『精霊』達に当たらないようにする。


「く、ぁぁああああ!」


しかし、ウルもただでは済まなかった。

『瘴気』を無理矢理に【水】として操ったために、その『魔素』を介して多大なるダメージを受けたのだ。


もはや身体を動かすことさえできず、その場に倒れる。


「ギュォオオッ!」


天鯨の──『災禍』怒りを含む声に呼応するかのように、『災厄』がウルに襲いかかる。



「「ウル!」」


助けようとするが、他の『災厄』に邪魔されて届かない。


(もう、終わりなのでしょうか。どうすれば、現状を変えられたのでしょうか。私如きが犠牲になっても足りなかったのでしょうか……)


そんなことを考えながら、目の前に迫る『災厄』を見つめる。


(ああ──)


「──世界は、なんて『理不尽』何でしょうか……」



そう言ったウルの目の前で、その『災厄』の頭部が│無くなった(・・・・・)。


「……へ?」


「──ギリギリ間に合った、かな?」


目の前で、白く長い髪が風に揺れる。


(まさか、こんな、ところに……どうして……?)


「──さて、君たちに聞かないといけないこともあるし、終わらせようか」



──が、この戦場に姿を現した。


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