観光……そして
眠いです。
どぞー
「さて、どこに行こうか」
「ん、直感?」
──二人が観光することを決めた時。
『──そういうことなら』
『ぼくたちが!』
『案内するよー』
と、青、緑、黄色の光球が言う。
「ああ、元『微精霊』三人組か」
「ん、わたしたち、ここのこと知らない、頼んでみる?」
「んー、そうだね。そろそろお昼時だし……じゃあ美味しいものを優先で頼もうかな」
『『『了解しましたぜっ!』』』
そう言って案内される先には様々なものがあった。
「これは……『ウォーン』という、外は黒と緑のシマシマ、中は赤くて甘い植物。向こうのスイカと似たものだね」
『そこそこ珍しいけど、知ってるの?』
「まあね、識ってるね」
「ん、甘くておいし」
「あ、お塩かける?甘くなっておいしいよ」
「ん、かけて」
『そうなの?』
『いいなー』
「食べるかい?」
『『『うん!』』』
「……これは『メロウ』だね。皮は固くて食べれないけど中はオレンジ色で甘いよ。それにしてもメロンっぽいね。直径一メートルほどもあるけど……ジュースとか良さそうだ。はい、フルーツアートのできあがり」
『『『「おおー」』』』
ちなみにサイズがサイズなのでお馴染みの『てつのけん』でカットしていた。
「あまかった……ん、半分」
「ありがとう……もう食べたのか。じゃあ残りはジュースにしよっか。『【無属性結界】を球状に展開。内部に【撹拌術式】を展開。』──と、擬似的なミキサーでだけど完成。どうぞ。君たちもほら」
『私たち精霊は娯楽と少しした食事しか取らないので、気にせず食べてもらって──』
「いいからいいから」
『『『うまーー!』』』
「それは嬉しいけど食べ過ぎには気をつけてね」
イリスや精霊たちを見ながら苦笑する。
「これは、リンゴだね」
「リンゴ……?中まで赤いの?」
『なかは赤くないよー』
「うん、しゃくしゃくしてて美味しいね。いくつか貰っていこう。……なんでリンゴはそのままの名前、状態であるんだろ?」
「この桃みたいなのは……ああ、さっき飲んだジュースに使われていた『トウ』ね」
『そうだよー。甘くておいしいから、ぼく達も時々飲むんだー』
「あまうま。また、ジュース飲みたい」
「そっか、まぁその前に──」
『って、ちょっと待ったぁー!』
という言葉と共に、小さな影が飛び出し──
「【武器庫】『展開』、『結界剣』を【射出】。数は五、着弾と同時に【結界】を展開」
まあ当然、いきなり生成された【結界】を前に、急に止まることなどできず──
びたんッ!
「へぶっ!?」
──顔面から【結界】に突っ込んだ。
「幼女、GETだぜ?」
「ん、げっと?だぜ?」
『げっと、じゃなーい!』
ガンッ!と自分を閉じ込めている【結界】を叩きながら深緑色の髪の幼女が叫んだ。
「これ球体にして手のひらサイズまで圧縮したら夢のボールが……」
『やめてっ!普通に死ぬから!だからこっちに向けた手を徐々に握らないで!怖いから!』
「……レイ、あれなに?」
「『ドライアド』、『植物』という『存在』から生まれた精霊の一種で、発生の過程で『植物系統』の魔物が発生したことにより『魔物』としての【性質】が混同し、『魔精』という種族で存在している生命体だね」
「……この変なのが?」
「誰が変なのだ!てかそこまでわかっててヒトの依代の『トウ』を好き勝手取るかな!?」
「いや、だって今の今までこの依代から離れてたじゃん。気づくわけないよね?」
「うぅ、それもそうだけど……」
どうやら、自分が居なかったという事実を棚に上げて言っていたようだ。
「まぁ、こっちにも非はあるからね。……えっと、『名前』は無いんだっけ?」
『そうよ。『植物』っていう大きな一つの存在から発生した『存在』なんだから。それを上回る『存在』でもいない限り【名付け】すらされないんだから!』
聞けば『ドライアド』という『種族』は元は『植物』から生まれた『精霊』で、全ての『ドライアド』という『種族』が一つの生命体であるらしい。
故に『ドライアド』という『種族名』以外の名は持たず、『種族名』=固有名であるのだとか……
「……? どういうこと?」
「例えるなら『木』であれば『トウの木』っていう種があるでしょ?でも『植物』っていう大きな括りで見たら『トウの木』も他の木も『植物』、だから『植物』という大きな括りから生まれた『ドライアド』は『植物』という括りの性質しか持たない上、その『植物』という一つの『存在』より上位でないと名前すら付けられないってことだよ」
「へぇー、よくわかってんじゃん。……や、知り過ぎじゃない?」
零刀の言葉に少し感心しながらも、「あれ?」と首を傾げる。
「とりあえず今回のことは謝罪するよ。……僕達はここに来たのは初めてでさ。そこの精霊達に案内してもらってたんだ」
「──おい、そこの三精霊!こそっと逃げようとするな!ぶん殴るぞ!」
『『『はいっ!ごめんなさい!ドラちゃんの依代だってことはすっかり忘れてました!』』』
「ってコラー!ドラちゃんって呼ぶなー!」
そんなやり取りをしながらわーきゃー騒いでいる『精霊』たちを見ながら──
「ドライアド……魔物……ドラ……もん……いや、これ以上はアウトかな?」
──だいぶ危ういことを考えていた。
「それにしても『ドラちゃん』ね。ふふ、そうか。良し!決めた!君に『名前』を授けよう!」
『いや、聞いて無かったの?『植物』っていう大きな一つの『存在』を超えたモノくらいしかできないって──』
「今日から君は『ドラちゃん』だ!」
「いや、だから──」
──『』、識別番号:番外00/11より『ドライアド』、個体識別番号:N.02.01へ【名付け】の要請。
──個体名『ドラちゃん』を認証しますか?
──システムメッセージ:認証相手が存在しません!
──システムエラーを防ぐため、強制的に『個体名』、『ドラちゃん』を贈与します。
──個体名が設定されました。
『は?ちょ、システムメッセージ?何それって、ええっ!?名前が『ドラちゃん』になってる!?』
──個体名『ドラちゃん』を【名付け】により『ドライアド』の上位存在として認証します。
──上記に従い個体名『ドラちゃん』を上位存在へと強制進化します。
「え……は?ちょっ、何やってんの!?」
ドライアドは次第に明滅を繰り返し始め──
「おや?『ドラちゃん』の様子が……」
『『『ドラちゃんが』』』
「進化した?」
「いやいやいや、私自信が『ドライアド』の進化って聞いたことないんだけど……ええぇぇ……」
「……あっちか。やはりあの樹が……」
頭を抱えるドラちゃんをよそに、レイは無機質な銀色の瞳で虚空を見つめていた。
『『『ドラちゃんがおっきくなった!』』』
「ドラちゃん言うな!……ん?依代にできる木しか操れなかったのに、他の木も操作できるようになってる!?はぁ、あなたいったい何モノよって、聞いてない?!」
姿を元に戻しながらため息混じりに言うが、零刀はそれを聞かずに地面を凝視している。
「まさか、これは……」
「ん、地面なんか凝視して、どうしたの?」
イリスの言葉にさえ気を向けず、その場に膝を着く。
「そうか、そういう事か。ドラちゃん、そう言えばあの樹も操作できるの?」
そう言ってここに来て最初に見た大きな樹がある方を指す。
「捕まえたぞお前らー!え?あの樹は無理よ。アレは樹でありながら樹では無いからね」
「へぇ、そっか。教えてくれてありがとう、ね」
(なら、やっぱりあの『王位精霊』をどうにかするしかない、か)
今は見えない、その樹へと視線を向けた。
------------------------------------------------------------
──三人は台の上にある光るものに手をかざしていた。
『ダメ、こっちも情報なし』
『ボクも、この調子だと難しいかな』
『そうですか……やはり難しいですね。とりあえずこの作業は中断しましょう。……となるとレイさんにお願いするくらいしか残されていないでしょうか』
三人は目を瞑り、口を動かしているわけではないが『念話』という『技能』でやり取りしながら作業を終えていく。
「で、ウル。どうするの?」
「ええ、やはりレイさんにお願いしようかと──」
瞬間、ウルは身体をこわばらせ、視線を巡らせる。
「まさか!いや……でも、そんな……早すぎる!」
「……ウル?」
アンの言葉に反応すること無く、壁をすり抜け外に出ると、大きな枝に乗り、鋭く視線を向ける。
「情報の方に気を向けすぎて気づくのが遅れました……まさかここまで早く来られるとは思っていませんでした」
「まさか、やつらが?」
「ええ。ウィン、精霊たちに警告を」
「……なんて?」
「これから、戦いが……戦争が始まると」
──ウルの視線の先では、空で何かが蠢いていた。




