勇者said:報告会議
少し短めです。
少し遅れましたが、どうぞ
迷宮都市『オルデール』の襲撃から、一週間後。
王城のとある一室にて、三人は報告をし合っていた。
「──とまあ、迷宮探索の方はこんな感じだな」
「それにしても、【隠蔽結界】を張る『魔道具』に【物理障壁】と【魔法障壁】を張る『魔道具』ですか……人がそれを使うならばまだしも『魔道具』としてとなれば特に後者は有り得ません」
アドルフの報告に【宮廷魔導師】であるサラが否定する。
「本来、【物理障壁】というものは魔力を固めることで物理的な攻撃を防ぐものです。逆に【魔法障壁】というものは魔力を散らす障壁を張るものです。『固めた魔力』と『散らす魔力』、この二つを同時展開させるのには別々の『魔道具』を、互いの影響を及ぼさない距離に置いた上で使用しなくてはなりません」
「だよな……ありえないよな。でもあったんだぜ?」
場を、静寂が支配する。
「……でも、そんなことを言ってしまえばその『レイ』っていう子もありえないって言われてたのに生きてるのですから」
「そうだな」
そこで一旦話を切り、お茶に口をつける。
「後は……この前の『迷宮都市襲撃事件』か」
空気が、引き締まる。
「被害者は……百にも満たないんだったな」
「ええ。それでいて相手の指揮官の討伐に成功。さらに襲撃者は一人残らず殲滅、でしたね」
「……というか、俺が駐屯兵を引き連れてきた時には避難が終わっているどころか、事が終わってたんだが」
「そう、なんですよね……『無色ノ教団』でしたっけ?」
「ああ。発足時期は最近、崇める神は不明。教示は特に無く、他の宗派でも加入可能。か」
「──いえ、教示はありますよ」
今まで聞いているだけだったメイド長リーシャが、口を開く。
「確か、『無意味に傷つくな』、『無意味に犠牲を作るな』、『我等にさほどの差は無い』でしたね」
「……お前、それをどこで?いや、お前まだ何か知ってるだろ」
「──さあ?私が知っている事なんてさほどあなた方と変わりませんよ」
ジト目でそう言うアドルフにリーシャはそう返し、姿を消す。
「いいんですか?」
「ああ、アイツのことだ。王国に害を及ぼす可能性のあることは黙っていないだろうしな。大丈夫ってコトだろ」
そう言ってアドルフは残りの紅茶を飲み干すのであった。
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王城のとある一室。
白い仮面に白いローブという、どこからどう見ても怪しい集団が集まっていた。
「これから、特別緊急会議を始めます。ひとまず、この前の襲撃事件はお疲れ様でした」
「ああ、あれは大変だったな……」
「というか、あの後が大変だったよな」
「疲労やらなんやらで数日寝込んでたぜ」
「私なんて完全復活したのさっきよ……」
『S』の言葉に口々にそう言うが、意識はどこか違うところに向いているように思える。
「──では、待ちに待った本題に入りましょう」
先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように止み、空気が変わる。
「──迷宮の百一層にて、我らが主の生存を確認しました」
瞬間、怒号にも似た歓声が部屋中に響き渡る。
ちなみにだが、『風属性魔法』の『技能』持ちが全員で【防音】を施しているので音はおろか、振動すら外には伝わっていない。
「静粛に。次に、我らが賜わったものについてです」
その言葉に続いて『S』が先端に楕円が三つ交差した祭杖を、『R』は装飾された棒状のモノを出し、『R』が続ける。
「銘を『根源回帰ノ祭杖』と『魔撃槌』。この他にも『魔剣』などもありますが、それらはその幻影から賜わったモノ。すなわち──」
どこからともなく、ゴクリと固唾を飲む音が聞こえる。
「──『神器』であると、言えるでしょう」
その言葉に歓声は無く、ただただ無言でそれらを見るだけであった。
「そして、最後に。『信託』を受けました」
『S』の台詞に、一同が息を呑む。
「『強くなれ。そして守れるようになれ。自分も仲間も傷つかないように、傷つけないように。』と。そして、『神の声を信じすぎるな』とも」
それを聞き皆が悩み、静寂が訪れる中『A』が手を挙げた。
「なぁ、これって結局は『自分で考えて行動しろ』ってコトだろ?なら何も難しいコトはねぇし、変わることも無い。だろ?」
その言葉にハッとする。
「ええ、私もそう思うわ。そして最後に、恐らくですがしばらくの間会合は行えないものと思っていてください」
その言葉に皆が疑問に思う。
「──この前の襲撃事件に『神器』という新たなチカラ。これから、時代のうねりに呑まれていくでしょうから」
『S』はそう言って『祭杖』を片手に立ち上がり、両手を広げる。
「──だからこそ、我らは強くならなくてはならない。そして、一人でも多く、救いの手を。全ては我らが主の為に!」
「「「我らが主の為に!!」」」
「あ、あと新作については後で販売しますので後ほど私のところに」
「さすが『R』だぜ!」
「いよっ!待ってました!!」
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(恐らくは、彼女の言う通りでしょうね)
──気ほどまで会議が行われていた一室を背にして一人のメイドが歩いていた。
(【異世界人】に『勇者』、更にそこに『聖剣』と『神器』が加わった。それに向こう側から攻勢に出たということは向こうも準備ができているということでしょうし……何が起こるかわからない、と言ったところでしょうか。でも、確かに一つだけは言える──)
「──そこに主は、もうすでに関わり始めてしまっている。その中に存在せざるおえないのでしょう」
メイドは足を止めることなく、一人呟く。
──その右手には、メイド服のレイが書かれた紙を大事そうに抱えていた。
次はレイsaidに戻る予定です。




