勇者said:彼ら彼女らは、ようやくその地に辿り着く。
先週はこちらの更新ができずに申し訳ありませんでした。
ペース調整のために向こうを優先していたもので……
今回は勇者saidです。
迷宮の探索速度や『ステータス』に対して違和感を感じるかも知れませんが……まあ、それほど『チート』であるということです。
それでは、どうぞ
──様々な【魔法】が飛び、黒く、蝙蝠のような羽の生えた魔物──『悪魔』、その『上位種』へと襲いかかる。
「グラァアア!」
悪魔はそれを腕で払い除けると、それを放った存在へと距離を詰め、鋭い爪を振り下ろす。
「【金剛体】……【鉄壁】!」
その爪撃に割って入り、盾を上に掲げることで、轟音を響かせながらも防ぐ。
「──隆静!そのままホールド!」
「おう!」
その盾を踏み台にして飛び上がり、手に持ている棒状のものを回転させると、次第にその先端に岩石が現れ、大槌を形取る。
「はぁっ!」
「ゴァッ!?」
それでガラ空きとなっていた悪魔の顎をかち上げる。
「光輝!ラスト!」
──その背後から、木のようなものに押し上げられるように光り輝く剣を持った光輝が飛び出す。
「──【限界突破】!【光盾】…………【光煌一閃】!」
空中に作り出した光る円形を足場にし、それを踏み切ると悪魔を縦に切り裂いた。
……こうして、『勇者パーティー』は『試練の迷宮』、その百階層をクリアしたのであった。
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「ふぅ、これで百層クリアだね……」
誰もが踏破したことの無い、正しく未踏の階層を制覇し続け、区切りとも言える百層までクリアした一行だが、その表情は優れない。
それもそのハズ、
「ここ百層までクリアしたのに、レイ君のいたという痕跡さえ見つけられていませんからね」
……そう、桜が言うように未だにレイがいたという証明が成されていないのだ。
それすなわち、レイの生存しているという証明ができないことになり──
「──大丈夫、レイ君は生きてるよ」
「そうだよ。まだそう決めつけるのは早すぎる。まだ生きていないって言う証拠だって無いんだから」
沈みかけた空気の中、彩が言い、それに続いて明るく鈴が言う。
「そうだな。案外元気にしてるかもしれないしな」
「……まあ、レイだしね」
隆静と光輝もそれに続き、一行に笑みが浮かぶ。
「……そろそろいいか?」
「……あ、アドルフさん。いたんでしたね」
後ろの方からかかった声に、彩が答える。
「いや、確かに後方で見てるだけだったが……さすがにそれは酷いだろ」
「冗談ですよ。で、『ステータス』チェックですよね」
「ああ、わかっているならいい。とりあえずチェックして、『転移結晶』を使った後に宿に戻ってからでもできるだろう」
「……どうか、したんですか?」
言葉を早めながら言うアドルフに、疑問を持った鈴が問いかける。
「いや、何かがあった訳じゃあ無いんだが……何かが起こりそうな嫌な予感がしてな」
「……アドルフさんの『直感』が言ってるなら無視はできなさそうだね。とりあえず『ステータス』を確認してから次の階層に行こうか」
光輝が確認すると、肯定が帰ってくる。
「じゃあ──」
「「「『ステータス』」」」
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コウキ ヒジリカワ LV80 Age16 男
種族:人間
職業:勇者
称号:光の勇者
体力 82000
魔力量 82000
魔力 82000
筋力 82000
敏捷 82000
耐性 82000
魔耐性 82000
〈固有技能〉:獲得経験値量増加
〈技能〉:勇者Lv6【剣術Lv9 光属性魔法Lv8 闇耐性Lv6 鑑定Lv6 アイテムボックスLv8 限界突破】
火属性魔法Lv3 水属性魔法Lv2 魔力操作Lv7 身体強化Lv8
〈加護〉光神の加護
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サヤカ シラセ LV80 Age15
種族:人間
職業:治癒師
称号:
体力 50000
魔力量 120000
魔力 150000
筋力 48000
敏捷 48000
耐性 38000
魔耐性 92000
〈固有技能〉:回復魔法 付与魔法
〈技能〉:魔力操作Lv9 身体強化Lv3 火属性魔法Lv5 光属性魔法Lv7 水属性魔法Lv5
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リン キノ LV80 Age15
種族:人間
職業:槌操師
称号:
体力 50000
魔力量 43000
魔力 40000
筋力 90000
敏捷 64000
耐性 82000
魔耐性 38000
〈技能〉:槌術Lv9 身体強化Lv9 土属性魔法Lv6 魔力操作Lv6
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リュウセイ キムラ LV80 Age16
種族:人間
職業:守護騎士
称号:守護者
体力 150000
魔力量 63000
魔力 56000
筋力 60000
敏捷 58000
耐性 150000
魔耐性 156000
〈技能〉:守護Lv5【身体強化Lv8 鉄壁Lv8 金剛体Lv5】 剣術Lv7 魔力操作Lv5
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サクラ ミドリカワ LV75 Age23 女
種族:人間
職業:樹術師
称号:
体力 60000
魔力量 178000
魔力 150000
筋力 80000
敏捷 78000
耐性 58000
魔耐性 78000
〈固有技能〉:木属性魔法
〈技能〉:魔力操作Lv8 風属性魔法Lv8 土属性魔法Lv4 体術Lv6 棒術Lv5
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「……大分、強くなったよね」
「あの時に、個々までのチカラがあれば、レイに頼らずに済んだのにな……」
光輝の言葉に続くようにして、隆静が言う。
「『獲得経験値量増加』があったからこそ、この早さで強くなってるが……本来ならもっと時間をかけて成長するもんだ。だから、比較してしまうかもしれんが……過去はどうにもならない。なら、今は前を見ろ」
「そうだよ。とにかく今は前に進まないと──」
アドルフの言葉に彩が続こうとした時、だった。
何かが身体を突き抜ける。
何かが身体を吹き抜ける。
「……なに、今の」
桜が今の何とも言い表せない現象にそう呟く。
「?どうかしたのか?」
「……わからない。なにも、無かったのかもしれない」
「おい、光輝……?隆静もか……彩、鈴?お前ら、なんで泣いて……」
「え?は、ははは……なんで、でしょうか?」
「どうして……涙が……」
二人は指摘されてやっと自分が涙していることに気が付き、思い当たることが無く困惑する。
──それはちょうど、レイが悪魔を倒した時の事だった。
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「ここが、次の階層……」
【転移魔法陣】によって飛ばされた先、草原と、一部に森がある階層を見て光輝がそう呟く。
──アレから彼らは数十分すると、何も無かったかのように立ち直り、次の階層へと来ていた。
「……どういう事だ」
周りを見回したアドルフが呟く。
「どうかしましたか?」
「ああ、階層ごとにあるハズの『転移結晶』が見当たらなくてな……お前ら、ここから離れるな───っておい!言ったそばからどこに行くんだ!」
彩が、アドルフを無視して駆け出した。
それに続き、少し遅れて鈴も駆け出す。
「ったく!何だってんだ!コウキ!リュウセイ!サクラ!行くぞ!」
「はい!」
「おう!」
「……チッめんどくせぇな」
二人を追いかけ、走り出す。
しばらく走っていると、何を思ったのか二人は足を止める。
「おい、お前らいきなりどうし──」
「光輝。ここら辺を『鑑定』してみて」
アドルフの言葉を遮って彩が言った。
「……どうかしたの?」
「いいから、早く」
彩の気迫に押され、訳もわからずに『鑑定』する。
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隠蔽剣
そこにあるものを隠蔽する剣。
いくつかの剣を用いることによってその効果を持つ【結界】を張ることができる。
『起動句』【隠蔽】 【露顕】
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「なに、これ……?【ディスカバリー】?」
光輝がそう言った瞬間、目の前の光景がヴェールを解いたかのように変わる。
「何だ……これは……」
(これ程の高度な『隠蔽』をする【結界】だと!?王国一の【魔道具職人】だとしても作れないだろうし例え『迷宮の産物』であったとしてもこれ程の物はありえない!)
目の前の光景が異常である事をこの世界で生まれ育ってきたアドルフだからこそ、理解した。
「やっぱりだ。次はあの【結界】の中の『剣』を」
「……わかった。『鑑定』」
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結界剣
【物理障壁】【魔法障壁】及び【魔避領域】を展開する剣。
いくつかの剣を用いることによってその効果を持つ【結界】を張ることができる。
『起動句』【領域展開】 【領域閉界】
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「『【物理障壁】【魔法障壁】及び【魔避領域】を展開する剣』?なに、これ?」
「……そんな、ありえない!」
アドルフが、悲鳴じみた声を上げる。
「【物理障壁】と【魔法障壁】を同時展開する『魔道具』だと!?そんな、無茶苦茶だ。それに、街などに使われる魔物除けの【魔避領域】を、こんな小さな剣で?それこそありえない!」
「でも、ここにこうして在る。光輝、解除お願い」
「了解。【領域閉界】」
再度、目の前がヴェールを解いたかのように景色が変わる。
「これ、は──」
そこには、一軒の木製の『家』があった。
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「普通に家、だね」
家に入り、ある程度散策した光輝がそう言う。
「確認してきたが……ベッドは一つだけだったことからしても一人だけのようだな」
『迷宮の中に家がある』という、普通では考えられない異常事態に、アドルフは調査をすることに決め、罠などが無いか注意しながら家に入ったのだが、罠などどこにも無くただただ、彼らにとって見覚えのある間取りの家があるだけであった。
「これって、やっぱり……」
「ああ、やっぱり……」
そして、声を揃えて──
「「「レイの家だ!」」」
そう言った。
「ああ、確かにレイ君の家だ……ですね。家庭訪問で来たことがあります」
それに続いて桜も言う。
「ということは……レイはやっぱり、生きて──?」
「いや、本人がこの家に居ないことを踏まえるともしもの場合もあるが……とりあえずもう少し探索して見るか」
「いや、もし本当にレイの家ならば……確かここら辺に──」
そう言いながらソファーをずらして床板を外す。
「……あった。けど、まさか……」
「地下へ続く、階段か?」
そこには、石造りの階段があった。
「ここって、レイがものの収納に使ってたところだよね」
「ああ、ならここに何かがあるって可能性が高いだろ?」
そう言いながら階段を降りていく。
階段は長く無く、すぐに階下へ到着する。
そこには──
「どこかで見たことのある光景だね」
──台座に突き刺さる、柄が黒い剣があった。
次回とその次くらいも、もしかしたら勇者saidかもです。




