そして『 』へと至る
7月始めの投稿です。
今週来週と投稿ペースが落ちるかも知れません。
というか場面的に一話一話あたりの文字数が増えて投稿数が落ちているんですよね……
その上リアルの方が忙しくなりそうで……
まあ、週一は投稿していきたいとは思っています。
……あれ?文字数このままで週一ってあまり変わらないのでは……
そ、それではどうぞ!
今回で戦闘終わりです!
最初はイリス視点となっております。
物語などにおいては『ヒトの心を持つのならば人間だ』ということもあるけれど、そのものは生物学的に言えば『人間』では無い。
逆に生物学的には『人間』であっても『殺人鬼』などの言葉もあり、考え方や行いによって『人間』では無いという。
なら、ヒトの『本質』は果たしてココロなのかカラダなのか。
どちらだろうね。
──by『 』
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(ここ、は──?)
「──あれ?どうかしたの?」
思考を巡らせるわたしに、レイは声をかけた。
「──え?」
「……本当に大丈夫?ぼーっとして──ああ、お腹空いてるんだっけ?」
「うん」
「ちょっと待ってて、スグに準備するから。『アダマンタートル』の調理は外でいいかな?あ、家の中でゆっくりしてていいよ」
(そうだ、これは『記憶』。このやりとりにも覚えがあると思ったら……あの時だ。わたしが、レイに助けて貰って、『アダマンタートル』を調理する時の。これが、走馬灯なのかな)
外に出るレイを見送りながらそんなことを考える。
そう、これは『記憶』。
レイの言っていたことを引用するならその『記憶』に該当する『魔素配列』を『見て』いるだけに過ぎず、こちらからは干渉することが出来ず、また『記憶』から干渉されることも無いので、苦痛すら感じることは無い。
──だけれども『記録』である限り、自分が行った行為を同じように行うことができる。
わたしはこの家を探索することにした。
──今では慣れているこの家だが、今のこの『家』と当初の『家』はかなり違う。
今改めてこの家を見てみると異状過ぎるのが分かる。
まず、迷宮内に家があること自体がおかしいことではあるが……
ちなみに記憶のないわたしが何故常識を知っていたのかというと常識だけは残っていた……などと言うわけでわなく、【記録眼】に常識が残されていたからである。
話は戻り、この家の異状性だがまず、水場や火を起こすところが無い。
彼いわく迷宮の魔物を食べられるようにできるらしいが……【魔法】を使うにしても水はどうにかなるかもしれないが、【火種】で火を起こすのだとしてもものを焼くには火力が足りないし、他のものであればその物ごと炭にしかねない。
だから本来、野営の時でも【火種】で火種を作り、何かに着火させてから焼くのが普通である。
だが、ここにはそれが無い。
次に、ここには家具がない。
椅子や机はもちろんの事。ベットやクローゼットなども無い。
床で座ったり寝たりすることも出来るが、そこまで生活水準を引き上げる余裕が無かったのならばまだしも、彼の様子を見るにとてもそうとは思えない現状でそれは不可解である。
そして、食器も無い。
フォークやスプーンも無ければ箸もない。
箸はそこまで有名という訳でもないからまだしも、それどころか皿まで無いのだ。
さらに、この家には鏡が無い。
これに関しては特に不自然に感じる訳では無いが……記憶の無い今、自分の顔を確認しておきたいと思っただけだ。
──まあ結局【千里眼】の俯瞰視を応用して確認したのだが……
最後のことは置いておいたとしても、これだけ人が生活を送る上で必要なものが無いのは不自然過ぎる。
家具を必要としていなかっただけかもしれないが……
と、ここでセカイがブレる。
この時のわたしが移動したことによってそこに引きずられたのだ。
そこでわたしは料理を振る舞われ、美味しく食べていた。
この時のわたしにはなんというか……わかりずらいかもしれないが『恐怖出来ないということに恐怖していた』のだ。
明らかに自分よりも強く、また誰かもわからない人と一緒にいて警戒や恐怖を全く抱かないことは本来、ありえないはずなのだ。
ましてや心を開いたわけでもないのに……
この時、それについて言われ対等だと言われた時に心底安心した。
そして安心したわたしに、遂に限界が来たのか意識が薄れていく。。
その時に何かをレイは言っていた。
意識が朦朧としていて聞こえていても理解出来なかったけれど、こう思ったことだけは覚えている。
(彼を知って行こうと。その強さを持ちながらも、確固たる意志のようなものを感じない理由を。そして、これから先を見続けて行こうと……そしてそれからもわたしはことある事にもっと知りたくなった。もっと見ていたくなった)
──でも、これから先を見ていくことは出来なさそうだ。
──あの時彼は、何て言ったのだったか……
そう、たしか──
「……安心して。僕は君を、尊敬さえしている。君はもう十分抗った。だから、君に危害を加えるものを、君を束縛しようとするその【理不尽】でさえも無くしてあげるから」
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「イリ、ス?」
目の前の光景が信じられず呆然としつつも、現状を頭が理解し始める。
「イリス!どうして……僕を庇って?いや、それよりもどうして動けて──うや、そうじゃない。そうじゃなくて──」
どうしてか思考が空回りする。
戸惑っているのだろうか、焦っているのだろうか。
「いや、それよりも先に確認か……『無眼』」
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イリス LV130 Age 5015
種族:魔族
称号:【魔王】
体力 500/58000
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自身の『眼』が黒から銀へと変わったのが感覚的にわかる。
それと同時に意識や思考の無駄が消えココロの揺らぎが、動きが無くなる。
──だからこそ、今すべき事がわかる。どうすれば助けられるのかがわかる。
減り続けている『体力』を視界に入れながら、紡ぐ。
「『彼女が傷ついた事実など、無かったことになればいい』」
瞬間、ナニカが確実に変わった。
「──んぅ、……レイ?あれ?わたし、生きて……」
一滴の血にも穢されていないレイの姿を見ながら、イリスは自身の身体を確認する。
「傷が、ない?」
「良かった。ああ、ちょっと待ってね。──【禁樹】」
鉄の木の枝が集まってくる。
そこに手のひらを差し出すと枝の先に深紅の木の実が生まれ、落ちる。
その実の見た目は無花果の様だ。
「少し足りないか……『錬成』」
すると無花果の色が鮮やかな色になる。
「これでいい。ほら、これを食べて。さすがに『体力』にまで干渉するのは怖かったからね」
そう言ってイリスに一口サイズの無花果を渡す。
「これは──?【鑑定眼】」
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禁断の果実
生命力そのものがイチジクのカタチをとったもの。
一部の神にしか創ることは出来ずその一握りにしか許されていないものである。
それも創世を除いてはほぼ許されていない。
神域禁忌のひとつである。
別名を【生命の実】ともいう。
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「これ……食べて大丈夫?」
「大丈夫。というより早く食べないと存在ごと消えるよ?」
「──え?」
イリスが自身の姿を見ると、少し透け始めていることに気がつく。
「──っ!?」
「そこまで焦らなくても大丈夫だよ」
慌てて口の中に入れるイリスを見て、レイは苦笑する。
「まあ、これで大丈夫か」
そう言って立ち上がるレイを見てイリスも立とうとするが、思うように身体が動かず、上手く立ち上がれない。
「ああ、そこに居て、ゆっくり休んでていいよ」
「レイ、その、『眼』……」
そう言うレイの眼を見て、イリスが気づいた。
「ああ、もういいんだ」
そう言ってレイは悪魔へと向き直る。
悪魔は何かに困惑しているようでそれでいてコチラを警戒しているのか仕掛けてくる様子は、無い。
──どうしてイリスが傷ついたのか。
──その原因は僕にある。
(それに、気がついたから)
「待って、レイっ!?それは、使っちゃ──」
「もう、決めたんだ」
イリスの言葉を遮って言う。
「待って……おねがい……だから、それだけは──」
「それにもう、手遅れなんだ──」
「レイっ!?」
悪魔から禍々しい魔力の砲撃が放たれ、レイの左腕を吹き飛ばした。
「──とっくの昔から、ね」
イリスが息を呑むのが聞こえた。
様子見も兼ねて遠距離から威力のある【咆哮】を放った悪魔も困惑を隠せないでいる。
何故なら、吹き飛んだレイの腕から血が一滴も流れていないのだから。
本来人間に、というより一部を除き生物というものに流れている生命の証とも言える『血』。
それは時には『種族』を『繋がり』を『身分』を表したりもする『血』。
それが、流れていなかった。
「『無眼』、悪魔の『ステータス』を表示」
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暴君 LV200 Age 3678
種族:???悪魔〔魔物〕
称号:【創られた存在】 【理不尽】 【暴君】
体力 890000/900000
魔力量 450000/500000
魔力 400000
筋力 450000
敏捷 400000
耐性 500000
魔耐性 450000
〈固有技能〉:暴君【属性魔法無効、物理攻撃耐性、超速再生、思考支配】
〈技能〉:
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「『無眼』、僕の『ステータス』も表示」
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「」 LVー Age-
種族:
職業:練成師
称号:【超越者】【無純】【新生】【存在しない存在】
体力 300000/300000
魔力量 500000/500000
魔力 550000
筋力 400000
敏捷 400000
耐性 400000
魔耐性 400000
〈固有技能〉:完全記憶 魔素支配 錬成 無属性魔法 変換 演算 天翔爆地 無眼 料理 無刀剣舞 改竄
〈技能〉: 魅了Lv8 魔道具製作Lv10
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「……僕もそこそこに強くなったつもりだったんだけどな」
──その結果がこれだ。
──最初からチカラを使っていれば、こんなことにはならなかった。
そんなことを思いながら、レイは『眼』を閉じる。
そこには何も見えない。
「イリス。僕は君に会えて良かったよ」
「唐突に……なに?」
「感謝、かな?僕は君に支えられ続けて来たんだ。それに、勇気も貰えた──ああ、君には自覚が無いかもしれないけどね」
そう言い肩越しに振り返ったレイは一度閉じた眼をあけ──
「今までありがとう」
──そう言って、微笑んだ。
「君も薄々気がついてたんでしょ?僕の、『本質』」
そう、イリスはうっすらとではあるが勘づいていた。
レイの『本質』が何なのかを。
それに気付いたのは『深淵に座すもう一人の自分』と戦った時か。
いや、もしかしたら最初にレイの家に訪れた時にはすでに違和感として感じ取っていたのかもしれない。
でもそれは、本来有り得ないもので
だからこそ、認めたくなくて。
「なんで、そんな……これが、最後みたいに……」
「最後じゃ無いよ」
イリスが震える声で言うがレイはそれを否定した。
「そう、最後じゃ無い。強いて言えば、再開かな」
そう言って前を向き、再び目を瞑った。
(そう、ここで終わり何てことは無い)
「さぁ、やろうか。僕が、僕という【存在】が抗うことをやめる前から──【零】からまた、始めるために」
──だって、『 』の『 』は────だから……
レイが、瞼を開き、悪魔を見た。
瞬間、悪魔は恐怖した。
──目の前の存在に、恐怖できないと言うことに恐怖した。
悪魔はそれを理解できず、その恐怖をどうにかするために目の前の存在を消そうと【咆哮】を放った。
それは必死だったのも相まって、今までこの戦闘で見てきたものとは比べ物にならないほどの威力を秘めていた。
しかしながらそれは、その存在が軽く左腕を振るうとまるで何も無かったかのように消え失せた。
悪魔は焦り、爪に魔力を乗せて飛ばしたり、小規模の【咆哮】を連続して放ったりと様々な攻撃を試みるが、そのことごとくがその存在に届く前に音も無く消え失せた。
気がつけばいつの間にかその存在との距離は無くなり、目の前に居た。
──否、それは本当にそこに居たのだろうか?
それほどまでに希薄であり、さらに自分の恐怖心に説明が付かなくなった悪魔は目の前の存在を切り裂くために爪を振り上げた。
しかし、それが振り下ろされる前に悪魔の頬にその存在の白い手が触れた。
優しく、いたわるように。
慈愛がこもっているかのように。
──しかし、そこには何も感じることはできない。
あるのはただただ、何も無いという事実だけ。
悪魔はそれを理解させられた瞬間、もうそこには、居なかった。
──まるでもともと、そこに居なかったかのように。
戦闘が少しばかり物足りなく感じるかもしれませんが……レイが本気を出すとこんな感じです。
チートですね。




