数のチカラ
眠い……ああ、私に時間を……ガクッ
というわけで(どういうわけでしょう?)頑張って書かせていただきました。
ストーリーはもう考えてはあるんですけどね……書く時間が……
まあ、それはそれとしてとりあえずどうぞ
「はぁ、はぁ、はぁ……数が、減ってない……?」
戦闘が始まってからかなりの時間が経過しているが、未だに倒しきることができていない。
それどころか数が減っていないようにも見える。
「──ッ!【魔砲】!」
【重力の魔眼】で宙に浮いているイリスだが、飛行する魔物は襲いかかってくるのでそれを迎撃していく。
(わたしは【魔法眼】に魔力の貯蔵があるから『魔力』もどうにかなる、けど……このままだとレイが──)
そんなことを思いながらレイの方に視線を向ける。
「──よっ、ほっ、はっ、ほい!」
リズムを声に出しながら踊るように動いているレイの姿が視界に入った。
よく見ると攻撃を躱しながらも魔物一体につき一回ずつ触れて回っているようだ。
「──『花開け。今、開花の時。咲き誇れ、咲き乱れろ。此度汝らは開花せん』──【紅桜】」
次の瞬間、紅の花が咲き乱れた。。
その姿はまるでたくさんの花たちが一斉に咲いたかのようであったが、実際は多数の魔物が弾け飛んだのだ。
身体の、内部から。
「【分子運動加速魔法陣】を直接相手の身体に『付与』……相手の『魔耐性』が込めた魔力量を上回らず、体内に水分さえ含まれていれば『耐性』を無視して爆発……我ながら極悪極まりない【魔法】だねぇ──とと、忘れないうちに【分解】っと」
紅の花びらが地に落ちる前に無色の光となり、レイへと収束していく。。
「──『瘴気』は……ほっといても面倒くさいだけだから回収してっと……イリスー大丈夫ー?」
イリスよりもかなりの数を倒しているハズのレイは返り血一つ着いていない状態で手を振っている。
「うん。まだ、大丈夫」
(そうだ……聞くまでも、ない……よね。わたしは、彼と会ってから一度も、彼の血を見たことがない。さらに言えば返り血を浴びたところ、さえ)
そんなイリスのことなどいざ知らず、レイは楽しげに、無邪気ささえ感じさせながら歩いている。
「んー、アレも試しておこうかな?──『花は数多咲き乱れ、風に舞う。その花びらは銀の輝きを放っていたが、やがて紅に染まるのであろう』」
次の瞬間、何も無い所から銀色の蠢く何かが湧き出した。
「なに……あれ。菱形の、刃?」
イリスが【眼】で捕らえたそれは、一つ一つが菱形の刃であった。
それがいくつもいくつも集まり、まるで蛇がうねるかのようにレイの周りを移動している。
「──【千華繚乱、紅染ノ銀】。──今、染まりゆけってね」
その刃の群れとでも言えるものが一斉に目の前の『狂戦鬼』という魔物目掛けて飛びかかる。
それが通過するとそこには上半身が無くなった『狂戦鬼』の姿があった。
──刃の群れは一つの例外も無く、紅色に染まっていた。
そして次の獲物目掛けて襲いかかる。
「【分解】の『付与』無しでもそこそこいけるね。まあ、硬いのは流石に無理そうだけどね」
そう言っているうちにも何体もの魔物たちが刃の餌食になっていく。
「……そろそろ良いかな?次は──『その刃は我が元へと集う』」
その言葉に呼応して刃の群れはレイの周りに集まり、円を描くように取り囲む。
「『刃は空へと羽ばたく為の、白銀の翼を成さん』」
刃は次第にレイの背中に集まっていき、その一枚一枚が羽を成して『翼』を形取っていく。
その紅の翼が広げられると次第に元の銀色を取り戻していく。
「──【白銀刃翼】」
「レイっ!うしろ!」
そのレイ目掛けて背後から魔物が襲いかかってくるがそれに眼を向けることなくその『翼』を振るい、切り裂いた。
切り裂かれた魔物はそのまま【分解】され、光となって消えていく。
「我ながらいい切れ味だね。さて、お次は──【魔素加速粒子砲】」
左右の翼の目の前に【魔法陣】が展開され、そこから膨大な量の魔力が放出され、魔物を一掃していく。
「……うん、威力も良さげだね。イザとなれば二つ合わせて集中攻撃とか……ん?なら羽の枚数分くらいまで増やして集中させたら──まあ、今はいっか」
そう言い翼を少し動かすと、ほのかな銀色のひかりを纏い始める。
──そして、浮いた。
「いやぁ、翼っていいねぇ」
そう言ってもう一度翼を羽ばたかせると、一気に高度が上がる。
「──【銀羽時雨】」
レイが翼を羽ばたかせる。
すると、刃の羽が鋭く飛ぶ。
その羽は次々に魔物を貫いていくが、先程より密度が薄いせいか急所にでも当たらない限り倒せていない。
「──まあ、そうだよね。じゃあ【分解】」
レイがそう言うと同時に羽が強く銀に輝いたかと思うと、貫かれた魔物達が【分解】されていく。
「うーん、やっぱり大物相手には自分で斬りに行った方が楽かな」
そう言って両手に剣を出すと翼を一際強く羽ばたかせ、突っ込んでいった。
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「──ふぅ、疲れた」
「そりゃあアレだけ動いてればねぇ。とりあえず休憩したら?」
そう言いながらレイはお茶を飲む。。
茶色いそれは『魔茶葉茶』といい、『魔茶葉』と呼ばれる茶葉を使って作ったのが『魔茶葉茶』である。
「『魔茶葉茶』?ありがと」
「『魔眼』をずっと使うのも疲れるだろうし……座れば?」
そう言って片翼を広げてポンポンとたたく。
「……座ったら切れそう」
「ああ、大丈夫大丈夫。【軟化】とか【鈍】とかの【魔法陣】も『付与』してあるから切れないし羽みたいに柔らかいよ?」
イリスは恐る恐る手で触れ安全なのを確認するとゆっくり座る。
「ほんとだ……柔らかい」
「でしょ?あ、お菓子もいる?」
「うん、ほしい」
レイはその答えに笑みを浮かべながら宙に浮いている丸板に菓子を並べていく。
「グオオォォ……」
「ギャアアアア!」
そうやって二人が和やかに、そして穏やかな時間を過ごしている間にも魔物達の断末魔が響き渡る。
「それにしても、この翼、凄いね……」
「でしょ?自信作なんだ。羽にあたる刃ひとつひとつに【軽量化】【結合】【反重力】が『付与』してあって翼を動かさなくても羽同士が支えあって浮いていられるんだ」
そう言うレイは空中で翼を少し畳んでそれに座っている。
ちなみに【軽量化】は【光属性】、【結合】と【反重力】は【無属性】でレイが作ったものだ。
「……見たことない【魔法陣】は今さらとして……後は【風属性】の【噴出】?」
「あらら、まだ使って無いのにバレちゃった?」
「そういう『眼』だから。ていうか、何食べてるの?」
そう言ってレイが食べている紫色の物体について聞く。
「ああ、『瘴気』」
「だよね。やっぱり、『瘴気』……え、『瘴気』?なんで?」
「んー、解析中」
そもそも『瘴気』を食べても大丈夫なのかという問題なのだが……まあ、レイだから大丈夫なのであろう。
「……それはそれとして、アレはなに?」
そう言って次々に魔物を惨殺していく真っ赤に染まった刃の群れを指さす。
「ああ、あれ?【千華繚乱、紅染ノ銀】だけど……ああ、改造して【自動追尾・迎撃】も付けたんだった」
「そうだった、そうだった」と言うレイにイリスはため息を吐きながら魔茶葉茶を飲む。
「そうだ。はい、『経験値』。レベルの方はどう?」
「ん……あと1レベで、目標到達」
「そっか……ならそろそろ終わらせるかな?」
「終わらせるって……魔物、減ってないよ?」
菓子などを片付け、翼を広げるレイに不思議そうに聞く。
「ん?気づいてなかったの?──て、普通は『見えない』のか」
「『魔眼』、でも?」
「そうなんだよね。ちょっと待ってて──」
(その言い方だと『全魔眼』持ちのわたしで見えない何かが、レイには見えてるって、こと──?)
そう言って何やら考え始めたレイを見ながらイリスは思う。
「【魔法演算領域】『開始』、『名称【魔砲】の【魔法陣】における定義を編集。【分解】の【魔法陣】を挿入……成功。続いて他者への魔素的干渉についての定義を変更……成功。試算に移行……成功。『命名』【解砲】として【魔法陣】を登録しました』──とまあこんな感じで……あそこら辺かな?【解砲】!」
レイの目の前に銀色の【魔法陣】が現れたかと思うとそこから銀色のレーザーが放射される。
そのレーザーは魔物に当たると一瞬で【分解】し、その周りの地面ごと【分解】する。
──するとそこには輝く【魔法陣】があった。
「ほら、『鑑定眼』で見てみて?」
「ん、任せて……【召喚魔法陣】で普段は魔素で隠蔽してるらしいけど……【破壊】によって壊されたせいで見れるようになってるっぽい。【召喚】した対象が死亡するとそれと同じ『種族』の魔物を再度【召喚】、この際必要な魔力は空気や死体、もしくはその血から供給される。さらには全ての【魔法陣】は連動していて、魔力が足りなければ別の【魔法陣】から供給される上、もし破壊されても周りの【魔法陣】が【修復】するみたい」
『鑑定眼』で取得した情報をレイに伝えていく。
「──はい、正解」
「でも、どうするの?壊しても、修復されるよ?」
イリスの言うように【分解】が直撃して一度崩壊した【魔法陣】も既に修復が終わりかけている。
「──それなら再構築される前に全て壊してしまえばいい。というわけでイリス。一掃するから【魔砲】の準備を」
「でも、これじゃあ威力も範囲も、足りないよ?」
「大丈夫大丈夫」とレイは言ってその【魔法陣】に手を翳す。
すると【魔砲】の【魔法陣】の周りにさらに大小様々な【魔法陣】を展開していく。
「【多砲化】とか【増加】とか入れてあるから……とりあえず『演算』は任せて。僕と一緒に魔力を込めて」
そう言って二人は魔力をどんどん込めていく。
途中、止めようとしてくる魔物もいたが【千華繚乱】によって切り刻まれていた。
「いくよ!【多門魔砲】!」
瞬間、その【魔法陣】から数多の光線が放射される。
それはあるものは一直線に、あるものは曲がりながら飛んでいく中、さらにいくつもの光線に分かれていく。
その光線一本一本が対象を外すこと無く、次々に魔物を貫いていく。
「すごい……こんなの複雑過ぎて、わけがわからない。でも、このままだと──レイ?」
話しかけているのにも関わらず反応の無いことに疑問を持ち、レイの顔を見る。
「──ん?ゴメン、少しぼーっとして聞いてなかったや」
「いや、このままだとまた【召喚】される、って……それより、その『眼』──」
振り向いて笑みを浮かべたその眼は銀色をしていた。
「ああ、特に問題無いよ。さて、『瘴気』については理解もできたし……終わりにしようか」
そう言うと地に降り、手を着ける。
「……【侵蝕分解】」
瞬間、レイの足元の【魔法陣】が【分解】される。
それに続いて隣の【魔法陣】が。さらに隣の【魔法陣】が【分解】されていく。
壊れたと判断された【魔法陣】を修復、再構築するために魔力で接続したところを辿ってまたその【魔法陣】が【分解】されていく。
「……きれい」
【分解】された【魔法陣】が光り輝き宙に満ちている。
「こんなものかな」
零刀がそう呟いた瞬間、満ちていた光が徐々に収まる。
「ほんとに、全部の【魔法陣】を、壊しちゃった……?」
【鑑定眼】で確認したイリスが驚く。
「まあね。『瘴気』に含まれている要素に他者へ干渉するチカラがあったからね。それを確かめておきたかったんだ」
「……なんか、ごめんね?」
「ん?なにが?」
「……色々と、任せっぱなしで──」
「いいんだよ。僕はやりたいからやってるだけだしね。それよりレベルは?」
「ん、二つあがったみたい」
「それならよかった」と言いながらレイは現れた【転移魔法陣】に視線を向ける。
「一応心配だったんだけど……進むための【魔法陣】まで【分解】されなくてよかったねぇ」
「ちなみに死んでたら?」
「力推し以外どうしようもなかったかな?」
レイの答えに一瞬固まるイリスであった。
「それで、すぐ行くの?」
「いや、ちょっとここでご飯にしよう」
「?良いけど、いま?」
そう言って死体だらけの部屋を見渡す。
「うん、このあとかなりキツイだろうから食べれる時に食べておかないと……とりあえずここらにある魔物の死骸は【分解】しておくから……食べる?」
「ん、食べないけど、そっちは任せた。わたしは準備して待ってる」
そう言い各々が準備し始める。
──勿論、レイの手料理は最高の味で、拠点に戻ることなく作れるので文句なとなく、ただひらすらに食べていた?




