少女の瞳に見えたもの
今回はイリス視点で書いてみました。
個人の視点って難しいですね。
今回はネタがほとんど含まれていません。
それではどうぞ!
閉じた瞼を通して微かな光と熱を感じる。
──いつものように窓から日が差し、顔に当たっているからだろう。
そう当たりをつけた──とはいってももうわかっていることではあるが、ゆっくりと瞼を開く。
「うん、いつもの光景」
ひとりそう呟いて立ち上がり着替え始める。
──それが私、イリスにとっての『日常』の始まりである。
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「──おはよう。良く眠れたかな?」
階段を使い階下に降りると声をかけてきたのは同居人、と言うかこの家の本来の持ち主であるレイだ。
白髪黒眼で、髪を腰ほどまで伸ばしている見た目からはわかりづらいが、本人いわく「産まれた時は男」だそうだ。
「うん……朝食いつも、ありがとう」
「ううん、気にしないで。僕も好きでやっていることだから、さ」
そう言う彼はエプロン姿で、二人分の食事を作っている。
もちろん、私とレイの分である。
レイは食事をすることを忘れることが多々あるらしく、「これで忘れないで済む」とも言っていた。
「はい、どうぞ」
「ん」
──私は作らないのかって?
……うん、レイの料理が美味しいのがいけないと思います。
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「──【魔眼集束魔力砲】」
「ギャアアアア!」
少し食休みを挟めば、探索が開始される。
「──うん、集束度も魔力効率も上がってるね」
「……ん、レイのおかげ」
そう言って自分の胸元を指す。
そこには僅かに楕円をカタチ取り、ふた振りの剣が交差したペンダントがある。
このペンダントは私が『魔力性質』を上手く扱えないで悩んでいた時にレイが作ってくれたものだ。
ペンダントのデザインそのものに意味があるらしく、チカラを無理矢理抑えるのは反動が怖いとの事で、過剰なチカラを無くすらしい。
そのお陰でチカラの振れ幅が抑えられ、その分集束などのコントロールが効くようになったのだ
「【分解】、【割譲】」
──レベルアップしました。
レイがそう呟くと身体に何かが流れ込み、続いてレベルアップのアナウンスが流れる。
レイと出会ってから、かなりレベルが上がっている。
というのも、何故かレイは倒した魔物を食料分を除き全て【分解】して、『生体魔素』の中から経験値を丸々くれるのだ。
「何故くれるのか」と聞いたことはある。
その回答は「経験値が無くても強くはなれるし、イリスが強くなることが戦力の増強にも繋がるから」というものであったので、今は気にしないようにしている。
……とは言いつつも、気になるものは気になるので、【魔力眼】に含まれる【魔素視】で見てみる。
すると、宙に漂う『生体魔素』がレイに吸収されていくのが見れるだけで、その先は何も見えない。
ただ、それでわかったことと言えば、やはり【魔素眼】では見えないということだけ──
と、そんなことを考えていると、視界の端に黒い霧のような人型のなにかが映る。
(アレは──『深淵に座すもう一人の自分』!?)
相手を見て、その対象の姿と『ステータス』をコピーするのがドッペルゲンガーで、その特性から『もう一人の自分』と呼ばれることもある魔物で、上位種になると『技能』までコピーしてくることもある。
とはいえ、技術までコピーできる訳では無いので、どうにかはなる。
しかし、この『深淵に座すもう一人の自分』は『技能』だけでなく、技術までもをコピーし、記憶や思考までもコピーする上、その『本質』でさえも写し取ると云われる伝説の魔物でランクはSSS。
大昔に現れた時には国がひとつ滅んだという。
──それを【鑑定眼】と【記憶眼】で知り、急いでレイとソイツの間に割り込む。
──レイをコピーされたら勝ち目は無い。
そう思っての行動だったが、前を見ると既に深淵に座すもう一人の自分はレイの姿に変わっている。
(もう、ダメ──)
「──たぶん、大丈夫だよ」
諦めかけたが、レイの言葉に反射的に視線を上げる。
そこには変わらず、レイの姿をしたドッペルゲンガーの姿があり──
──唐突に、なんの予兆も無しに消えた。
「──え?」
見失ったのかと思い、慌てて片眼を【千里眼】にして俯瞰視し、片眼の【魔力眼】で探るが、何処にもいない。
「やっぱり、こうなるよね」
声の方を見れば、レイが銀色の瞳でドッペルゲンガーがいた所を見ている。
「……何か、したの?」
「いいや、何も」
──『全魔眼』の効果により、『固有技能』、『存在眼』を習得しました。
──『存在眼』は『固有技能』、『全魔眼』に包括されます。
「?新しい『魔眼』、習得した?」
レイに何かを言おうとしたが、突然の『技能』習得によってその驚きによって上書きされてしまった。
「うーん、もしかしたら『全魔眼』か成長したんじゃないかな?『固有技能』は成長するものもあるって聞いたこともあるし……見てみたら?」
「ん、そうする」
そう言って【鑑定眼】を使って確認する。
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全魔眼
全ての魔眼を習得することができる。
一度見た魔眼を自分の物として習得することができる。
魔物などの【眼】に関わる特性を『魔眼』として習得できるようになる。
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存在眼
様々な存在を見ることができる。
存在の特性を色として、存在の強さを光量として認識できる。
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「……うん、『全魔眼』が成長してる」
続けて成長した内容を説明しているとふと、考えてしまった。
──【存在眼】ならばレイの事を視る事ができるのではないか、と。
幸いな事に【鑑定眼】などとは違って他者に干渉するものではないため、魔素は体内でしか動かないため、バレる心配は、ない。
「よし、そろそろ進もうか」
そう言って私に背を向けた瞬間、【存在眼】を発動する。
すると次の瞬間、視界は無色の光に埋め尽くされていた。
「……どうかしたの?」
「なんでも、ない」
【存在眼】は見たい存在を限定したり意図的に外したりできるようだが、しばらく眼が離せなかった。
それは今まで見えなかったものが見えたことに対する驚きか、喜びか。
──それとも、今まで見えていなかったものが、必至に自分の存在を主張するように見えたからかもしれない。
【おまけ】
「『深淵に座すもう一人の自分』って長くない?」
「……そのせいでルビ振りを『深淵に座す』と『もう一人の自分』に分けて振ったらしい」
「名前変えればいいのに」
「『深淵に座すもう一人の自分』って、気に入ったらしい」




