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魔×王

皆様お久しぶりです。

あげられなかった理由としましては2、3回消えてしまいその度に書き直していました。

諸事情により長期間投稿できない場合は活動報告に上げますので……それ以外の時は頑張って書いていますのでご理解頂けると幸いです。


それではどうぞ

「『聖剣』が抜かれた、か」


「──どうされましたか?」


王座に座る、身長が二メートル程もある男がぼそりと呟くと、近くに控えていたメイドが問いかける。


「いや、何でもない。そうだな……そろそろ良いかもしれん」


「と、申しますと?」


「ああ、我々も動き出すとしよう。──南大陸の制圧に向けて、な」


男がそう言うと、メイドは膝を着いて


「全ては『魔王』陛下の御心のままに」


と言った。


------------------------------------------------------------




「──で、途中から『転移結晶』自体が無くて、上への階段すら無かったから下に下にってわけ」


イリスに現状を説明しながらレイは歩いているが、その会話中にも周りに浮いている剣が飛び、魔物を貫く。


「ん、わかったけど……これなに?」


宙に浮く剣を指さしながら問いかける。


「ああ、【自動射出オートインジェクション】、見るのは初めてだっけ……仕組みはカンタンで、『瘴気』を含む『生体魔素』を持つもの──つまり魔物だね、それを感知して自動で撃退できるんだよ。そして、今ならなんと!攻撃した後に自動で【転移】して帰ってくる!お買い得ですよお嬢さん!」


話し相手がいるのが嬉しいのか、いつも以上の満面の笑みでイリスに語りかける。


「……買えるの?」


「いや、ほんとに売ってる訳じゃあないんだけど……というか飛ばしてるのは【魔法】だからね?──っと、硬いのがいたね」


硬質的な音とともに剣が弾かれた方を見ると、背中にいくつも大きなトゲを生やした黒く大きな亀がいた。


「『アダマンタートル、全長3~5mまで大きくなり、その甲羅は硬いことで有名なアダマンタイトを彷彿とさせる程の硬さを誇り、大砲さえ耐え抜くことができる。皮膚の硬さも尋常ではなく、普通の刃物であればまず通らない。移動速度もそこそこに速く、基本的な攻撃手段は体当たりであるが、その威力は攻城鎚をも凌ぐ程である』ね」


『無眼』によって瞳の色を銀に変えたレイが表情を変える事なく言う。


「なら、【過剰ナル分解オーバーディスセンブリィ】で──ん?」


袖を引かれ、そちらを見るとイリスが一歩前に出る。


「私に、やらせて欲しい」


「大丈夫?」


「大丈夫、私に、やらせて。このまま、任せっきりはいや、だから──」


魔力がドクンと、まるで鼓動のように脈動する。


そして、ニタリとしか表現できないような笑みを浮かべて


「──殺してあげる!」


瞬間、金と紫の魔力が溢れ出る。


「──『無眼』、情報表示」



------------------------------

魔力


使用者:イリス


所有性質:『魔』『王』【魔王】


【備考】

あらゆる属性を持つ。

他者を害する『魔』という性質が所有者の眼に留まることにより『魔眼』を開眼する。

『魔』の名の通り惑わすという意味もある。

『王』の本質は自を、他を統べることにあり、支配することにあり、それを強化していくことにある。

『魔』と『王』が合わさることによって【魔王】の性質が現れる。

その本質は二つを掛け合わせた物になる。


------------------------------



「うわぁ、なんか凄いことになってるし……この感じだと、うん、紫色の魔力が『魔』で金色の魔力が『王』かな?んで、それが混ざりあった紫金とでも言えるような魔力が派生した【魔王】ってかんじかな」


それにしても、とレイは続ける。


「二つのチカラの掛け合わせ、ね。『王』の自他支配は言ってしまえば自他への干渉。それに『魔』の乱す惑わせると言った性質が掛け合わさり、自分に干渉するなら──」


「あははは!」


「──ああなるのかな?」


イリスの笑い声が聞こえ、続いてその眼前に【魔法陣】が浮かび上がる。


「──さらに統べる、支配するって感覚が、それによる優越感が心の均衡を乱し、その感情の昂りが自身を支配してるって感じかな」


【魔法陣】が縦に並ぶと放出されていた魔力が収束し、細い光線を放つ。


その光は寸分の狂いなくアダマンタートルの頭部を吹き飛ばす。


「あはははは……」


少しの間、笑い声が響いたかと思うと突然、笑い声が途切れその場に倒れ込む。


「──あれ?どしたの?」


「大丈夫!──大丈夫、だから」


歩み寄るレイをイリスが必死に留めて無理矢理身体を起こそうとするが、力が入らないのか途中で崩れる。


「いや、さすがにその状態じゃあ連れ歩くわけにも行かないし……」


「大丈夫、だから」


(はぁ、このままの調子で言ってもダメそうだね。仕方ない)


「……君がどう言う状態なのかを教えてくれないと僕も対処できない上に、放っておけば悪化する可能性もある。それに、今の戦えない状態の君をそのままにして戦闘になろうものなら君を守りながら戦わなくちゃ行けなくなる。つまり、僕の足でまといになってしまう訳だけれど……さて、どうする?」


無表情のまま言うレイに少し考え──


「……お腹が、空きました」


イリスはそう答えた。


「……お腹が、空いた──?ああ、空腹かぁ」


レイが周りを見回すと、アダマンタートルで視線が止まる。


「亀、かぁ。……焼きかな」


そう言ってアダマンタートルのところまで行くとガシリと掴むとイリスの傍まで引きずって運んだ。


「さて、帰るよ」


「帰るって……どこに?」


「ちょっと待ってね」と言うと【武器庫アームリィ】から一振りの剣を取り出して地面に突き立てる。


「『起動ウェイク』【帰還リターン】」


そして、二人|(+亀)は眩い光に包まれた。


------------------------------------------------------------


「さてさてさて!皆さんお久しぶりです!やって参りました!人気コーナー”レイ・クッキング”の時間です!」


人気コーナーであるのであれば久しぶりなのはおかしな気もするが……万度恒例突っ込む人がいないので──


「恒例、なの?」


「実際自分で言ってるだけでわかりません!」


──否、今は突っ込む相手がいるのだ。それが『魔王』であると言うところにも突っ込む人が欲しいところではあるが……


「気を取り直して、今回使用するのはこちら─、アダマンタートル!」


と言って黒く、大きな亀を指す。


「まずは首元に切れ目を入れまーす。──【分解一閃】。そして『錬成』で血を抜きます。次に醤油……はないけど近い味の分泌液を出す植物から取れた醤油モドキと砂糖、酒はそこら辺にあった果物を『錬成』して【発酵】させて作ったものを『錬成』で作った大きなボウルのようなものに入れて混ぜます。パイナップルはないので代わりに近い果物のようなものでで代用します。後は『錬成』で肉を柔らかくしておこうか」


そう言って『錬成』で肉を柔らかくしていく。


「『錬成』が万能すぎる件について、……そんな題のラノベが書けそうだね」


ちなみにではあるが、砂糖の他にも塩などがあり入手方法は……まあ、魔物を『錬成』したとだけ言っておこう。


「馴染んだら取り出して……中には入りたくはないので『転移剣』を投げつけ【転移】させて取り出します。後は亀の甲羅を外して消化器官を取り出して……他の内蔵は食べられるので放置っと、……少し臭みが強いかな。『錬成』で悪臭と瘴気を分離して……これでよし!後は肉の周りの『魔素』を【火属性】に『変換』してまあ、なんやかんややってオーブンと同じようにして焼きます。…………はい、完成!亀のオーブン焼き!どうぞ!」


「……ん、美味しい。というか、『瘴気』って取り除けたんだ……」


「普通の『錬成』がどうかは知らないけれどね」


見た目は少しグロテスクになっているが、味はなかなか美味しいらしい。


「さて、本題だけど……君は、僕に対して恐怖を覚えている……いや、恐怖を感じないということに対して恐怖を覚えているね?」


その一言に、イリスは動きを止める。


「やっぱり、か。まあ、とりあえず君に危害を加えることは無いよ。……とは言っても互いに知らないことだらけだからね。質問は答えられる範囲なら答えよう。君と僕は対等だからね」


「たい、とう……?」


「そう、対等」


「……うん」


イリスの表情が、心なしか緩んだ。


「そう言えば、あなたは食べないの?」


イリスはふと、自分一人しか食を進めていないことに気がついた。


「ああ、お腹が空いてるってことだからいっぱい食べると思っていたんだけれど……」


「さすがにこの量は、無理」


「そっか、じゃあお言葉に甘えて……うん、久しぶりのたべものだけれど美味しいねぇ」


(……久しぶり・・・・?)


イリスが一瞬違和感を覚えたが、それが明確な言葉になる前に霧散していく。


「とりあえず疲れてるだろうし、二階にベットがあるから、食べ終わったらそこで寝てね」


「ん、わかった」




──しばらくして食べ終わったイリスは疲れていたのか、そのまま眠りについてしまったイリスの寝顔を見て


「……安心して。僕は君を、尊敬さえしている。君はもう十分抗った。だから、君に危害を加えるものを、君を束縛しようとするその【理不尽】でさえも無くしてあげるから」


そう言って微笑んだレイの笑みは、まだ少しぎこちなさが残るものの、自然な笑みであった。


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