勇者side:聖剣
先週投稿できなく、先程書き終えたので投稿します。
時間が取れなかったのと展開を考えていたらいつの間にか一週間……早いものですね。
今回は勇者sideです。
それでは、どうぞ
「──【光の剣】!ハァ!」
光輝の光を纏った斬撃が、階層主である狂戦鬼を切り裂く。
──レベルアップしました。
──Lv.が30を超えたことにより『光神の加護』の効果により固有技能『限界突破』を習得しました。
というアナウンスを聞きながら光輝はボロボロになった剣を地面に突き立てその場に膝を着く。
「お疲れ様です。光輝君」
そう労いの言葉をかけるのはクラスの担任であった緑川 桜だ。
「お疲れ様です桜先生。【木属性魔法】での援護、助かりました」
「いえいえ、これくらいしかできませんからね。それにしても、やっとこれで30階層もクリアですか──」
「──もう、30階層なんですよ」
先程までの勝利の余韻など無かったかのような、真面目な声音でそう言った。
「──え?」
「もう、30階層まで来たんだ。だけど、レイにはまだ会えていないんだ……」
「あ……」
自分の失言に気が気づいてショックを受ける。
「──『我ら彼らの傷を、我らが神は嘆くであろう。ならば、我がその傷に癒しを与え、我が神に平穏を与えん』【万能回復】」
そんな中、詠唱が響き、全員を優しい光が包み込むと同時に、光輝たちの傷が治り、この空間に満ちていた悲壮感が払拭される。
「……彩」
「今は、そんな事で悲しんでいる場合じゃないでしょ?」
「そんな、事って──!」
「事実、そんな事だよ」
彩の言葉に激昴しかけた光輝を遮って鈴が言う。
「私たちだって寂しいし早く会いたい、心配してる。だけど、今は悲しんでいる暇はないよ。生きてるって信じてるなら、レイちゃんのところにいち早くたどり着けるように強くなればいい。ただ、それだけの事だよ」
鈴の言葉を聞いた光輝は俯くと
「なら……30階層くらいで苦戦している僕らじゃあ、もう──」
「──少しいいか」
光輝が致命的なことを言おうとしたところでアドルフが発言する。
「三月ばかりでここまで来れてるお前らはかなり凄いことではあるんだが……光輝、お前はそれでも、それ以上に強くなりたいんだよな」
「……はい」
「一応聞くが、今のレベルは?」
「先程の戦いで30を超えました」
それを聞くと少し考えて「もういいか」と呟くと
「お前ら、『聖剣』って知ってるか?」
そう口にした。
------------------------------------------------------------
聖剣──それは光神が創ったとされる光の剣。
何時に創られたのかは不明。さらに言えば何のために、どうして創られたのかさえ不明な剣である。
超一流の、それこそ『鑑定』の系統技能を固有まで修めた者でさえその本質を見抜くことが出来なかった。
唯一わかっていることと言えばその剣は『勇者』のみに抜くことができるとされているものだ。
「──それが、こんな所にあったんですね」
光輝達はあの後宿に帰り荷物をまとめ、翌日にはアルデールを立ちその日のうちに王宮へと戻ってきていた。
「まさか、謁見の間に地下に続く階段があるだなんて……」
「王宮ならば部外者は入れない上に謁見の間なら入ること自体に許可が必要だからな……保管するには持ってこいだろ?」
「でも……流石に王座の裏側に階段があるってさ……ゲームじゃないんだから」
階段を降りながら自慢げなアドルフに鈴が指摘する。
「?意外性を突くって意味でもなかなかな場所だとは思うんだが……もしかして、お前らのいた世界にはこういうのがあったのか?」
「あったと言えばありましたけど……」
勿論ゲームで、である。
「そう言えば『聖剣』なんて物があるなんて今まで聞かされたことがなかったんだが……」
「さすがに最初から武器の性能に頼りっきりになるのはどうかと思ったのでな」
「なるほど、技術を付けるためか」
しばらく降りていると急に開けたところに出た。
「ほら、着いたぞ」
そこは白を基調とした神殿のような装いの場所であった。
そしてその中央に一振りの、これまた白を基調に金の彩りが加えられた、まさに『聖剣』と言えるような剣がそこにあった。
「エクスカリバーかな?デュランダルかな?光ならクラウソラスかな?」
「元の世界じゃないんだし……どれも違うと思うよ」
鈴が並べる聖剣の名前を彩が否定する。
「ちなみにだが、『聖剣』は光の精霊が護っていて……適正の無いものを攻撃して来たことから『勇者』そのものにも試練か何かがあるんじゃないか──って光輝!?」
その話をする最中、光輝がまるで『聖剣』に吸い寄せられるかのように歩み寄る。
「光輝──ッ!クソ!」
隆盛が追いかけようとするが、目の前を光線が走り地を焼いた。
そして、光輝はそのまま『聖剣』の元にたどり着き、無造作に、まるでそうなることがわかっていたかのように『聖剣』を抜いた。
瞬間、光の奔流が起きる。
「これが、『聖剣』。僕の剣──」
ふと、横に視線を向けるとそこには金色の髪に金色の瞳の少女が立っていた。
「そうか、君がこの剣を護っていたんだね」
その少女──精霊は笑みを浮かべると光に溶けて『聖剣』へと流れ込んでいく。
そして『聖剣』に関する知識と、それに付随するかのように僅かばかりの不快感が光輝へと流れ込み──
光の奔流が収まる。
「光輝!大丈夫か!?」
アドルフが、声をかけると光輝は──
「何ともありません。それよりも早く行きましょう。──レイに会うために」
その浮かべた笑みにはもう、一切の陰りはなかった。
次回はレイsideに戻りますかね。多分。