階層主(フロアボス)・3-1
気がついたら総合評価が1000超えてました。
ありがたやありがたや。
これからも精進していく所存でごさいますのでこれからもよろしくお願いします。
それでは、どうぞ
「で、やっと階層主の部屋の前に来たわけなんだけど……」
不機嫌に不満そうな顔をしながら言う。
「敵がほとんどいないのは正直つまらないや」
──そう、零刀が死霊術師を倒した後、ほとんど戦闘が無かったのである。
と言うよりも不死者自体がほとんどいなかったのだ。
「遠い方にすらいなかったしなぁ。あー、あれかな?
労働が悪くてストライキでもしたのかな?団体交渉かな?」
なわけないだろう。と言うか魔物は雇われているわけでも働いているわけでもないのだから。
「まあ、おおかた死霊術師が辺りにいる不死者を片っ端から使役したせいでほぼ全部殺っちゃったとかだと思うけどね」
その推測はほとんど正解である。
「っと言うことは、やっぱり死霊術師って強かったんだねぇ。最後はだいぶ残念だったけど」
と言うかそこまで追い詰めたのは、と言うよりも虐めたのは零刀自身である。
ちなみに不死者が少ない理由のひとつは零刀が魔霊のみを目掛けて放った【射出】がこの階の魔霊全てを葬ったからでもある。
「……まあ、そこまで気にすることじゃあないよね!さて、いっちょ行きますか!」
そう言ってボス部屋の扉を開いて、なかに入った。
そこに剣を突き立て、仁王立ちしていたのは──
「──こ、これは!『上位鑑定』」
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なし Lv135 Age3521 男
種族:首無き不死の暗黒騎士[魔物]
称号:変異種
体力 98000/98000
魔力量 50000/50000
魔力 79000
筋力 99000
敏捷 75000
耐性 97000
魔耐性 70000
〈固有技能〉:心眼 闇属性魔法 自己再生【鎧】盾生成
〈技能〉:剣術Lv8 身体強化Lv5 魔纏Lv5 魔装Lv4 盾術Lv5 魔力操作Lv4 瞬動Lv8 高速思考Lv2
【備考】
大昔、『試練の迷宮』に挑んだ冒険者が迷宮によって魔物化されたもの。
普通の首無し騎士は首が弱点だが首がないのでコアを破壊する以外の弱点はない。
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──首無し騎士の『変異種』であった。
「──片手に首を持っていたりはしないのかぁ……」
そう、この首無し騎士は首を持っていないタイプだったのだ。
それが思ったより衝撃的だったらしい。
「……そうか、持っていないのか。首でボウリングとか見たかったなぁ」
それはたとえ持っていたとしてもすることは無かっただろう。
「まあ、いっか。──倒すことに変わりはないしね」
すぐに切り替える。
なぜなら──
「カッコイイから許す!!」
零刀が『天翔爆地』で距離を一気に詰める。
が、首無し騎士は既に地面から剣を抜き振りかぶっていた。
「スライディィィング!からのせいやぁ!って、硬ぁ!」
振られる黒い大剣を地を滑ることで躱し、首無し騎士を切りつけるが首無し騎士は構わず続けて大剣を振るう。
「っとぉ!」
それを『天翔爆地』で距離を取ることで躱す。
「やっぱ硬いなぁ。それに速いし。再生系の『技能』持ってるからしぶといだろうし……」
先ほど零刀が切りつけた部分を見ると、傷一つついていないのがわかる。
そこで零刀はふと気がついた。
「硬い、速い、しぶとい、黒い。ま、まさかっ!こいつゴk──」
「オオオオオ?!」
まるで「言わせねーよ」とでも言わんばかりに声を上げ『瞬動』で距離を詰めてきた。
「ちょっ!言わせてよ!」
と言いながらも迫り来る黒い大剣を余裕を持って受け流す。
「──『纏え』【分解】」
剣に【分解】を纏わせて切りつけようとするが、まるでそれを防御することの危険性を知っていたかのように避けられる。
「今の、前もって避けられた?ああ、『心眼』かな?あれなら先読みだってできるしね」
手を、上に上げる。
「なら、これならどうする
かな?──【武器庫】【展開】、【射出】!」
零刀の周りに剣が現れ、それが破裂音と共に飛ぶ。
それを首無し騎士は紫色の盾を作り出して防いだ。
「──ん?『上位鑑定』」
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吸魔の盾
固有技能『盾生成』と『闇属性魔法』【魔力吸収】を複合させ生み出された盾。
所有者以外の触れたものから『魔力』を吸収して自己再生、強化を行う。
この場合自分の魔力へと変換するため『魔力性質』の影響を受けない。
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「うわぉ!何ていうチート!」
そう言うが
(……まあ、何らかしらの制限はあるハズだよね。それを探るかな)
そう思い、もう一度【射出】で剣を放ち、同じく防がせる。
(──へえ、『魔装』を使ってさらにそれに『魔纏』を使うことで強化してるのかぁ。それにぶつかって威力の弱まったところで防御。【魔法】的要素があればそれを吸収するわけか。まあ、あの盾そのものがどれくらいの強度かにもよるだろうけどね)
浮いている剣の数が、一気に増える。。
「──なら、数で攻める!【掃射】!」
幾本ものてつのけんが、僅かに時間差をつけながら首無し騎士目掛けて飛んでいく。
飛ぶてつのけんが首無し騎士目掛けて飛び、当たると辺りに砂煙がたちこめる。
少しして砂煙が晴れるが
「やっぱりダメかぁー」
「……」
そこには傷一つない首無し騎士の姿があった。
「──てか、今更、本っ当に今更なんだけど……【射出】とか【掃射】自体が【魔法】じゃないし……それに何より僕の魔力自体が『性質』【無し】なんだからこの盾、普通の盾としてしか意味無いじゃん!」
そんなふうに騒いでいると、今度は首無し騎士の方から距離を詰めてきた。
──そこからは剣と剣の応酬だった。
首無し騎士は片手で大剣を振るっているのに対して零刀は二本のてつのけんを巧みに扱い斬撃を受け流していく。
しかし
「ん?『魔力』が吸われてる?」
そう、この首無し騎士は剣にも【魔力吸収】を掛けているのだ。
そのせいもあって打ち合う度に零刀の魔力が奪われいくのだ。
(んー吸われているのが微量とはいえこのまま魔力が切れると【身体強化】も使えなくなる。まあ、この調子だとまだまだかかりそうだけど。それでも現状を打開できるわけでもないし……はぁ、もういいかな)
首無し騎士が振った剣を受け流し、首無し騎士をに蹴りを入れると同時に『天翔爆地』で爆発を起こし大きく距離を作った。
「──『纏え』【分解】、【射出】」
再び飛ぶ剣を吸魔の盾で防ごうとするが──
「……?」
──音も無く、盾を突き抜けた。
「さすがにこの速度、このレベルの【分解】は吸収が間に合わないよね」
「オオオオ!?」
「──と言うかその声どこから出してるの?まあ、さ。最初は正々堂々戦うつもりではあったんだよ?死霊術師のあとは戦う相手もいなかったし、でもね──」
零刀の攻撃を警戒している首無し騎士に向けて花の咲いたような笑みを浮かべて言った。
「──めんどくさくなったんだよね」
「オオオォォォ!?」
首無し騎士は悲しげな声を上げた。
「──さて、そろそろ終幕としようか」
てつのけんが音もなく、大量に現れる。
「『付与』【過剰ナル分解】、【一斉射出】!!」
剣が銀色の輝きを放ちながら次々に飛ぶ。
それは、当たる度に過剰な分解を引き起こし、爆発的なエネルギーを生み出しながらまた【分解】していく──
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「んー、……ちょっとやりすぎたかなぁ」
剣の雨が止むと、そこに首無し騎士の姿は無く、そこの地面だけが消滅したかのように穴が空いているだけだった。
「ま、まあ?倒せたんだし……結果オーライだよね!」
そんなこんなでこの階層主戦も終わっていったのであった。




