閑話:儚き初恋
閑話です。
大丈夫だ。これはBLではない。タダの勘違いだ。
気に入らない人もいるかもしれませんが、これは書かなくてはならないものなのでご了承ください。
「そういえば、お前の初恋ってレイなんだっけ?」
「ブッ!ゲホッ!ゴホッ!い、いきなりなにを言い出すんだ!」
パーティーのこれからについての話し合いが終わった途端、いきなりそんなことを言い始めたのは『守護騎士』である隆静だった。
「……ホントになんで今なの?と言うかそれ、ホント?」
いつも軽い調子の鈴も、先程まで真面目な話をしていたせいか、今回ばかりは真面目な様子である。
──どちらかというと、今の方が真面目、というか真剣な顔になっている気もするが……
「い、いやぁ、前にな?光輝がそんなことを言ってたのを思い出してな?気分転換にでもなればいいなぁ、と」
先程まで大切な話し合いをしていたが故に、場を和ませようとしたのだろうが、鈴の真剣な声音に思わずたじろぐ。
「へー、何かあったの?」
「うん、あれは──」
彩が聞くと、思い出に浸るかのように語り出した。
------------------------------------------------------------
それは、桜舞い散る4月、高校の入学式の日のことだった。
「やっと高校生活が始まるんだね」
「そうだな」
新しい制服に身を包んだ光輝と隆静は中学も同じで、家も近かったため、この日も一緒に登校していた。
「俺たちにも彼女とかできるのか…」
「どうだろうね。すくなくとも僕は初恋すらまだだからね」
「いや、お前かなり人気もあったし実際告られたりもしてただろ?」
「全部丁重にお断りしたよ。好きでもないのに付き合うなんて相手に失礼でしょ?」
そんなことを言う光輝を少し睨みつけながら
「高校生になって初っ端初恋とかやめてくれよ?」
そう言った。
その時だった。
「遅刻遅刻〜!」
パンを咥えた少女?が曲がり角から飛び出してきた。
「はっ?」
「えっ?」
そしてそのままぶつかる──
「っとと、わん、つー、すりーってね!」
──寸前でステップを踏み、躱した。
「ごめんねー!急いでるんだ!」
そしてそのまま走り去っていった。
「何だったんだ、今の……っていうか普通ぶつかるところだろ……なぁ、光輝──光輝?」
「──っえ?ごめん、なんだっけ?」
ふと我に返る。
「おいおい、大丈夫か?一目惚れでもしたか?」
「え?いや、それよりもさ。さっきの子、同じ高校の制服だったよね?」
「ああ、そういえばそうだったな。それがどうかしたのか?」
聞き返すと、光輝が言った。
「学校ってさ、さっきの子が向かった方と逆方向だよね?」
------------------------------------------------------------
「すみません!遅れました!!」
その日、朝の子が来たのは入学式が終わり、クラスも発表され、自己紹介が終わりに差し掛かった頃だった。
「では、そのまま自己紹介をお願いします」
「はい!神野 零刀です!趣味は読者です。今は女子用の制服を着ていますが、性別は男です。なんか発注ミス?か何かで女子用のが来てしまって……明日男子用が届くらしいので、今日はこれで行きます!よろしくお願いします!」
次の日、光輝は学校を休んだ。
------------------------------------------------------------
「──ってことがあって…」
「あー、あれは私もビックリしたなぁ」
彩がそう言い、それに皆がうなずく。
「んで、次の日に休んだ理由を聞いたら一目惚れして、男だって知って、ショックを受けて体調を崩したって」
「初恋が儚すぎる……」
これには苦笑するしかない。
「ああ、なんでレイくんが男なんだろう……もういっそのことレイくんが女の子だったらいいのに」
「ふむ、レイちゃんが女の子…それもアリか」
「ちょっ!鈴!」
光輝が言った言葉に鈴が何やら不穏なことを言い、それを彩がたしなめる。
彼らは零刀がもう既に、男という枠にいないことをまだ、知らない。




