階層主(フロアボス)2―2
不定期中です。
やっと50部とはいえ、あまり話が進んでいませんね……
新ワザ、ちょっとベタかな?でも、やらせたかったんですよね。
後悔はしていない!
それでは、どうぞ
「──新ワザといきますか!」
そういって、詠唱に開始する。
「『我が望むは──』って、あぶなぁ!」
のだが、炎竜が零刀の詠唱を遮るカタチで【炎球】を放った。
「危ないなぁ!詠唱くらい待ってよ!お約束でしょ!」
無茶を言うな、というか黙って変身やら何やらを待つのを現実で求めることがそもそも間違っている。
という理由で
「─新ワザやるって言ったハズなんだけど……詠唱できる余裕が無い」
炎竜は何か本能的に危険を察知したのか、連続で【炎球】を放ち、詠唱するヒマを与えない。
「──はぁ、ホントは詠唱してカッコよく決めたかったのにな……仕方ないかな。ホントはコレ、あまり好きじゃあ無いんだけど…」
炎竜を見る零刀から表情が消え、瞳から光さえ無くなる。
「『思考の負担を軽減するための『魔素支配』における自己制限を『演算処理』の補助を起動により【解除】』、【魔素感知】、【制限解放】」
瞬間、このボス部屋における『魔素』が存在する全てのものの位置が、形状が、全てが情報として零刀に流れ込む。
「グラアアアア!」
炎竜が【火球】を多数作り出し、打ち出すが零刀は見もせずに躱していく。
【魔素感知】で把握しているためだ。
「──『【魔素感知】より空間を把握。自己空間、【武器庫】との座標照合開始。……………完了』」
『天翔爆地』を使って大きく距離を取る。
その零刀の顔には表情が戻っている。
「──【武器庫】、【展開】!」
右手を横に振り言う。
──瞬間、零刀の周りに剣が浮いていた。
その数、十本。
「正確には浮いているって言うよりも『魔素支配』で宙に固定しているって言うのが正しいんだけどね」
手に持っていた剣を宙に投げ、固定する。
「……はあ、せっかくカッコイイ詠唱を考えたのになぁ。まあ、いっか。とりあえず──」
再度剣を振り上げると、切っ先が炎竜に向く位置まで勢い良く振り下ろす。
「──【射出】」
パァン、と乾いた破裂音が鳴り響き、炎竜目掛けて剣が飛んだ。
硬い鱗に辺りガキン!と音を立てて弾かれる。
「ふむ、やっぱり普通に打ち出すだけじゃあダメかぁ」
が、特に気にしている様子はない。
(『天翔爆地』みたいに爆発を推進力にして飛ばして、さらに『魔素支配』で剣そのものを加速させてる訳なんだけど……やっぱり硬い相手だと素の状態じゃあダメだね。じゃあ次は──)
「【射出】、『付与』【分解】」
乾いた破裂音が鳴り、再び剣が飛ぶ。
炎竜の鱗にぶつかると、今度は弾かれずに鱗を大きく傷つけた。
「グラアアアア!?」
これには炎竜も驚いたようで、上下左右の回避という選択肢を増やすために宙に飛び立つ。
「──まあ、それなら数を増やすだけなんだけどね。【射出】」
時間差を付け、三本【射出】される。
それを炎竜は急降下することで回避する。
「だめだよ──」
零刀の声が途切れ、
「──ちゃんと、避けきらないと」
炎竜の頭上から聞こえた。
「よっ、ほっ、はっ!」
零刀は先ほど飛ばした剣を二本掴むと、遅れて飛んできた剣を一方の剣を使い受け流すことで方向を変え、もう一方の剣で打ち、飛ばす。
ちなみに「よっ、」でキャッチして「ほっ、」で受け流し、「はっ!」で打ち飛ばしている。
そして、逆さまになると『天翔爆地』で加速して飛ばした剣を追う。
「グルラァァアアア!」
「っ!マズっ!」
しかし、炎竜は『炎支配』で炎を【発生】させ、一気に燃焼させることで燃やし尽くさんとする。
「──あっぶないなぁ、もう。とっさに【転移】してなかったら今ごろ燃え尽きてるとこだったよ」
零刀は宙に浮いている剣に座りながら言った。
「飛ばした剣は躱されちゃったか……いやー、それにしても、めんどくさかったけど【短距離転移】の【魔法陣】を組み込んでおいて良かった、良かった」
そう、今使っている剣は全てに【転移魔法陣】が組み込まれているのだ。
「さて、と──」
固定されていた剣から降りると、今度は固定されていた剣ごと消える。
はたして、次に現れたのは炎竜の真下、先ほど躱された剣が刺さっているところだった。
「──『付与』【分解】、【一斉射出】」
零刀の周囲にある、残り七本の剣がすべて炎竜に向かって飛ぶ。
しかし、【一斉射出】したせいか狙いが定まっておらず、自分に当たるもののみを『炎支配』による【発生】、【過剰燃焼】で、撃ち落とし、零刀目掛けて急降下する。
零刀の姿が、消える。
そして現れたのは、炎竜をわずかに逸れていた剣の位置で剣を掴み取る。
が、炎竜もわかっていたのか爆炎を発生させ、焼き尽くそうとする。
「まあ、学習くらいはするよね。──【促進】」
零刀は手にある剣に『魔力』を込め、【分解】を【促進】させて切り払う。
【分解】を【促進】させたせいで剣ごと【分解】されてしまうが零刀は再び【転移】で姿を消す。
──次に現れたのは【一斉射出】で飛ばした二本目の剣。
素早く剣を掴み、【分解】を【促進】させると炎竜が炎を発生させる前に切りつける。
そして、また剣ごと【分解】されると【転移】して切りつける。
姿が消え、現れる度に炎竜に傷が増え続ける。
とはいえ、炎竜も黙ってやられる訳ではない。
「ガアアアアアアア!!」
「うわ!」
突然、炎竜の身体を炎が覆った。
零刀は【転移】ですぐさま回避する。
「びっくりしたぁ。なに、いきなりのバーニングって。アレなの?『魂を燃やせぇぇえ!』的な?」
余裕があるのか、馬鹿にしてるのか、はたまたタダの馬鹿なのか、そんなことを言う。
「【再装填】っと。炎を纏えば近づかれないって考えかな?でもさ──」
零刀の周りに再び剣が現れる。
「──それごと【分解】すれば関係ないよね。『付与』【過剰ナル分解】、【射出】」
剣が一本、銀色の輝きを放ちながら飛ぶ。
炎竜も本能的に危険を感じたのか全力で旋回するように飛んで躱す。
それは正解だったと言うしか無いだろう。
剣が後ろにあった壁に当たると一瞬だけ銀の煌めきを放ち、弾けて周りにあった壁を消し飛ばした。
それは言うまでもなく【過剰ナル分解】のせいなのだが前回の階層主と戦ったときに使ったものは自分にも被害が及ばないようにしていたのだが、それを気にしなくていい今は急速に全力で【分解】することができ、その勢いで周りごと【分解】できているのだ。
「まだまだ行くよ!【自動再装填】、【射出】!」
次々に【過剰ナル分解】が『付与』された剣が飛び、炎竜は大きく飛び続けることで躱していく。
飛ぶのを止めた途端、即墜落のシューティングゲームのようである。
しかし、それも長くは続かない。
炎竜の進行方向に零刀がいた。
「──まあ、空間座標は固定してあるし、正直な話あそこにいる必要はないんだよね」
そう言って【射出】を止めて、自分の場所に剣を【転移】させる。
「グラアアアア!!」
炎竜は『炎支配』も使って溜めを短縮した吐息を吐くが──
「あ、そうそう。言いたいことがあったんだ。君がもし、【炎】を『支配』できるならば──」
吐息の炎が乱れ、零刀の前で散る。
「──僕は『魔素』の含まれる全ての【物質】を『支配』するってね」
炎竜が慌てて距離を取ろうとするが
「『彼の者の空域を侵し、乱せ』【乱気流】」
空気の流れが乱れ、バランスを崩して上手く飛べなくなる。
「まあ、僕は【属性魔法】が使えないからそれこそ『魔力』を【風属性】に『変換』させて『支配』してるだけなんだけどね」
そう言うと近くにある剣を取り、『天翔爆地』で一気に距離を詰める。
「『付与』【過剰ナル分解】!はぁ!」
零刀が、炎竜を切りつける。
炎竜に傷を負わせるが致命傷には到らず、剣ごと【分解】される。
だからこそ、零刀は二本目の剣を取り、同じように切りつける。
「はぁぁぁぁああああああああああ!!!」
それを、何回も何回も繰り返す。
剣が無くなっても次から次へと【再装填】されて行き、切れることは無い。
「グ、ガアアアアアアアアアアアア!!」
炎竜が炎を纏うが、それごと【分解】しながら切り続ける。
「はぁあ!」
何回切りつけ、何回剣が【分解】されたのかも分からなくなり始めた時に、零刀は切りつけ、炎竜をそのまま壁に吹き飛ばして叩きつける。
炎竜は既にボロボロで、生きているのが不思議なくらいだが、それでもまだ、生きていた。
(今ので剣はラスト。それでも炎竜はまだ息をしている。このまま放っておけば『自己再生』で回復されるかな。なら──)
手を横に伸ばすと、空気中の『魔素』がものすごい勢いで集中していく。
そこに集う『魔素』は、この戦いで大量に【分解】されてきた剣の成れの果て。
即ち、【鉄】。
「僕だって『生産職』なんだ。それに、言ったよね。僕は『魔素』を、【物質を】『支配』するって」
それは姿を現した。
細い剣身に先の尖った剣。
切り裂くことよりも刺し貫くことを目的とした剣。
「『錬成』、【刺突杭剣】」
それは巨大な刺突剣だった。
「なかなか楽しかったよ。それに敬意を表して、止めを刺すよ」
大きく引き絞り、『天翔爆地』で勢いを乗せる。
「──おつかれさま」
そう言って炎竜に刺突杭剣を突き刺した。




