激突
どうも皆さまこんばんは。前回の投稿から少し空いてしまいましたね。
というのも、これからの展開を大幅に変更したことにより、プロットを再構築しなおすのに時間がかかてしまいました。
三月からはもう少し投稿ペースを上げていきますので、今後ともよろしくお願いします。
「【邪神】に、囚われた【光神】。裏から支配されかけていた世界……情報量が多すぎて頭が重いな」
「全くだ」
全く知らない新情報、それも重大すぎる案件に頭を抱える代表者達。
「ひとつ言えることは、この世界は危機に瀕している。そしてそれを水際で止めてくれたのがあの【精霊帝】ってことだけね。他のことは出来るだけ早く、各々が受け入れるしかないでしょう」
その中でも、非常識な話があることを予想していた【冒険者ギルド】の長がそう締めくくる。
「まあ、そういうこった。とりあえず各々国に持ち帰って議論ってことでいいんじゃないか? もちろん、何かあれば連絡が取れるようにホットラインは繋げておけよ?」
「【皇帝】の言う通りじゃろう。決断を下すには事が大きすぎる。こんな所で神を相手取る決断なぞできようものか」
重々しく告げるそれは、選択が国だけでなく世界に及ぶ。
故に誰もが頭を抱えているのだ。
「これは世界を救うか滅ぼすか、行く末を決める選択になるだろう」
こうして【代表者会議】は各々が大きな課題を抱えて終わることになるのであった。
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「──レイ!」
歩き去って行ったレイを追いかけ、光輝はその名を呼ぶ。
「レイ君、でいいんだよね……?」
「──やあ、やっと会えたね」
風にその白銀の髪を靡かせ、レイは振り向く。
「キミは……」
「うんうん、いろいろと積もる話もあるだろうし、そうだね。どこかで集まってお話でもしようか。昔みたいに、さ」
そう言って笑う。
しかしてその笑みはどこか消えそうに見えて、儚く見えて──
「……レイ、君?」
「どうかした? ああ、場所は……まだオープンしてないけど、僕の店でどうかな」
「え、買ったの?」
「土地をね。建築はこれからで、カフェになる予定なんだ」
場所を教え彼と別れ、その空き地に歩みを進めた。
「さて──『練成』」
地面が歪み、建物を象っていく。
しかし、それはただの『練成』とは異なり、コマ送りのように過程が飛び飛びのまま完成していく。
まるで一部の過程が、無かったかのように。
「……やはり思ったよりも早い。まあ、これなら間に合うかな。ある程度進んでいた方が都合が良い」
そう言って完成したカフェを見上げ、ふと思う。
「そうだ、店名は『ガフ』なんてどうだろう」
その名はとある神の館が一室、魂の休息所より付けた名前。
「せめてこの場所では、全ての魂に平穏が訪れますように、ってね」
それは願い。
何人たりとも穢すことは許されない清廉な思い。
「さて──ようこそお客様方。当店では遍くに魂の安らぎを願っています。どうぞごゆるりとおくつろぎくださいな」
来店した『勇者』達に、心の底から告げる──
「──って言うわけで、僕は今【精霊帝】をやっているって訳なんだ」
迷宮に落ちてからの粗方を説明し終える。
「色々と訊きたいことはあるけど、とりあえずお帰り、レイ君」
「──うん、ただいま」
まずは何よりも、お帰りという言葉を伝えた光輝にレイは笑みを持ってただいまと返した。
「とにかく、生きていてよかったよかった」
「アドルフさんも元気そうでよかった」
「それで、レイはこれからどうするんだ?」
何気なく、隆静が尋ねる。
「うん、とりあえず──この世界を終わらせようと思ってる」
そして何気なく返された言葉は、終焉を望む意思。
「……」
「お、おいおい。なんの冗談だ? レイ、俺はこの後、どうするかを訊いたんだぞ?」
「もう一度言おうか? 僕はこの世界を終わらせる」
「だから、ふざけるのも大概に──!」
「レイ君、君は【邪神】側、ということかい?」
感情を顕にする隆静の言葉を遮り、光輝が問いかける。
「いいや、違う。他の誰からの意思でもなく、僕自身の意思だ」
「──そうか。なら僕は僕の正義を成すだけだ」
光輝が立ち上がり、剣に手をかける。
「待て、何が一体……説明してくれよ! レイ、光輝!」
「隆静、レイはもう人間じゃあないんだ。人間の敵に回ったってことだよ」
「別に僕は人間の敵って訳じゃないんだよ? まあ、捉えようによってはこの世界の理そのものの敵ってことだけど、ね」
互いに冗談の色はなく、真剣さを感じさせる。
「前もってこの話はしておこうか。僕は君たちの知っている『レイ』という存在ですらない」
「な、に?」
「僕の本名、覚えてる?」
「レイはレイだろ! 何を──」
「違うでしょ? かつての僕は君たちと同じクラス? に所属していたはずだ。生まれも同じ国。なら、君たちと同じような苗字、名前があったはずだ。誰も覚えてないよね」
返答はなく、沈黙だけが支配する。
「他者の記憶や意識まで影響が及んでいる、か。『世界の記録』でも『レイ』以前が辿れなかったし、ともすれば世界そのものにまでチカラが及んでいる、か」
「そのチカラで君は、何を成す」
「何度も言わせるな、世界を終わらせる」
レイも席から立ち上がり──両手を広げる。
纏うオーラは人から隔絶した何か、どこか外側からのものに感じた。
「レイ──!」
「場所を変えよう。『此処に無く、彼の地にあり』」
パンッ、と手を叩く。
瞬間、景色が変わる。
洒落たカフェの内装から、何も無い荒野に。
「これは……」
「ここならどの国からも遠いし、誰かに迷惑をかけることは無い」
手に剣を出現させる。
背後にレイの【眷属】たる『無属性精霊』達が現れる。
「剣を抜け、『勇者』。お前の『正義』を見せてみろ」
「世界は僕が守る。この世界は壊させない!」
『聖剣』と『魔剣』を引き抜く。
「『シスターズ』、アドルフの相手を。【王位精霊】、それぞれを相手して貰うよ」
「「「御意に」」」
「じゃあ、手筈通りに。『勇者』は僕がやる」
「……邪魔者は居なくなったってことかい?」
「おや、自分の仲間を邪魔者扱いだなんて。『勇者』くんは他者を下に見ているのかな?」
「違う! 僕は──」
「君の意見なんて関係ないんだよ。絶対的なチカラの前に、意志を通すためには相応のチカラが必要だ」
互いに剣を向ける。
「見せてみなよ。君のチカラが足りるかどうか」
「全身全霊をもって、君を打倒する!」
友である【勇者】と【精霊帝】。
互いの思いを通すために、衝突する──!
この突然の出来事にもちゃんと理由はあります。
いつか出てくるのでそれまでご自由に想像くださいな