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どうも皆さまこんばんは。
落龍改め、私『ナリア』と申します。
久しぶりの投稿です。
『我が道』の方がそこそこ進んだのと、一つのことだけやってるとテキトーになってしまいそうなのでぼちぼち更新再開させていただきます。
一応前回で終わりのルートもあったことはナイショです。
それではどうぞ。
と言いながら今週『我が道』の方も投稿予定です。
ツイッターで予定を上げるのでよかったらどうぞ。
https://twitter.com/nyafta
「──【斬光】!」
光を伴う剣が突き出される。
気がついた時には既に光は視界を覆い尽くし──
「ッ!」
身体を無理矢理に捻り、紙一重に躱す。
「っ、はぁ!」
返す刃には手を添え、魔力を爆発させることで防ぎ、その威力を利用して距離をとる。
(いま、のは──)
我が身に起こった事が如く、再生された光景。
それに対する動揺は大きく、すぐに理解することができずにいた。
(『条件』、『情報のインストール』……何かがカギになった? 直前にあったこと……名前、『聖川光輝』? だとしても自分の視点の『情報』をどこからインストールしてきた
?)
自問自答を繰り返し『知識』などの『技能』を総動員して高速で思考を巡らせる。
(カギと黒い奴が言ってた言葉……まさか──)
至った結論は一見、荒唐無稽に思えるもの。
されど無視することなどできないようなもの。
「【精霊帝】、お前は許さない……!!」
光輝から光が溢れ出る。
質量すらともなった魔力が風となり、【精霊帝】の白銀の髪を揺らす。
「『聖光覚醒』……!」
「ようやく覚醒したところで悪いけど、遊びはここまでにしよう」
「『遊び』、だって……? 人が死ぬことがか!?──ふざけるな!」
憤る光輝だが、【精霊帝】は呆気なく答える。
「憤る必要なんて無いんだよ。──そもそも、誰も死んで無いから」
「うぅ……」
【精霊帝】の言葉の直後、隆静が呻き声を上げた。
「隆静!」
「ここは……そうだ、俺は【精霊帝】に──っ!? 戦いはどうなった!?」
意識を取り戻した隆静が【精霊帝】を視界に入れ、慌てて構える。
「構える必要はないよ──って言ってもそうはいかないかな?」
うーん、とすこし首を傾げてから何かを思いついたのかポン、と手を打つ。
「よいしょっ!」
「ッ!? なんだ、これは……」
「戦意が消える…ちからが、抜ける……?」
戦意は消え、あまりの脱力感に倒れ込む。
気軽な声とは裏腹に、行われた行為は人間には耐えがたい行いであった。
「ちょっと加減を間違えたかな? まあ、いっか──っと、この反応はあの人と……へえ? 面白いことになってるね」
「──お前ら無事か!?」
「止まってアドルフ!」
【転移】でやってきたアドルフが駆け寄ろうとしたのをレストが止める。
「【魔力防壁】の範囲から出ないで。この部屋、おかしな力が充満してる」
「よく気が付いたね。さすが【宮廷魔道士】ってところかな。ちょうどいいや。皆集まったことだし、お帰りいただこうか」
一言、そう言って魔力を高めていく。
その寸前にレストが【魔力防壁】の範囲を拡げていたため『勇者パーティー』のメンバーはチカラの影響から逃れ、身体を起こし始めていた。
そんな彼らが防壁の中から見えてしまった景色は──圧倒的なもの。
目には見えないのに感じ取れる。
暴風なんて弱々しい言葉では言い表せない。
大瀑布、でもまだまだ足りない。
「規格が、違う……」
誰がともなく、零した言葉。
しかしてそれは、その場に居た者達の総意。
エーナ達【精霊帝】に仕える者たちはその威光にひれ伏し、そのチカラを称える。
「『世界の記』へ接続──」
ひときわ強くチカラが脈動し──【精霊帝】の仮面が割れた。
「ありゃりゃ、紙一重に躱した剣が掠ってたのかな?」
「うそ、だろ……」
「レイ、君?」
露わになった素顔──見覚えのあるその顔に啞然とする。
「なんで……」
「今は説明してる余裕はないんだ。またすぐに会える──『君らの帰路に時は無く距離も無し』」
言葉が紡ぎ終わると同時、光輝たちの姿が消え去る。
「やっぱり君だけは効かなかったねドライアドと契約──いや、この場合は『同化』かな。そのせいで【拠点に戻す】っていうチカラが働かなかったわけか」
その場にたった一人残された桜に向かって推測を言い放つ。
「そのとおりよ。いまは時間がないっていうことは、時間があるときに話してくれるってことでいいのかしら?」
「『同化』したてで意識が混じってるのかな? 問題はなさそうだし特にては加えないことにするか。うん、その解釈で構わないよ。もう時間が惜しいから強制的に飛ばす──文句は聞かないからね」
時間がないという言葉の通り、焦っているのか口早に答え問答無用に桜を飛ばす。
「エーナ」
「はい」
「『シスターズ』全員着いて来て、やることができた。あと他の『精霊』にウルを探すように伝えて」
「「「我らが母の御心のままに」」」
『シスターズ』と呼ばれた少女たちが礼を一つして付き従う。
「今回は盛大にやらせてもらいますか」
そう一言告げ、光輝たちのように姿を消した。
野原を駆ける、駆ける。
──レイさんたちと過ごす『幸せ』な生活に溺れて、私がなぜ『奴隷』なんていう立場に甘んじていたのかを忘れていた。
──本当なら強大なチカラを持つレイさんを巻き込んで、利用するつもりだったんですけど……
暫く一緒に居るうちに、情が移ってしまったのだろうか。
逆に巻き込みたくない、とさえ思ってしまう。
それにこの戦争、何か違和感を感じる。
「この戦争は私が止める」
決意を口にしながら手に持つ短剣に触れる。
そして遠くを見据えれば、小さく見える二つの人の群れ。
(まさかもう始まって──いや、まだだ! まだ間に合う!)
より強く大地を蹴って駆ける。
家族が死ぬかもしれない──そんなこと、全身全霊で止めて見せる。
──例え全てを■■することになっても。
その思考に至った瞬間、思考が加速する。
思考が冷え切り、合理的な考えが次々に浮かび始める。
──走るなんて無駄なこと、必要ない。
次の瞬間、シリウナの姿が消え去り開かれようとしている戦線のど真ん中──両軍の中央に姿が現れる。
驚いた人間側の軍から【魔法】が飛来する。
「邪魔だ、『消えろ』」
ゆらりと動いたシリウナが短剣を振るう。
短剣に【魔法】が触れた瞬間、【魔法】そのものが消え去る。
両軍がざわめくその間で、シリウナはゆらりゆらりと揺れている。。
──なんでここにいるんだっけ?
──ああ、そうだ。
「殺せばいいんだ」
「ッ! 【魔法隊】、撃てー!」
「【獣王軍】、進めぇ!」
撒き散らされた『殺気』に両軍が動き出す。
──ああ、私はどこで間違ったんだろう。
戦端は開かれ、もはや止まることはないのだろう。
──そのハズであった。
『両軍、剣を引け』
天から声が降り注ぐ。
その声が聞こえたものは例外なく動きを止める。
声にはそれをさせる絶対的なまでのチカラがあった。
『うん、いい子たちだ』
声と共に天より降り来るは翼を背負い、『精霊』の軍勢を率いた白き王。
──否、【精霊王】すら従えるそのお姿は【帝王】というべきか。
『この戦、止めさせてもらうよ』
その声を聴いてやっと理解した。
──レイさんを巻き込みたくなかった? 情が移った?
違う、違う。
──この程度の些事に手を煩わせたくなかったのだ。
畏敬と共に湧き上がる感情は『恐怖』。
気が付かないうちに私はレイさんのチカラの強大さに飲み込まれていたのだ。