表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ハズレ』と言われた生産職でも戦いたい!!  作者: ナリア
彼らは『世界』に名を残す。
107/127

FH-√003i

投稿が……どんどん遅れていく……

そう言いながら金色の斬撃を受け流そうとして──流し損ねた。


「──ッ!?」


慌てて飛び退いた【精霊帝】は思わずよろめき、地に膝を着いて額を抑える。


(なんだ、今の……アタマが、視界が、揺れる……?)


今の現象に考えを巡らそうとするが、思考は乱れ定まらない。


(まて、今、何を考えようとした?──待て、落ち着け。まだ呑まれる・・・・のには早すぎるハズだ。自己確認……そうだ、先ずは自身の『名』を……僕の名前は『レ──)


どうにか思考するが、ふと気がつけば目の前に金色の斬撃が迫り──



「──ッ!『我は其れを望まず』【無効化キャンセル】!」


『魔力』を纏った腕で触れれば、初めから無かったかのように消え失せる。



が──



(──ッ!?『名前』が、思い出せない!?)



──それと同時に、大切なモノまで失ってしまっていた。




「はぁぁあああ!!」


そんなことを知る由もなく、怒りと殺意を宿した刃が振るわれる。


(避け、無いと──)


しかしながら既に、『』は彼に──そのモノに侵蝕し過ぎていた。


(アレ……避けるって、どうするんだっけ……?)


不自然に体勢を崩した身体の目の前を斬撃が通る。


幸い刃そのものが身体に触れることは無かったが──余波でその仮面が切り裂かれた。


「……レ、イ……くん?」


その素顔を見て思わず動きを止める。


「……頼む、その『レイ』は、誰?僕?私?俺?……お願いだ、教えてくれ……それは、誰?自分は、ナニモノだ?」


ただ縋るように、目の前にある可能性に手を伸ばすが──


「レイ君は、もう居ないんだ。その姿で、皆の、僕の大切な人の姿で……どれだけッ!!」


──それに対する返答は、剣だった。



(自分は、イナイ?何処にも、此処にも、居場所が無いなら、居ないも同じ──)


一筋、涙が零れる。


今まで抱えていたハズの悩みが、思いが気持ちが


抑えていたものが溢れ出る。


虚無感に、空虚感に呑み込まれる。



──抑えていた『ソレ』が、溢れ出る。



「あ──」


目の前に迫っていた剣が、消失した。



「まって──」



距離を取った光輝が何かを言いながら【魔法】を放ち続ける。


互いの声は、何故だか互いに届かない。


【魔法】は当たる直前で次々に消失していく。



──まるで、最初から無かったかのように。




「お願い──」


気がつけば先程まであったハズの距離は無くなっており、目の前に居る光輝へと手を伸ばす。



「自分、は──」


「う、うわぁぁあああ!!」


光輝は反射的に!その腕を振り払おうとその腕に触れ──消え去った。




跡形も無く、まるで、最初から、存在し無かった、かのように。




「あ──」


呆然と、虚空に手を伸ばしたまま硬直する。



「誰か……そうだ、シリなら……唯一の、繋がり……此処じゃ無い、彼女の所へ──」



そう呟いた瞬間、光景が一変する。



そして、目の前には──






──傷つき、倒れているシリウナの姿があった。



「シリ……!」


名を呼び、腕に抱える。


それで、わかってしまった。




──シリウナは既に、こと切れたあとだった。




無くなったハズの哀しみが溢れ出ては、消える。


何時しかそこは戦場と化しており、そこかしこで戦闘が起こっているが、そんなことは関係無かった。



哀しみは次第に怒りへと変わるが、それも溢れ出しては、消える。



そして、そういった激情が消される度に、消していたチカラは大きくなっていく。




──そのココロを蝕み続けて。




「あぁ……ぁぁあああああああああ!!」



そして、唯一・・の繋がりが消えたことによって──遂に決壊した。



抑えていたソレが、まるでダムが崩壊するかの如く溢れ出て、拡がる。


眼には見えないが、ソレは確実に拡がっていく。




------------------------------------------------------------



何もかもが無くなった世界に、独り残された。



──その中で、気がつけばヒトカゲがひとつあった。



「なかなか、なかなか、なかなかにオモシロイことになっているじゃないか」


「キミ、は……会った事が、あったっけ……」


「さあ?会った事があるかも知れないし、無かったかも知れないな。もしかしたら、会っていたけれどそこに僕は居なかったかも……ま、そんなことはどうだっていいんだ」


そう言いながら、黒ローブのヒトカゲは歩み寄り、手を差し伸べる。


「『ナキモノ』、私と『取り引き』をしないか?」


「とり、ひき……?」


「そう。キミの『器』は限界だろう?『魂』は無事かもしれないが……このまま行けば、無限に『無』を吐き出すだけの『現象』になるだけだ。──しかし、それじゃあオモシロクナイ」


そう言いながらクツクツと笑う。


「だから、機会を上げよう、チャンスを上げよう。ボクが、オレが、ワタシが飽くまで、何度でも、何度でも。……とは言っても、僕はキミの手助けを今を除いてするつもりは無い。それを成すのは君の『チカラ』だ」


そう言う口元はニタリと笑う。


「さぁ──この手を取れ」


差し伸べられた手に触れようとして、躊躇う。


「大丈夫、その手でワタシが消えることは無い」


その言葉に──遂に手を取った。



「コレで『取り引き』──『契約』は成り立った。願うといい。今までの全てを『否定』し、無かったことに、『無』に還すがいい。キミの、思うように」


その言葉に意思が定まったのか、チカラを込めて、紡ぐ。


「──【全ては零より再始するオルタトゥナスィ】」


紡ぎ終えると同時、身体が解け、宙に舞う。


「チャンスを、ありがとう」


「感情の伴わない礼は要らないよ。取り戻してからまた、言うといい」


「──覚えてないかも知れないけど、また」


その言葉を最後に、宙に解けて消えていった。




「──さて、新しい玩具が手に入ったのは嬉しいが、流石に予想外だったな」


誰も居ない空間で独り、呟く。


「『神材発掘計画』でまさか、『理解者』が現れるとは……いや、あそこまで行くともう、『理外存在』か。全く、この世界の神々も予想外だっただろうな」


クツクツと笑い、面白そうに言う。


「──さて、どうせ見ているんだろう?キミだよ、キミ。まあ、俺自身誰かは知らないが……さっきの君かも知れないし、そうじゃないかも知れない。ま、そんなことはいいんだ。ま、これで最後だ、とだけ言っておくよ」


そう言い残して、どこかへと消えてしまった。



そこはもう、鈍色の世界しか存在していなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【『ハズレ』と言われた生産職は我が道を行く】
並行して書いているものです!(完結しました!)
イロアイの魔王〜魔王認定された男子高校生はアイの罪歌で世界を染める〜
新作始めました!
こちらの方もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ