戦い
新年明けまして、今年もよろしくお願い致します。
年末はなかなか忙しく、執筆の時間が取れなかった次第にございます。
(コミケにすら行けなかった……)
ではでは、新年の挨拶もこのくらいにして、どうぞ。
「なぁ、アレってエーナさんじゃないか……?」
「えっ?」
隆静の指すほうへと視線を向ければ、確かに先程別れた彼女の姿があった。
「なんで……お母さんに頼まれたって……!」
「『創造主様』、発言の許可を」
「いいよ」
「では、説明いたします。とは言っても、簡単な話です。そこに御座す方こそが、我らが母になります。そして私は此方の命によって『仕事』をしていたということです」
一歩進み出てそう言うエーナな瞳には、感情と呼べるものが浮かんではいなかった。
「あれ?エーナ、彼らと知り合い?」
「貴方様が私に道案内を任せたのですが……」
「そうだっけ?ま、いっか。それで、勇者諸君、此度は何のようかな?」
「ドライアドと『霊導鎧』を止めてもらいたい。外で仲間が、戦っているんだ」
「うん?何のことかな?」
「……マスター、アレだ、アレ。『霊導鎧』はマスターの作った警備兵で、ドライアドはアレだ、ドラちゃんだ」
心当たりの無さげな仮面の人物に、今度は短髪の少女が言う。
「ああ、そんなのもあったね。それで?なぜ僕が止めないといけないんだい?」
「なぜって──」
「だいたい、君たちは何をしに来たのかな?」
「俺らは『精霊の森』が襲撃されたっていう情報があったから、何か手助けができると思って来たんだ」
光輝の代わりに隆静が言えば、仮面の人物は首を傾げる。
「そんな義理も何も無いと思うんだけど……ああ、『勇者』だからとかいう考えかな?なら──帰ってもらえるかな」
今までの無感情が嘘のように、冷たく言い放つ。
「なっ!?」
「だいたいなにさ、『自分なら助けられる』って。何様のつもりさ。傲慢にも程がある」
「こっちは善意で──!」
「『善意の押し付け』、かな?それがどういうことを引き起こすのかは、君だってわかっているハズだよ?」
「──っ!!?」
気に障った隆静が語気を強めて言おうとするが、『善意の押し付け』という言葉に唇を噛む。
「……僕は『勇者』だ。チカラを持つ者には相応の責任が伴うはずだ」
「今度は責任の押し付けかな?今代の『勇者』は押し付けが好きなようだね。まあ、僕から言わせてもらえば!チカラは『権利』だ。何かしたいことを成すための、ね」
「じゃあ、目の前に助けを求める人が居ても、君は助けないって言うのか……!」
「それをするのもしないのも、チカラがあってこそのことでしょ?うーん、最初の主題とだいぶズレてきてるけど……まあ、君らがそう言うならば、こちらにも考えがある」
「考え?」
「君たち、彼らと戦ってあげなさい。どうやらチカラの認識が足りないらしいから、わからせてあげるといい。──チカラがなければ、選ぶ権利すらないということを」
「「「イエス、マスター」」」
七人の白銀の少女達はそう答え、モーニングスターや鎖鎌など、各々の武器を取り出す。
「待て、まだ話し合え──」
「──ちっ、光輝!これ以上は『話し合い』なんて無駄だ!とにかく今はこの場をどうにかするぞ!」
「相手は『勇者』。不足はないでしょ?武器に関しては打ち合っても問題無いから、思う存分やっていいよ。──さぁ、始めて」
そしてここにまたひとつ、戦いが始まった。
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──目の前に拳が迫る。
それが当たる寸前、隣の木に触れ内部に移動する事で躱す。
(危な──)
「ッらぁ!」
安心したのも束の間、振り切られた拳をそのまま横薙ぎに振るい、中にいるドライアドを木ごと吹き飛ばす。
「あっぶな!って言うか、『魔法使い』的な遠距離タイプかと思ったら、ガッツリ近接戦闘じゃないっ!!」
「知るか!『──【慈悲】より【峻厳】へと接続。【力】を成せ』!」
『生命樹甲』の紋様が輝くとそこから回路が伸び、もうひとつの紋様を輝かせる。
「マズっ、『木々よ、壁を』!」
「はぁぁああああ!!」
ドゴンッ、と轟音とともに樹木の壁が、その拳に吹き飛ばされる。
「ちっ、外したか……」
「あっぶなぁ……」
ドライアドが後方を見れば、砕けて飛んだ木片が散弾のように木々をズタボロにしている。
「久しぶりに手応えがある……まだまだいけそうだな」
そう言いながら桜は左腕を前に甲を向けて立て、右腕を引き絞る。
「……ヘタに手加減してたら、私が怪我しそうね。少し本気を出すのも致し方無し、か」
そう言うとドライアドは植物を伸ばし、編み始める。
「おっ?大技か?ならこっちもデカいのかましてみるか?今まで試し打ちできる機会もなかったからな」
桜は桜で、『生命樹甲』の紋様を輝かせ始める。
「『我々は他者に搾取され、抵抗すために棘や毒を生み出した。しかしそれも効かぬ敵がいるのなら、それらを集いてここに、彼らの怒りを持って其れを滅す。──さあ、反撃の時だ』」
「『──【理解】より【峻厳】へ接続。其れは大きな力を齎す──』」
互いの詠唱が、終わる。
ドライアドの傍らには、植物が編まれて作られた巨大過ぎる拳が。
桜の右腕には濃密な、濃い緑のオーラが。
「──【植生ノ反逆】」
「──【戦車】!」
轟音とともに、ぶつかり合う。
「……思ったよりも、強い!」
「はぁぁぁぁああああああああ!!」
鬩ぎ合い、辺りに衝撃を撒き散らす。
「……うん、これなら合格点ね。とはいえまだまだ。私も負けてられないからね……!はぁ!」
「ッ!こんのぉぉぉおおおお!」
さらなる衝撃が、辺りを吹き飛ばしていく。
【王国】によって作られた、森林さえも──