勇者side:モニア
最近冷え込んで来ましたね。体調管理にはお気をつけください。
話は変わりますが、今週と来週は投稿ペースが落ちそうです。
ですが、最低週一は投稿していくので、よろしくお願いします。
……100部到達していたことに感想で気が付きました。
ここまで続けて来れたのも皆様のおかげです。
まだまだ拙い作品ですが、今後ともよろしくお願いします。
短いですが、どうぞ
──光が集い、剣を象る。
「はぁああっ!」
それを掴んでは目の前の大岩に叩きつける。
何度も何度も、何度も何度も。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「コウキ……あまり無茶をするな」
砕けた岩の前、肩で息をする光輝にアドルフが声をかける。
「はぁ、はぁ……そうも言ってられませんよ。『魔族』の襲撃が増えているんですから……」
彼ら自身、この前二度目の襲撃を体験したばかりなのだ。
場所は『帝国』──その中心【帝都】。
通り道として通り、そこの【皇帝】に挨拶し、手合わせし──襲撃にあったのだ。
そこに、光輝が多少の無茶をしている理由がある。
──光輝の不注意から、一緒に戦っていた【皇帝】が大きな負傷を受けたのだ。
その後、『聖剣』のチカラを解放し、『勇者』の『技能』を覚醒させた光輝が何とか襲撃を退けたのだ。
「僕がもっと強ければ、【皇帝】も傷つかずに済んだのに……」
「『怪我は治ったし、思う所は無い』って、その【皇帝】自身がいってただろ?なら気にする必要は無いだろ」
「それでも……っ!彩と彼女の持つ『根源回帰ノ祭杖』が無ければ死んでいたかも──」
「なぁ、光輝。それでもどうにかなったんなら、そこまで重く考える必要はないと思うぞ?」
そこに隆静が現れ、口を挟む。
「その時にできなかったなら、これから強くなればいい」
「──っ!だから僕は、みんなを守るために今まで以上に鍛錬を──」
「それで?自分が潰れちまったら意味ねぇだろうが!」
隆静の声が、響く。
「……みんな、心配してるんだぞ」
「アドルフさん……」
「俺ら、『パーティー』だろ?俺らも頼れよ」
「隆静……」
その言葉に思うところがあったのか、ふた振りの剣の柄を握る。
(そうだ……僕には『仲間』がいるんだ……!みんなとも相談は、しないとな……)
そう思う光輝だが──
((……まあ、彩と鈴はなんか祈ってたり別のことを考えてたりするんだけどな。そう言えば最近、心無しか周りに白服の集団──『無色ノ教団』が増えてきたような……))
──それを他所に、こんなことを思っていた。
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「着いたな。ここが『モニア』だ」
「ここが『精霊の森』……まあ、人間には『迷いの森』として知られていますが……そこに一番近い街です。そして──『魔族』に襲撃を受けた都市でもあります」
馬車から顔を出しながらアドルフが言ったことに同行している【宮廷魔導師】のレストが補足する。
「その割りには街に被害が無いように見えますが……」
「そう言えばそうだな。その襲撃自体は『冒険者』たちが止めたって話は聞いていたが、被害に関してはまだ聞いてなかったな」
街を見ながら歩き話をしていたがその理由もすぐにわかった。
それは街往く人たちの会話でだが、いわく
戦場となった街のすぐ外にて戦闘が行われ善戦していたものの、唐突に現れた【神話最悪の邪龍】によって戦線が崩壊しかけた時、白い英雄が現れたのだという。
その者は白銀の翼を持ち、空を飛んだ。
その者は一瞬で大量の剣を出現させ、それが群がる魔物を一網打尽にした。
その者は一瞬で魔物を、傷を苦痛を消し去った。
そして最後には空を切り裂き、【神話最悪の邪龍】を消し去ったという。
「……嘘、ではなさそうだな。そんなことが可能なのか?」
「いえ、私の知る中では【魔法】でも『技能』でもほぼ不可能かと」
この世界の住人であるアドルフの言葉に、同じくこの世界の住人であり知識人であるレストがそう返す。
「白い髪って……」
「うん、鈴もそう思う?」
二人はそう言い合い、彩の武器へと視線をやる。
「……そう言えば、白瀬さんのそれなら同じようなことができないかしら?」
「先生の言う通りかも知れませんが……これは一人しか対象にできませんし、回数制限がありますから無理ですよ。私にはできません」
(──って言ってるけど、絶対になにか隠してるわよね……教師っていう立場上、チカラで言わせるわけにもいかないし……)
彩と鈴がなにかを隠していることには教師という職業故に、気がついていた。
(……ま、難しいことは苦手だし、深く考えなくていっか。私にも秘密の一つや二つあるしね)
しかしながら、いつもそこに行き着いて詮索はしないのであった。
「そう言えば、サヤカさんの『祭杖』もリンさんの『魔槌』。そしてコウキさんの『魔剣』も確かレイさんの作品でしたよね」
レストの言葉にアドルフ、隆静、光輝の三人がハッとなる。
「まさか……」
「レイがここに、いた……?」
「──ッ!『光駆飛翔』!」
空中に光の足場を作り出し、空を翔る。
街を見渡せる高さまで上がり辺りを見回すが、見つかるわけも無い。
(いや、ここにいないのはわかってはいたけど……それでも、探さずにはいられなかった。思っていた以上に、僕の中でレイの存在が大きかったのか?)
「おい、突然空を飛ぶなって……そんなに考え込んでどうかしたのか?」
そんなことを考えながら地上に戻ると、隆静にそんな声をかけられる。
「あ、いや、ね。レイの存在は僕の中でも大きいんだなって思っただけだよ」
「まあ、このクラスはレイあってこその繋がりってのも少なくなかったからな。この世界に来てもクラスがバラバラにならないのもレイのお陰かもな」
思い返すように言って、二人して笑い合う。
「──離れてこそ、初めて気づく気持ち……うん、アリだね」
「鈴ちゃん新作の予感?」
そんな中、この二人は平常運行なのであった。