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07


そして、とうとう発表会当日―


私達の順番は最後から2番目。

だんだんと緊張が高まってきて、口数が少なくなる。



「朱音ちゃん!練習の通りにすれば大丈夫!自信持って!」


「でも、失敗しちゃったら…」


先生はそう励ましてくれるけれど、舞台袖で足がかくかくと震える。

こんなに大人数の前で歌うのなんて初めてだから怖い。

しかも、私が失敗したら賢君にまで迷惑がかかってしまう。



「朱音さん、そんなに不安がらないで?もし、ミスしても僕がカバーするから。気にしないで楽しみましょう!」


衣装はシックな黒のカッターシャツとパンツで普段よりもシャープな印象だけど、いつもと変わらない笑顔で私の手をそっと握ってくれる。

彼の体温がじんわりと伝わってきて、だんだんと気持ちがほぐれていくのもわかる。


「次は菅原朱音さんと楠本賢さんです!」


司会の人が私達を呼び、出番となった。


ステージにあがると緊張が高まってしまうけれど、イントロが始まり賢君と見つめあえばたちまち歌の世界に浸る事が出来た。


「「♪~♪♪~」」


私達の歌声に客席からもどよめきの声が上がり、会場全体が手拍子で乗ってくれた。

今までの中で一番の出来栄えだったと思う。


声だけじゃなくて、お互いの気持ちが重なりあっている気がした。


「お二人、ありがとうございました~!」


演奏が終わり、歓声の中ステージを後にする。

達成感で一杯だった。

途中、色んな事があったけれど、賢君と一緒だったから乗り越えられた。

彼には本当に感謝の気持ちでいっぱい。



今日、最後にきちんと自分の気持ちを伝えよう


そんな決意を胸に秘めながら、コンサートへ来てくれたお客さん達をお見送りするために、ホールの入り口へと向かう。




「さっきの二人組の女性の方ですよね!

素敵でしたよ!」


「ありがとうございました!」


知らないお客さんからも声をかけてもらって嬉しくて、大きな声でお礼を述べる。

そうして挨拶をしていると…



「あ、菅原さん!」


「…伊藤さん!?」


呼び止められて振り返れば、Kコーポレーションの北山部長の秘書がいて驚く。

普段のスーツと違い、ラフな格好で一瞬誰か分からなかった。


「びっくりしましたよ!歌声素晴らしかったです!」


仕事中よりも柔らかい笑顔で話しかけてくれる。


「ありがとうございます!こちらこそびっくりですよ!会場にいらっしゃるなんて…どなたか知り合いが出演者されてたんですか?」


「そうなんですよ!見に来るなって言われてたんですけど、どうしても気になっちゃって」


頭を掻きながら、少し困った様に眉を下げる。


「部長!すごく素敵でしよ!!」


私の後ろへ視線を送り、手を振る伊藤さん。

その先にいたのは…


「…」


驚いた顔をした賢君だった。



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