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姉をどうにかしてもらいたい

  ――― 自宅にて ―――



窓辺から眩しいくらいの朝日が差し込み、電線の上では雀が元気に鳴いていた。

とある部屋のベッドの上で目を覚ました枯海は、だらりと気だるそうに体を起こし、大きく伸びをした。

「ふぁわぁ~・・・はぁ、起きるか」

ジャージのまま、のそのそと階段を下りて行き、1階にあるリビングへと顔を出す。

「おはよう枯海!!おはようのハグ!!」

あー何かが体にまとわりついてきたな・・・

「・・・何してんの?姉ちゃん」

「スキンシップだよ、枯海」

「いや、何で抱きついてきてんのって聞いたんだけど・・・」

「ほら~家族のふれあいが少なくなったら家庭崩壊なんてのが起こりやすいって言うじゃない?だから、スキンシップ」

ロングヘアーをさらりと揺らしビシッと人差し指を立てた後、再び枯海に抱きつこうとする姉、「幡多 蒼」(はた あおい)は、俺が通っている益野葉中学の3年であり、3年の中でもトップを誇るといわれる存在であり、現生徒会長でもある。

俺に異常にスキンシップを求め、今日のはまだましな方で、ひどい時は朝、目が覚めた時に目の前に蒼姉さんの顔があり俺の絶叫が街に響いた事も・・・

「それじゃ、姉さんは生徒会の仕事が山のようにあるから、本当は枯海に食べさせてあげたいんだけれども・・・」

「いいって!!本気でもう良いから!!行ってらっしゃい」

そう言ってさっさと家から追い出した。

そして、今、この時からやっと俺の平和な朝が訪れる。





  ――― 14HRにて ―――



いつも通り、沖衣と成井に合流して登校し、教室で清香に挨拶をすまして追加で弥生さんと一緒に教室の昼食をとるスペースで駄弁っていた。

「にしても、うらやましいよな~枯海はあんな良い姉さんがいてさー」

「お前・・・あの人は家と学校じゃ大違いだからな?」

「良いじゃん!!ギャップって奴!?良いじゃん良いじゃん!!」

のりのりで蒼姉さんをべた褒めする成井に苦笑いを浮かべ、無理やり話題を反らした。

「そう言えば清香、今日はなんか朝の行事か何かあったっけか?」

えっ!と急に話しかけられたことに驚いたのか目を丸くして驚いている。

「おれそんなにおかしなことを聞いたか?」

「いや、その・・・いきなり下の名前でよぶから、さ・・・」

頬を赤らめて少し嬉しそうにもじもじしている清香を見て首をかしげている枯海を見て、沖衣と成井はあきれていた。

「お前って、鈍感なんだな」

「正直お前に言われるのは心外だぞ、成井」

「む?どういう意味だ?」

「なんでもない、気にするな」

成井との会話をうやむやにした後、話を元に戻した。

「んで、清香今日は何かあったっけか?」

「たしか、生徒会集会があったと思うけど」

という事は、生徒会長である姉が無論ステージに立つことになるわけだ。

蒼さんを見るのは久しぶりだな~と言って目を輝かせている。

「久しぶりも何もないだろうが、休みの日は大体家に遊びに来てんだから」

そう、小学校の時から遊ぶ時は大体家と決まっていた。まぁ、最近でもよく遊びに来るのだが

「そうだ、今度清香達も遊びに来ないか?姉さんにも紹介しときたいしな」

「遊びも良いんだけれど・・・今度のテストの方は大丈夫なのかしら?」

ぐはっ

今、1番聞きたくないセリフが前振りもなく浴びせられた。

そう、この学校でもテストはある。

この学校に限ったものではない、スポーツ学校でも体力測定という形で、学力専念校でもペーパーテストといった形でテストが行われる。

そしてここは超エリート校、ペーパーテストはもちろんの事、体力テストに追加で理事長の趣味でバトルまでもがテスト範囲になっている。

「あははは・・・今日の昼は何にしようかな~」

「そこ、誤魔化さないの」

「うっ・・・退学処分を食らうほど悪い点数は取らないと思う、たぶん・・・」

語尾の方はボソボソッとごまかし気味に言った。

「それじゃ~こうしましょう、今週末、枯海の家で徹夜で勉強会!!」

成井は面白い事になりそうだな、とニヤニヤして、沖衣と弥生さんは楽しそうだねと互いに笑い合っていた。

こりゃ止められそうにないな・・・

何より、1番嬉しそうにしていたのは、清香だという事には弥生しか気付かなかった。




  ――― 体育館(生徒会集会)にて ―――



生徒会集会、それは1カ月に1度、定期的に行われる学校行事の1つである。

無論、生徒会と名のつく集会だ、生徒会長の話というものが絶対にある。

つまり、枯海の姉、蒼が全校生徒の前で話をすることになる。

そして彼、枯海は初夏の少しまだ涼しい時期でありながらも、真夏であるかのように嫌な汗をだらだらと背中に流していた。

そして彼が願う事は1つ・・・

(余計な事は言わないでくれ!!)

そんな彼を余所に、蒼はゆっくり壇上を上がり、そしてマイクに向かっていつもとは少し違った口調で話し始めた。

「みなさん、こんにちは。私は生徒会長の幡多蒼と申します。新入生の皆さんとは入学式以来ですね。では早速、生徒会は一体何をしているのか、ということから・・・」

そんな感じに話が進み、何事もなく生徒会集会は終わった。




  ――― 14HRにて ―――



枯海達のグループでは蒼についての話題で持ちきりだった。

「やっぱスゲーよ蒼さん」

最初に口を開いたのは成井だった。

「凄い綺麗だったね」

「そ、そうね・・・私なんか比じゃないくらいに・・・」

次に口を開いたのは弥生でそれに答えたのが清香で最後の方は弥生にだけ聞こえるようなささやかな声でそうつぶやいた。

「問題発言がなくてよかった~・・・」

他のメンバーのだれよりも疲れていた枯海が四肢を投げ出し天上を見上げながらそう言った。

「あの状況でどう問題発言が出るんだよ」

「うぅっ!確かに・・・それに気を使って疲れてた俺って・・・」

さらにガクッと体から力が抜けてうなだれていた。

「でも、そんなに変な人には見えないけどな~」

沖衣がそう言った瞬間、蘇生した枯海が沖衣の目の前まで顔を近づけ、真顔になってそしてまたうなだれた。

「・・・何?」

「いや、ナニモ」

そんな枯海を見た清香が首をかしげていた

「枯海、あんたそんなに蒼先輩の事嫌いなの?」

「嫌いじゃないんだが、何て言えばいいのかな・・・」

バンッ!!

勢いよく教室のドアが開けられた。

クラスの全員が口を開けてポカーンとしていた。

「ね、ねねね姉さん?」

そしてそこに立っていたのは他でもない、枯海の姉、蒼だった。

一瞬教室をキョロキョロした後、枯海と目があった瞬間にっこりと笑い瞬間移動のごとく一瞬にして枯海の前に来たその瞬間

ギュッと枯海を抱きしめた。

そして教室には再び、そしてより深い静寂が訪れた。そして

「○×△○※?□!?!?!?」

言葉にならない叫びでもがいた後、ピクリとも動かなくなった。

「あの~・・・蒼さん?何してんですか?」

「あ、成井ちゃんお久しぶりね、元気にしてた?」

あ、どうも、そう言って頭を下げ、そしてまた本題に戻した。

「話戻しますけど、何で蒼さんが1年の教室に来てるんですか?」

教室の外を見ると野次馬やらなんやらで人ごみが凄い事になっていた。

「え~、ただ今朝枯海が冷たかったから今ここにきてハグしてるの」

そうすることが当たり前のような振る舞いで(枯海を抱いたまま)嬉しそうに飛び回っていた。

((あぁ、枯海が言ってたのはこういう事か))

成井と沖衣はそう思ったが、清香は顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら思考回路が停止していた。

10分程、その状況が続いた。


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