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三人

 ホール内の全ての人たちが息を呑む音が聞こえた。

 十字士の波から抜け出した姫と紀伊も。

 十字士たちも、その最終決戦を息を呑んで見ていた。

 指揮はうっ、と表情を歪める。

「指揮!?」

 紀伊が叫び、姫と科は注視していた。

 喉にへばり付くように毒ガスが入り込み、甘い味が口内を蹂躙する。

(甘い……?)

 咳き込み、毒ガスを吐き出した。

 粘っこさが喉に焼きつき、呼吸困難になる。

「なん……?」

 神村は意味がわからないと疑問の表情を作る。

 指揮は涙目になりながらも、毒ガスの味を思い出す。

 元那が作ってきたイチゴの気体飴の味。

 呼吸困難に陥ったあの気体飴だった。

 喉に引っ付く気体飴は分子レベルに分解して、吐き出した。

「もしかして、毒ガスじゃないの?」

「どんな能力で防御したかは分からないけど、もう一度だ!!」

 村井は吼えて、もう一度毒ガスを撃ちだした。

 指揮は再び撃ちだされ、周囲に圧倒的な速さで蔓延するガスの中へと入り込む。

「コレで――」

 分子を把握している指揮にはピンクのガスが充満する空間であっても神村の居所を突き止められる。

 顔面へと狙いを定め、拳を握った。

 強く、強く!

「終わりだあ!!」

 頬に撃ち出された拳は容赦なく神村の意識を刈り取った。


◆◆◆◆◆◆◆


 真上から見ているかのようにピンクのガスが渦巻いているシーン小型のテレビに映る。

 毒ガスの成果を見てみたいのでとかなんとか言って隠しカメラを設けさせてもらったのだ。

「あーあー指揮に美味しいところばっかり持っていかれちまったなあ……」

 野性的な瞳をした少年――臼倉元那がテーブルに突っ伏してぼやく。

 佐藤香苗が慰めるように元那の背中を叩く。

「まあまあ裏の主人公っぽくてカッコいいじゃん。それに詐欺集団だし私達」

 香苗はそう言い、テーブルに座っている仲間と協力者を見た。

 医者の陣内千夏が笑う。

「熊田」という名前で十字団へ侵入した医者だ。

 そして空錆。

 圧倒的な推理力で詐欺を見つけ出した男である。

「麻酔針の支給。助かった」

 静かな礼に元那は自分が表立って活躍できなかった為か、いじけた感じで言う。

「ああ。別にいいよ。鈴野はそういう甘ちゃんだからな。指揮もそうか。あ、俺もそうだな」

 元那はそう言いながらケータイに手を伸ばす。

「さて。お前ら毒ガスをあの砲台の中に詰め込んできてくれ。色々工作しねえと一網打尽に出来そうにないしな」

 詐欺集団の長はそう言う。

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