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改めまして

 指揮と元那は登校、下校以外は電子ロックで施錠されている校門から数メートル先のピロティへと続く通路を歩いていた。

「あ、大船だ!」

 鈴野紀伊はそう言って女子グループの中から抜け出し、駆け出す。

「へ?」

 と女子達はお互いを見合わせながら、にたっと気味の悪い笑顔を見せる。

「へー紀伊って大船が……朝早くに学校に行くって言ったのもそのせいですか……」

「にゃるほどねー。指揮には悪いけど釣り合わないよねー」

 パタパタと駆ける紀伊の足音は軽い。

 指揮は驚いたように、二回まばたきする。

 隣に居た元那など、指揮と紀伊の顔を交互に見合わせ呆然としている。

「よかった。学校に来てたんだね!」

 紀伊は指揮に嬉しそうに笑みを振り撒く。

「まあ、ここに来ないと解決なんてしないから……」

「そう、だよね……わ、私が居るから大丈夫だよ!」

 指揮の無理やりな笑みに紀伊はやはり無理やりな笑みを返す。

 そんな意味不明なやり取りに元那は首を傾げた。

「ん? お前ら何言ってんだ?」

「いや、別に何でもねえっすよ?」

 元那は何かを察したようにニヤリと笑ってから。

「……ま、いいや。俺は用事があっからまた後でな」

 そう言って元那は通路から校舎裏へと続く道へと走り去っていった。

「どうしたんだアイツ……?」

「倉井君って野球部なの?」

「いや、違うけど」

 野球部なら校舎裏のプレハブ小屋みたいな部室で着替えるのだろうが、元那はバイトをしている至って普通の帰宅部である。

「ふーん……あれ? 由美達は?」

「? 鈴野の友達の?」

「うん。一緒に朝早くに来て貰ったんだけど……っていうか付いてこられたんだけど」

「何で朝早くに?」

「ふぇ?」

 紀伊はビクッと立ち止まり、右に左に視線を飛ばす。

「あーいーうー」

「えお?」

「と、友達になって下さい!」

 ビシッと。

 営業マン顔負けの四十五度の姿勢で以って。

 白魚のように白い手を綺麗に伸ばして。

「はあ?」

 指揮は突然の展開に付いていけず戸惑う。

「あ、あの……昨日見た超能力で……あーいや、超能力者の友達が欲しいと思っていて」

 姿勢を戻し、手を背中に回して続ける。

「それで……友達になって欲しいって頼もうとしたらあんな事が起こってて……」

「なるほど……要するに俺が超能力者だとわかったから友達になりたい訳か」

「え!? あ、そういうこと……かも……でも、それだけじゃなくて……!」

「いや、別に鈴野の考えを否定してる訳じゃなし、超能力だって魅力の一部だろうし……ただの確認だって」

(まあちょっとは引っ掛かるけど……)

「じゃあ……?」

「ああ。別にいい」

 指揮は頷いた。

 鈴野は笑顔を浮かべ、指揮の手を取る。

「じゃあ私のことは紀伊って呼んでね!?」

 うおっ、と紀伊のテンションについて行けずに一歩下がる。

 紀伊? ちょっと待ってくれ、と指揮は手を外す。

「女の子の名前を呼ぶって……」

「へ? ……ぷはっ」

 紀伊は指揮の意図がわかった瞬間、噴出した。

「大丈夫だよ。私の名前を呼んでる男友達だって居るんだし~。私から呼んでって言ったことはないけど」

「いや、でも、ホラ……」

 鈴野紀伊は学年内でも指折りの美少女である。

 学校でも、と範囲を広げてもいいかも知れない。

 そんな女子を男友達も呼ぶからという理由で名前呼び……。

 いや、鈴野と仲の良い男子生徒はうろ覚えだが、クラスの女子と打ち解けるのが異常に速い奴らだけだ。

 明らかに指揮だけが浮き、話題に上がる筈。

 大船指揮。放課後にスプーン曲げというベタなマジックを披露し、鈴野に近づいた男。

 そんな噂話が垂れ流されそうで困る。

「ハードルが高いし……」

「んーじゃあ私は指揮って呼ぶね。大船って言い難いし」

「……は?」

 指揮は鈴野の考えが一応わかる。

 名前で呼んだ方が親近感は高まるし、打ち解けるには最適な方法だ。

 しかし。

「いや、俺は大船で……」

「駄目。これは決定事項です。指揮でけってー」

「ちくしょう! この子人のお話を聞けない子だ!」

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