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ケンカ

 三人に電流のような衝撃が走った。

 リーダー。

 瞳孔は大きく開き、五感全てが狂わされるような感覚が指揮を蝕む。

 神村は指揮に警戒心なく近づいてきた。

 じっとりとした汗が毛穴の一つ一つから流れ出てくるのを感じる。

 そして、叫んだ。

「何で、何で科の義父とうさんがここに居るんだよ!?」

「特に理由はないよ。ただの散歩」

 そして、神村駆流は二人を見る。

「ふざ、けんじゃねえ!!!」

 衝動と共に駆け出し、拳を思い切り振り抜く。

 直後。

 脇から手が伸び、指揮の腕に蛇のように絡んだ。

 拳は威力を殺され、神村に届きもしない。

「っ!?」

 指揮は勢い良く後ろを振り向く。

 そこに居たのは、科だった。

「て、めえ……!! 何で、何でテメエの義父とうさんが十字団やってんだよ!!?」

「そんな事は知らねえ。俺が拾われた時から十字団はほぼ結成されてたからな」

 科は指揮を解放し、一歩退すさる。

 指揮は、科が拾われた時から殺しの教育をさせられていたのではないか、とそんな想像を立てる。

 すっ、と感情という感情が静かに引いていく。

 まるで津波のように感情が再び、荒れ狂うように心に湧きだった。

「ココに来れたのはあの二人の能力のせいかな?」

「誰が教えるかよクズ野朗……!!」

 殺気立った声に姫と鈴野は指揮を思わず見る。

「テメエが、テメエが科をこんな風に育てたのか?」

 一歩一歩、敵意と殺気を増大させながら歩いていく。

 科をこんな風に育てたなら、殺すことを強要させてたって言うのなら、殴るだけじゃ飽き足らない。

「……!!」

 怒りで何を言うべきからも分からず、ただ叫んだ。

「答えろ!」

「そうだよ」

 それを聞いた瞬間、頭のネジが飛んだように真っ白になった。

 自然に拳を握り締め、能力を使用していた。

 狙いは、指。

 完全に折る事が目的だった。

 指が弾けるように折れ曲がろうとし、指揮は同時に懐まで飛び込もうとする。

 が。

「がッ!!?」

 科のナイフの柄が指揮の後頭部を強打し、二メートルほどゴミのように吹っ飛んだ。

「指揮!!?」

「アンタ……ッ!!」

 姫は憤り、科を殺気の籠った瞳で睨みつける。

「危なかったな。今のは……」

 涼しい顔でそう言う神村は今の状況が予測できていたかのような口振りだ。

「さて、もうそろそろ会議室に行って来るか。科、そこに居る超能力者達は任せる」

 後頭部を抑えながら、立ち上がろうとする指揮は頭の痛みが足にまで達していることに気づき、肩膝をついて深呼吸をする。

 姫は、神村の元へ走ろうとする気配を見せた瞬間。

 白いレンガの地面が弾け飛んだ。

 からん、と軽い音と共にナイフが転がり落ちる。

「な……っ!?」

「駆流に近づけば、殺す」

 科は冷静に、状況を説明しているだけ、という感じで喋る。

 姫は科を睨みつけ、欠けたレンガの破片を手に取った。

「じゃあアンタをぶっ殺してから殺しに行けばいい訳だ」

 肩膝をつき、しんどそうにしている指揮を見てから、科を冷たい敵意の籠った瞳で見る。

 そこで、指揮の言葉が割り込んだ。

「ようやく邪魔者は居なくなったな科?」

 科は感情のない瞳で指揮を見る。

 姫も鈴野も見た。

「どういう事だ?」

 指揮は科を馬鹿にするように笑う。

「言葉遣い変わってんじゃねえか。何だそれ? 似合わねえから止めろよ」

 科は押し黙るようにして、指揮を見つめる。

 苛立ちが指揮の感情がささくれ立ち、科を睨む。

(俺と、コイツの関係ってこんなもんだったのかよ……)

 唇を噛み締め、唸るように言う。

「親離れくらいさっさとしろよ。テメエは親が何かしろっつたらすんのか?」

 科は黙り、指揮を見る。

 それを見た指揮は、逡巡するようにもう一度科を見てから、拳を掌に打ち付けて言う。

「ケンカしようか」

 科は指揮の顔の凝視し、思考が停止したような間の抜けた表情をする。

 姫はその隙に科の真横を通り過ぎ、ホールに走り出す。

「鈴野!! 指揮のこと見てて!!」

 え? と鈴野は姫を慌てて追いかけようとし、転がるナイフを見てから足を止めた。

「追いかけた方がいい?」

 心配そうに指揮を見る鈴野に姫が中に入った事に動揺した指揮は答える。

「今日も言ったけど、殺される可能性は今のところ低いけど、中に入ればそうもいかないと思う。だから、鈴野に任せる」

 行こうが行くまいが鈴野の自由だ、と。

 姫と鈴野を心配した指揮が言えるただ、一つのセリフ。

「じゃあ。行って来るね」

 そう言って走り出そうとした鈴野の足が急に止まった。

 科を敵意の籠った目で見る。

「指揮に何かしたら、絶対に許さないから」

 科は一つ、何かを考えるように目を瞑ってから言った。

「そうか」

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