表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/93

スプーン曲げの詳細

 姫の服装は黒コートにマフラーだ。

 理由は単純で姫は極度の寒がりらしいからだった。

 そんな寒がり姫は焼き鮭と味噌汁を食べ終え、『スプーン曲げQ&A』メモ(今命名)を見ていた。

 指揮は呑気にケータイを弄っている。

 何となく気になりつつも、汚くて読めない訳ではない程度の文字に目を通す。

『Q 人の骨を折る場合と、金属を折る場合の時間差。

 A 金属(鉄パイプ)の方が若干遅いと思う。人の骨を折る勇気はないから分からない。

 Q 見なくては折る事は出来ないのか?

 A 見ないと折ることは出来ないけど、見てから後ろを向いて(要するに見ずに)折る事は出来る。だけど、折る部分を明確に思い出さないと駄目。

 Q 速度の調整は?

 A 限界はあるけどできる。

 Q あのイメージの『流れ』は存在しているものなのか?

 A 姫に手を貸して貰ったところ、ない。

 Q どれだけ巨大な物を折ることが出来るのか?

 A 鉄パイプならいけた。大木は無理。

 Q 折るだけではなく、操る事は?

 A 俺が能力を使いこなせていないのが、理由なのかどうしても無理だった。

 Q 二本同時は無理なのか?

 A 集中力の問題で無理。二つ同時に行うと、二つの対象物にかかった能力が消える。

 Q どれだけ離れた距離から折る事が可能なのか?

 A スプーンなら俺の歩幅で七歩。姫の歩幅で八歩。鉄パイプなら十七歩。

 Q 自分の骨は折れるのか?

 A 折れる。凄く痛かったからやめた。

 Q 距離で強弱が変わるのか?

 A 分からない。

 Q 能力使用の最大数は?

 A 五十回ほどやったけど、切れることはなかったから多分ない。

 Q 障害物があっても能力は問題なく使えるのか?

 A 見てから障害物を挟んで明確に思い出せば出来る。

 Q 何時間曲げ続けれるのか?

 A 姫に怒られた』

 姫はそれを見終わり、紙をテーブルに置く。

「さっきからケータイで何やってるの?」

 それから、テレビでケータイでゲームをし続ける五十代が増えたとか言うのを思い出し、言う。

「ゲーム?」

「いや?」

「じゃあ何?」

「メール」

「誰と?」

「鈴野紀伊さん」

「……だからにやけてたんだ」

「何でぶすっとしてんだよ?」

「は? どこが? 私は毎日こんな顔だけど?」

「いや、たまにいい笑顔見せるじゃないですか?」

「見せたことない」

 ふん、と姫は顔を背け、クッションを取り、顔を埋めた。

 指揮は困惑する。

「鈴野、嫌いだったり?」

「別に嫌いじゃない。鈴野と話してデレデレ気持ち悪い顔を見せる指揮が嫌い」

 クッションによって埋もれた籠った声が指揮の心を串刺しにする。

「……別にデレデレしてないし、そもそもコレは今日の予定を立てようと……」

「予定?」

「ほら、いよいよ集会だろ? だから作戦くらい立てとかないとと思って」

「別に突っ込んで大将ぶん殴れば解決よ」

「科に負けたくせに何言ってんだか……」

 クッションから顔を上げ、寝転んだまま睨みつけてくる。

「アレは油断したの。次は私が勝つわよ!」

「いや、俺が科とは決着をつける」

「は? 指揮に勝てる訳ないでしょ?」

 明らかに馬鹿にしたような顔に指揮はむっとする。

「確かに勝つのは無理だけど、何で十字団なんかに入ったのか訊きたいし」

 宮野の言葉が甦る。

『ぶん殴ってでも更生させる』

「あわよくば、連れ戻したい」

「……一度裏切った相手をよく許せるわね」

 理解できないという表情で姫が言う。

「別に許してねえよ。ただ、恨んでもいない」

 ただ、意味がわからなくて。

 理由を知りたくて。

 皆を守りたいと思って。

 科を連れ戻したいと、ようやく思えた。

 多分それは、元那やあの男や宮野――それに一緒に居てくれる姫と鈴野のお陰だ。

「気分転換にゲームでもしようか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ