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「どこに行ったのよあの馬鹿アホ間抜けの指揮はっ!?」

 百メートルを五秒で走り抜ける速度で姫は走っていた。

 オリンピックでは優勝間違いなしだ。

「ホントにどこに行ったのよ!? 心配ばっかりかけて!!!」

 思わず怒鳴る。

 無事なら百発殴ってやる、と決意も新たに更に速度を上げた。

 走りながらキョロキョロと辺りを見渡す。

 一般客が驚愕のしたような顔で姫を見るが、構わず無視する。

 その時、耳に微かな音が飛び込んできた。

「銃音……?」

 それは確かに銃音だった。

 父親が姫を追い出す為に使った武器だ。

 忘れたくても忘れれる筈が無い。

 指揮の死亡を一瞬、考え血液が凍ったかのように冷たくなる。

 五感全てが死んだ用に途絶えた。

(今ので、死んで……)

 風を切る勢いで音のした方向を見た。

 白銀の看板に『ミラーハウス』と書かれている。

 しかも、隅の方で細々と営業しているからか人が余り並んでいない。

 並んでいる人達は今の音に期待を膨らませたように隣人と喋っている。

 マイナスな思考を捨て、姫は縁起でも担ぐかのように叫ぶ。

「待ってなさいよ!!」

 姫は、疾風のように列に並んでいた人を押し退け、係員の制止を聞かずに中に入っていく。


◆◆◆◆◆◆◆


 村井は弾倉に弾を十発詰め込み、歩いていく。

 超能力者とはいえ、たかが曲げる程度の能力。

 そんな弱小能力に負ける道理はなかった。

 それに、心では人を傷つけたくないという思いがありありと見て取れる。

 心も能力も弱い人間に負ける要素は無い。

「……科の奴も、こんな奴に振り回されるとはな」

 科のここ最近の言動を見ていると、この指揮に未練があるのが手に取るようにわかった。

 だから、殺す。

 殺して謀反の芽を摘んでおく。

 これは神村駆流の命でもあった。

 先には、マジックミラーのドアがあった。少し、開いている。

(……慌てて閉め忘れたか?)

 ドアを開け放ち、銃を構える。

 頭の上から何かが、降って来た。

 左手を真上に振って、叩き落す。

 コロコロと転がるそれは円形のプラスチックの容器のようだった。

 パッケージに商品名が書いてある。一般家庭用の塗り薬だ。

 何を考えてる?

 敵の意図が見えず、困惑する。

 目の前を見ると、やはりマジックミラーの扉があった。

 但し、今回は三つだ。

 三分の一の確率。

 真ん中のドアの前に血がついていた。

 鏡張りの床のせいか、いやに目に残る。

 右隣のドアにはハンカチ。ハンカチは何かを覆っているのか、膨らんでいる。

 血は鏡で切った傷だろう。

 ハンカチが生き物のように震えたのが視界の端でわかった。

 何を被せてる?

 疑念を持った数瞬後。

 思考回路を一瞬で書き換えた。

 コレが、殺しのプロと一般人の差だ。

 倉品宗次くらしなそうじがそう言っているのを一瞬だけ思い出として甦る。

 思い出と並列して、ハンカチの意味を考えた。

 答えは一瞬で飛び出し、口をついて出る。

「……時間稼ぎか」

 村井は、指揮の評価が間違っていたと知る。

 死か生かという逃走の中で、人は策など練れない。

 逃げる事しか頭にないのだ。

 策を練れるネズミほど鬱陶しいものはない。

 もう一度、戻り、ゴールで待ち伏せでもするか、と思考を切り替え踵を返す。右手に持っていた銃を左手に持ち直す。

 そこで、真ん中のドアが勢い良く開いた。鏡にドアから飛び出してきた指揮の姿が映る。

 拳を握り締め、疾走してきた。

 村井の右腕が真横に引っ張られる。鏡に掌を打ち付けられた。

(……右手を封じる気か!!)

 左手に持っていた銃で指揮の腹に狙いを定める。

 この距離ならば、絶対に外さない。

 右手など、何の関係もない。

 引き金にかけた指が違和感を訴えるが、構わず引いた。

 否、引こうとした。

 ――引き金が曲がらない。

「……何!!?」

 引き金を見た。

『引き金を保護している歪曲部分』に引き金の先端が捻じ曲がり、引っ付いていた。

 それが、つっかえ棒のような役目をしているのだ。

(まさかここまで計算して……ッ!!?)

 思考が真っ白になる。腕が曲がり続け、痛みが更に激しくなる。

 指揮が一歩、踏み込んだ。

(弱い心と脆弱な能力をカバーする為の策――!!)

 拳が凄い勢いで振るわれた。

 防御しなくては、と数瞬遅れて思い出す。

 だが、遅い。

「倒れろ!!」

 拳が顔面に飛んできた。

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