仲良く
鈴野は、指揮の方をジト目で見ると、溜息を吐いた。
「今日は、私と指揮との強化デーなんだよ? それで、何でその子を連れてくるの?」
姫は、不機嫌極まりない声で「私は十六なんだけど。子供扱い?」睨み付けた。身長が少し低いことを気にしているのかもしれない。
「え? そうなの? 中学三年生くらいだと思ってた……じゃなくて! その子とも関係って何? 朝も一緒に登校してたみたいだし!」
まるで恋人の浮気を咎め、追い詰めるような鈴野の怒涛の口撃に指揮はたじろぐ。
「う。ごめん」
「何で指揮が謝る訳?」
非難するかのような姫の視線で、指揮の言葉が縫い止められる。
「この誰だったっけ?」
「鈴野」
「そう。鈴野が勝手にヒートアップし始めたんでしょ。何? 指揮の恋人気取り?」
ふん、と鼻で笑い、嘲笑する。
そのセリフに鈴野は一瞬言葉に詰まると、顔を真っ赤にした。
指揮は「友好関係が……俺の計画が……」とモゴモゴ喋る。誰の耳にも届かない。
「別に、恋人じゃ……」
「じゃ、別に私が居てもいいでしょ」
一時休戦な雰囲気にほっとして指揮は鈴野に話しかける。
「ええとさ。あー鈴野に話があるんだけど……」
「何?」
「超能力者の友だちが欲しいって言っていたよな?」
訳が分からず頷く鈴野に指揮は姫の背中を片手で前に押し出した。
「姫も、超能力者なんだけど」
「え? ホントに?」
感情の読み取れない複雑な表情を作り出し、言った。
友好な関係を築くのは難しいと思った相手が実は『友だち』になりたい相手だったという残念なのか、嬉しいのかわからない展開に愕然としているのだろう。
「どんな能力なの?」
「重力操作」
「重力制御じゃなかったっけ?」
「名前なんて飾りよ」
「あ、そうですか」
「私の能力は『テレパシー』って言って相手を一瞬だけ操れる能力なの」
「一瞬、ね……」
指揮は二人を促し、チケットを持って窓口の方へ向かい入場した。
大きな、線路がとぐろを巻いたようなものはジェットコースターだろし、一番奥に見えるのは観覧車だ。
カップルや家族連れ、女子の友人達が多いような気がする。
流石に男同士だと来づらいのだろう。
「で、どうする? 何乗る?」
と、後ろの二人に振ると二人は顔を見合わせて、考える素振りを見せた。
「姫はジェットコースターとか好きそうだよなあ」
と、ぼんやりイメージを話す指揮に姫は、
「まあそうね。好きかも」
と答える。
沈黙の幕が降りた。
(三人だとこんなモノなのか……? いや、姫とはそんなに喋らないし、鈴野とは用がある時しか喋らないし。そもそも二人は険悪ムードだからかうわーーーーーー!!?)
指揮は頭を抱え、身を捩る。
「私はどんなのが好きだと思う?」
と、鈴野が訊いて来る。
「鈴野の好きなもの……? あのカップに座って回るヤツ……?」
「あ、当たってるッ!!?」
「すげえ俺! 今正に絶好調かも! 何が絶好調かはわかんねえけど!!」
無理やりにテンションを上げる指揮は、帰りたい思いを押し隠す。
(マジで早く仲良くなってくれよお前らあああああああああああ!!!)