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遊園地

 一時間目が終わった休み時間、指揮は鈴野へ目をやった。

 積極的な男子が鈴野に文化祭一緒に回ろうぜい! と声をかけているのだ。

 中には、大船が居るから無駄無駄、と意気消沈。鈴野よりレベルの劣る女の子を口説いている男子も居た。

「人気者だなあアイツ……」

「今更気づいたのかよ」

 とせせら笑う様に言う元那に、むっとした表情を向ける。

「うるせえな。そういうことに興味がなかっただけだ」

「はいはい。お前は外界に興味ないもんなあ」

「……引きこもりみたいに聞こえるじゃねえか。まあそういう噂には興味ないけどさ……」

 元那が、指揮の顔を見て思い出したかのように言う。

「あ。そういえば、ミスコンやるんだったよな。鈴野が出るんだよな」

「あーそう言えば、十一月に投票で決めたんだっけ? 忘れてた。そう言えば、ミスターコンテストもあるんだよな。ていうか、ミスターコンテストだけ縮めれねえよな」

「ミスターコンテストが普及しない理由かもな」

「馬鹿馬鹿し過ぎるだろそんなの」

「一概には言えないって。ライトノベルとか基本的に略すだろ? 何でか知ってるか?」

「さあ?」

「覚えて貰い易いからだよ。言い易かったり、語呂がよかったり面白かったりすると脳にシッカリ残るし、誰かに話したくなる。もしくは話す機会があるときに頭に思い浮かぶ」

 スラスラと話す元那にへー、と感嘆の声を上げる。

「しーき」

 指揮が可愛い声の元に振り向くと、鈴野の端正な顔がドアップで映った。

「うわあ!? な、何だよ……?」

 ドキドキしながら尋ねると、鈴野が長方形の紙を差し出してきた。

「一緒に、行こう?」

 ん? 指揮は長方形の紙へ目を近づけると、そこには『ファクリアランド』と楽しげな絵と共に書かれたカラフルな文字がでん、とあった。

「あー遊園地?」

 さらなる誤解を招くな、コレは……と指揮が乾いた笑みを湛えるとやはりと言うべきか、クラスが沸いた。

「なあ!? やっぱり出来てるのか!?」

 鈴野は指揮に安心して、というように笑って皆に宣言した。

「指揮は、私の大好きな親友なの! そういうんじゃないから」

 指揮は、よく恥ずかしげもなく言えるな……と呆れ、鈴野の面の皮を測るように顔を見たが、真っ赤だった。まるでさくらんぼのよう。

 弥生がグッと、拳を握ってキラキラ輝いている目で二人を見ている。

 その横で、顔立ちの微妙に整った男が安堵を滲ませた声で言う。

「そ、っか。はっはっは。親友かあ。男としては見られてないって訳だな」

「……あの表情は恋する乙女のそれじゃあないですかあ!! 片思いだよチクショー! ある意味両思いよりも落とし難いよ!」

 と、ネガティブ男子が叫んだ。

(ネガティブ男子って流行らないかな……)

 指揮はそんなことを思いながら、現実逃避を開始する。

 鈴野は、こほんと咳払いして指揮に顔を背けたまま、チケットを机に置く。

「じゃあ、明日の土曜日ね! 何か予定とかあった?」

「うんにゃ、別に」

 指揮がチケットを見つつ答える。随分急だな。

「ちょっと、お花を摘みに行ってくるね」

 と、どこのお嬢様だアンタは、と言うようなセリフを放ち、鈴野はトイレに行った。

 顔が微妙に赤かった気がするのは、指揮の錯覚だろうか?

「お花を積みに行ってきますって……花でもトラックに積むのか? そんな訳ねえよな?」

 馬鹿もとなが一人何かを言っていたが、指揮は無視してチケットを見る。

『三名様までのご利用可能』と書いた字面を見つけた。

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