疑問
指揮の事が、理解できなかった。
何で、見ず知らずの人間相手にそこまで親切に出来るのか。
こんなに物騒な超能力を持った人間なのに……。
そこで、この考えは親の影響だと気づき、その思考を嫌悪と共に拭い去る。
何らかの組織にのめり込んでいるのは、幼い頃から想像がついたし、そんなに熱中できる事があるなら私もやろうかなとか親に言っていた。
その頃には既に超能力には気づいていたのだ。
気づいてはいたが、親には言わなかった。
超能力者の映る番組はことごとく嫌悪したし、超能力者が戦うアニメも見せてはくれなかった。
だから、超能力が嫌いな事くらいは察しがついていた。
親の影響だろう。友達にも超能力を持っていることは知られたくなかった。
知れば、嫌悪され、畏怖されるかもしれないという恐れがあったからだ。
(だけど……)
だけど、ある日超能力を使う羽目になった。
川で溺れていた子供を救う為に友達の前で使ったのだ。
あの日の友達の表情は忘れられない。
絶句し、呆然として、まるで感情の大事な根幹が抜け落ちているような顔だった。
友達に聞いたのか、はたまた伝聞なのかは知らないが親にも知られ、追放された。
元々、好きな親じゃなかった。夜遅くまで仕事をして、その金を十字団に注ぎ込んで娘のことをこれっぽっちも考えちゃいない親だったのだから。
「おーい。行くぞ」
指揮が何かを考え込んでいる姫の肩を叩いて、意識を覚醒させた。
「うん、わかった」
「元気ねえな……? そんなに俺と一緒に暮らすのが嫌なのか?」
一瞬暗い表情をして言う指揮に姫は『何か』が少し解れるのを感じる。
「別に、嫌な訳じゃないけど……でも嫌じゃないの?」
「何が? お前と一緒に暮らすこと?」
頷く姫に、指揮は未来を夢想するかのような間延びした声で言った。
「まあ嫌なこともあるだろうなあ……」
◆◆◆◆◆◆◆
「あの子誰!?」
わーギャーうるさい女子(名前は忘れたが、鈴野の友達だ)の声から遠ざかるように耳を押さえ、「あーあー」と声を出す。聞こえませんよ、のポーズだ。
教室に着いた途端にコレだった。
姫をいつどこで見られたのか分からないが、とにかく鈴野の友達は指揮と姫との関係性を聞きたいらしかった。
全く傍迷惑にも程がある。
女子が指揮のことが大好きで嫉妬しているのなら、可愛くも見えるのだろうが明らかに『野次馬根性』剥き出しだった。
「滅茶苦茶可愛いじゃない!? あんな可愛い子どこで拾って来たの!?」
「あーもううるせえ。つーか、拾ったんじゃなくて……いや、拾わされた、みたいな……」
名案でしょ? とばかりに胸を張ってきたあの頃の姫を指揮は忘れない。
「拾わされた? え? ホントに? マジで? え? どーせー? どーてー?」
「何言って……」
一瞬遅れて、自分が何を言ったか気づく。
しかし、それは表情に出さない。少し思考を回した所、ブラフだ! と気づいた。
コッチの反応で、自分の想像が正しいか判断したいのだ。
「そういう意味じゃねえよ。拾わされたっていうのは、ホラ。子犬のことだよ」
「子犬? 何話題逸らしてんのよ」
不満げな声に指揮は、淡々と答える。
「逸らしてねえよ。アイツが寒空の下、泣きながら子犬を捨てようとしてたから俺が拾ってやったんだよ。そしたら、仲いい友達になって……」
(ヤバイヤバイ! 早く何とか逸らさないと女の子と同居なんて停学扱だって!!!)
「仲いいだけの友達が一緒に登校する?」
「朝と夕方は一緒に散歩する約束なんだよ。コレでいいだろ?」
もう、この話題はお仕舞いとばかりに、横に居たゲームを真剣にプレイしていた友達に何気ない話題を振る。