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プロポーズ……?

 今日も今日とて、学校である。

 指揮と姫は米と昨日の煮物を食べていた。

「何つーか……学校に行くのが、不自然に感じるよなあ……」

「なら家にずっと居れば良いのに」

 と、眠たそうに瞳を擦りながら言う姫。

「あーそれはまずい」

「何でよ?」

「んー。ほら、命が奪われるか否かって時に馬鹿かって思われるかもしんねえけど、単位落としたら……」

 冬休みまでにずっと休んでも単位は取れるが、やはり『休む』という事に対し罪悪感がある。

 最も、鈴野に会うのが学校に通う一番の理由なのだが。

 いつ狙われかもわからないのだ。

 一応確認をしておいた方が、安心できる。

 姫は指揮の方を向いて、首を振った。

「別に、馬鹿なんて思わないわよ。高校くらい卒業しなきゃ、今の時代、就職なんて出来ないだろうしね。私は退学しちゃったし、親も居ないからアレ・・だけど」

 それは、自虐かた来たものではなかったし、悲壮感が漂っていた訳もなかった。

『ついで』に話したような感覚。

 それが、指揮の心に鉤爪のように突き刺さって抜けない。

 何といっていいか分からず、茶碗を持って米を食べた。視界の端で姫の姿が映った。

 華奢で、無力そうに見える少女が居る。

 多分、色々な経験を積んできた筈だ。

 親に裏切られ、居場所がなくなって、十字団に復讐なんて考えて――。

 何となく釈然としない気分が胸中に靄のように溶け込む。

 十字団に決着をつけたあと、金もないしどこにも住めないのに、追い出すようなことは出来ない。

 ……というか嫌なのだ。

「なあ」

 指揮は言った。

 多分、大丈夫……だと思う。指揮は不安を覚えながら思う。

 親からの仕送りでやり繰り出来るし、高校卒業したら働けばいいし。

「何?」

 姫は指揮の普段とは違う声音に訝しげに言う。

「十字団との戦いがどんな形で終わってもさ。ずっとココに居ねえか?」

「は?」

 いきなり過ぎる展開に、目を点にする姫。

「えーと、何? それは、プロポーズ?」

 姫は目を宙に泳がせ、軽口を叩く。

「いや、別にそういう重々しいもんじゃないけど……」

 ないけどなんなのよおおおおおおおおおおぉぉぉ!! 指揮の煮え切らない態度に、混乱する。

(ちょっと待って。嘘? ホントに?)

 居心地は確かに悪くはない。

 悪くはないのだが……。

 何となく、簡単に頷けない。

 プロポーズ、的なものだとしたら?

 流石に告白もまだで、プロポーズはないでしょ、多分……と思いながらもその一歩手前ならあり得るかもしれない。

 そう思うと、頷けないのだった。

「なあ、顔が赤いけど……赤面症?」

「うっさいよ! 黙ってて! っていうか、本気? 私を一生一緒に……?」

 へ? と指揮は思わず、口に出す。

「何言ってんの? いや、まあ一生……? ああ。そうか……そういう場合も考えられるよなあ……」

 やっぱり軽々しく言っちゃいけないなあ、と指揮は姫を見ながら思う。

 仮に、指揮の恋人が出来た場合、どうしようもなくなってしまう。

 本当に、あり得ない事にソレを許容してくれる恋人が出来たとしても、『結婚』は絶対に無理だろう。

 まあ、恋人どころか、好きな人がこれまでもこれからも現れるとは思えないが……。

 少し冷静に未来を見て、指揮は落胆する。

「まあ、一生でも多分大丈夫だと思う。それまでに姫だって好きな人くらい出来ると思うけど」

 指揮の言葉に、スッとスイッチを入れたように冷静になった姫が言う。

「……何? 私の好きな人?」

「え? 何? おかしなこと言った? 別に姫が好きな人が一生できないって言うなら、まあ多分、一緒に住めると思う。バイトくらいして欲しいけど」

「……それは、私を哀れんで、ってこと?」

 姫の責めるような声音に指揮は慌てて首を振る。

「違う違う!! そうじゃなくて……あーえ、と」

 上手く言葉が見つからず脳内の書棚を引っくり返し、一つずつ漁っていく。

 数秒悩んで、歯切れ悪く言った。

「哀れんで、とかじゃなくて……俺が姫を、何とかしたいなって……そう思って。いや、上手くは言えないんだけど」

 指揮は恥ずかしそうに、言って茶碗と皿を流しの方に置きに行く。

「……?」

 姫は理解が出来ず、首を振った。

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