表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/93

ココア

 ココアを口に流し込む。

 甘ったるい液体が全身を駆け巡って、緊張を解してくれる様だ。

 濡れた服は、紙袋に入れ、指揮の足元に置いてある。

 代わりに、警察署でくれた『信号を守ろう!!』と書いているオリジナルの革ジャンと、少し大きめの何やら英文が尻から裾まで書いてあるジーパンを着ていた。

「どんなセンスだ」

 警察官から聞いた話だと、ダイエット目的で歩いてるあの、おばさん犬コンビが指揮と爆弾魔を発見し通報したらしい。

 ありがたい事だ。

 爆弾魔は、あの銃弾で死んでしまった。

 指揮が襲われようとしているので「思わず発砲してしまった」そう言っていた。

 指揮としては、助かったわけだが、何となく釈然としない。

 そして、警察署の指揮への対応は爆弾魔が死んだことが関係しているのか、忙しいのか、社交辞令じみた感謝を警官から受け、服とココアを奢ってくれただけに止まった。

「取調べとか、いいのかなあ?」

 おばさんが代わりに受けてくれるらしいが、いいのだろうか?

 超能力を見せてからというものツキが抜け落ちているかのように、運が悪い。

 正直、取調べがないという小さな幸運がないとやっていけない。

「何か、ショックが大きいからどうのこうの言ってたような……」

 余り、丁寧に説明はされなかった。

「まあ姫も気になるし……」

 結果オーライというヤツだ。


◆◆◆◆◆◆◆


「おーい? 姫ー? ……お姫様? あれ? 姫様?」

 あれ? と指揮は首を傾げた。

「姫が居ない?」

 部屋は夕方に差し迫っているので、寂しげなオレンジ色で満たされている。

 姫の姿がない。

「やっぱり、あの時何かあったのか?」

 あ、と当たり前の事に気づき、真下――玄関を見る。

 オレンジのストライプが入った靴があった。

「って事は……押入れか」

 指揮は、ドロドロに汚れた元は白の靴を手を使わずに脱ぎ、靴下を洗面台に放り込む。

 そして、指揮は押入れに手をかけ、開いた。

「おーい姫。開けるぞ」

「まって……!!」

 あ、指揮は思わず固まった。

 下着姿の姫が手を、ぶんぶん振り回して視界を遮ろうとするが、掌ごときで視界は完全に遮られない。

 真っ白で、綺麗な肌が指揮の視力を奪いそうになる。

 胸は、意外にもあった。

 少なくとも、純白のブラジャーを着けるくらいには、だ。

 そして、体勢が少しおかしかった。

 と言うよりも、狭い場所で無理やり着替えているので、グラビアもかくやというお色気ポーズをしている。

 指揮の方に手を伸ばし、視界を遮ろうとしているので、自然、身体は指揮の方へと向き色々な部分が見えてしまっている。

 白のパンツから、伸びている健康的な長い脚やくびれ、そして少し小さいが胸の谷間など。

 ココが砂浜で、水着姿ならグラビアとして普通に通用する。

 姫が、震えた声で言う。

「わ、私は、アンタが帰ってくるかもしれないからって、こんな狭い――狭い、ところで……」

「あー」

 間延びした声を出す。

 音を出し続けている間は、何もされないのではないかという期待があった。

 そのまま、押入れのドアをすっと閉めようとしたその時、姫の怒りが最頂点に達したのか顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「いつまで見てんのよおおおおおお!!」

「うわあ!!?」

 顔面に蹴りが減り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ