覚悟!
冷静に、分析しろ。
息を大きく、吸い、吐く。
敵を見る。
敵の攻撃を思い出す。
自分の対応を思い出す。
爆弾魔は薄ら笑いさえ浮かべながら、土手から下ってくる。
来るな! そう叫びたい衝動を堪え、右腕を見つめた。
曲げる。
自分の能力の分析、そして相手の反応を見るためだ。
上手く行けば、あの黒髪の不良のように喚き散らし、警察へ自首してくれるかもしれない。
「……」
意識を右肘へ向ける。
肘から産まれる透明な流れを肘の関節に、押し込み、ゆっくりと曲がる、想像。初めての、試みだった。
爆弾魔の肘は不自然なロボットのような動きで曲がり続ける。
肩から垂れ下がるようになっていた腕は、肩から背中にかけて更に曲がる。
このまま曲げ続ければ二の腕の筋が切れ、更に続けると捻じ切れる、筈だ。
「テメエの能力だな?」
「ああ。腱を切るぞ」
切られたくなけりゃ、警察に……そう口まで出かかった。
爆弾魔は少し顔を顰め、左手で二の腕に触れる。
(爆発させる……?)
指揮は、思わず能力を解除していた。それ程の覚悟なんて固めちゃいなかった。無理だ。
爆弾魔は舌打ちして、覚悟するように表情を固める。
炎が破裂した。
赤が目に映る。軽く、小さな音がした。擬音語で現すならぽん、という感じ。
血肉が吹き飛んだ。
雑草に、赤い液体が大量に付着する。
白い石や、木片のような物が転がった。少し、焦げている。骨だ。
腕を、爆破した。殆ど肩まで無くなっている。
思考が完全に停止する。
目の前の光景が現実離れし過ぎて、血液が沸騰しているように感じた。
視界が急速に暗くなり、狭まる。
「……?」
爆弾魔は腕を左手で押さえながら、更に小さく爆発させた。
熱で止血をしたのだ、ピントがずれたようなぼやけ切った頭でそう気づくまで五秒の時間を要する。
くぐもった声で言う。
「意識が、吹き飛びそうだったぞ。クソが……覚悟してたとは言え、これほどの痛みだったなんてな」
ゾクッと、ドライアイスを血管に直接打ち込まれたような怖気を覚えた。
壊れてる。
「……そ、んな」
ふらつく頭で、真上を見上げた。
夕日が、目に少し眩しい。
夕日を渡るように黒い線が張られていた。電線だ。
川の上に張られている、景色を見るのに邪魔だった電線。
すっと、恐怖が引く。否、恐怖を押し隠した。
震えているだけでは殺されてしまう。
今ので、コイツの能力の詳細がわかった。
自分の持つ、能力の役立て方も。
「やるしか、ないよなあ……」
穏やかに、呟く。
内心はビビりまくっている。
嫌だ。
生きるか、死ぬかの作戦なんかしたくない。
だけど。
コレからの犠牲者を増やさない為にも、コレまでの犠牲者の為にも、やるしかない。
タイミングを見誤れば、死ぬ。
タイミングを掴めれば勝てる。
「来いよ。俺を、捕まえてみろ!!」