第5話 誕生秘話
敵を掃討して本部に戻ると、どういうわけか、本当にどうしてか、アンジェロはかなりご機嫌斜めだった。
「ミナ、てめぇ何てことしてくれたんだ」
「え?」
「いくら死神の名を冠していても、俺らは仮にも聖職者だ。死神だって仮にも神だ。なのに、ジョヴァンニを吸血鬼にするなんて、とんでもねぇことしてくれたな」
アンジェロの目にも声にも怒りがこもってる。本当に本気で怒ってる。アンジェロの言う事もわからないわけじゃない。でも、命には代えられない。
「でも、じゃぁどうしたらよかったの? あのままじゃジョヴァンニは死んじゃってたかもしれないんだよ?」
「だからって悪魔の洗礼なんかしやがって! ジョヴァンニもジョヴァンニだ! みっともなく生にしがみつきやがって!」
「なんてこと言うのよ! 死にたくないと思うのは人間なら普通じゃない!」
「俺らはただの人間じゃねぇんだよ! ヴァチカンの為に、ジュリオ様の為に命捨てるって誓った人間なんだよ! よりによってお前が吸血鬼化するなんて、俺は許せねぇ!」
「そりゃ、どうせならジュリオさんにしてもらった方がよかったかもしれないけど、あの状況じゃそんな事言ってられなかったじゃない。私、私はヴァチカンなんかより、神様なんかより、ジュリオさんとの誓いなんかよりもジョヴァンニの命の方が大事だもん!」
「テメェ・・・! マジ許せねぇ」
私の言葉はアンジェロの逆鱗に触れたようで、アンジェロは私に銃口を向けた。
「お前みてぇなのが隊長なんて、災厄でしかない。消えろ」
アンジェロがトリガーに指をかけた瞬間、ジョヴァンニとクラウディオが私の前に回り込んだ。
「待って! 副長、待ってよ!」
「副長、やめろ。ミナちゃんはただジョヴァンニを助けたかっただけだ」
「黙れ、どけ」
イラついた様子でアンジェロがどくように促しても、二人はその場を動かない。
「ミナは俺を助けてくれたんだよ。俺、後悔してないよ。俺の力だって役に立つよ。お願いだよ副長、許してよ」
「どの道ああする以外なかったって副長だってわかるだろ? ミナちゃん以外にジョヴァンニを助けてやれるやつはいなかったんだ。それに俺たちだって・・・」
「黙れ! テメェらも殺されてぇのか! どきやがれ!」
「どかない! ミナは俺の命の恩人なんだ! ミナを殺すなら俺を殺してからにしろ!」
「テメェ・・・クソ、冗談じゃねぇぞ、クソ、ふざけんなよ! クソッ!」
叫ぶようにそう言ったアンジェロは持っていた銃を床に叩きつけて、そのままソファにドカッと座った。
「胸くそわりぃ。テメェら全員でていけ」
「アンジェロ、ごめんね・・・でも・・・」
「うるせぇんだよ! さっさと出ていけ!」
「・・・ごめんね」
本当に怒り心頭で私を睨みつけるアンジェロに謝って、ジョヴァンニとクラウディオに背中を押される様にして部屋を出た。
部屋を出て廊下を歩いていると、ジョヴァンニが肩をぽんと叩いた。
「ミナ、副長はあぁ言ってたけど、俺は後悔してないし、感謝してるよ」
「ありがとう。私だってジョヴァンニが生きててくれたことが嬉しいよ。でも、アンジェロがあんなに怒るなんて、私のしたことは間違いだったのかな。でも、それ以外に方法なんてなかったし、間違ってるなんて思いたくないよ」
「俺は間違ってなんかいないって思いたいよ。俺だって死にたくなかったんだもん。きっと副長だってわかってくれるよ」
「つーか、わかってると思うぞ。でも、副長は誰よりもジュリオ様を崇拝してるし、仕事に対するプライドも高い。だからあれだけ怒ってる。でも、ジョヴァンニが生きてること自体は、ちゃんと嬉しいだろうし、ミナちゃんに感謝してるはずだよ」
「そう、かな。そうだといいな」
プライド、か。前にジュリオさんが言ってた。わざわざヴァチカンで信心するような奴はどこか壊れてる狂信者なのだと。きっとその狂信こそがプライドなんだろう。だとすると、私はジョヴァンニに棄教を迫った異教徒のようなものだ。
「剣かコーランか」
私は、かつて死を選ぶか、イスラム教への改宗を選ぶか迫ったオスマン帝国よりもヒドイかもしれない。私は神を狂信する人に、死か背徳かを選ばせてしまったんだから。
なるほど、確かにジョヴァンニの言う通り悪魔の囁きだな。プライドと死を天秤にかけて、あの短い時間でジョヴァンニはどれほど葛藤したんだろう。彼にも、申し訳ない事をしてしまった。彼のこれまでの人生を捨てさせてしまった。その償いは、ちゃんと私が責任を持たなきゃいけない。ジョヴァンニの心を守ってあげないといけない。それがマスターの責任。彼を吸血鬼として、神への反逆の徒として蘇生させた私の責任だ。
ジョヴァンニに辛い選択をさせてしまった。私はわかってて選ばせた。あの状況では誰だって生を選ぶってわかってて選ばせた。その事にアンジェロは気付いたのかもしれない。
「みっともなく生にしがみつきやがって」
アンジェロはそう言ったけど、私にはそれが悪い事だとは思えない。だけど、狂信とジュリオさんとの誓い。それはアンジェロにとっては自分の命よりも大事なのかもしれない。もしあれがアンジェロだったら、彼は死を選んでいたんだろうか。誓いを立てた自分に対するプライドを守る為に。
死だけは誰にでも平等にやってくるけど、命の重さは平等じゃない。テロリストは私にとっては重くはない、知らない人の命は重くない、重くなくなった。でも、身近な人の命はとても重い。自分の命はもっと重い。誓いや信心の方が命よりも重いなんて、私にはわからないよ。
そういえば、アルカードさんに吸血鬼にされた時に言われた。
「私の為に生きて、私の為に死ね」
何度思い返しても傲岸不遜過ぎる。尊大すぎる。神レベルの関白宣言だ。アルカードさんの為に生きる事は出来る。むしろ余裕って言うか、私からお願いしたいくらいだ。でも、死ねるかなぁ・・・微妙。ていうか、これも契約に含まれてんのかな。それがあっての眷属契約なのかな。だとしたらやっぱ私騙されたな。クーリングオフできないかなぁ。無理か。
でも、アンジェロは死んじゃうんだろうな、ジュリオさんの為に。それほどの信頼、あるいは盲信、あるいは依存、あるいは愛。
私は身近な人は誰でも大事だけど、自分が思っている以上に薄情な人間なのかもしれない。クリシュナは私を守って私の為に死んだのに、私は誰かの為に死ねる自信はない。美しく死を飾り付けるつもりはない。死を美化するつもりはない。だけど、死んだ方がいいのかなぁ。
いやいや、落ち着け。いいわけないじゃん。そうだよ、いいわけないんだ。誰かが自分の為に死んだからって、自分が誰かの為に死ぬなんておかしい。誓いを守るために死ぬなんて違う気がする。
私の背負う亡霊がきっと私を死なせはしない、死ぬ事を許さない。今までたくさんの屍を超えてきて、誰かに守られてきた命をおいそれと差し出しちゃいけない。生きているだけで生かされてるんだ、生きることを望む人がいるうちは死んではいけない。
やっぱり私は間違ってなんかいない。
ジョヴァンニに生きててほしかった。彼も生きようとした。だから生かした。他人と自分との間に発生する生の願望は、誓いなんかよりもずっとずっと大事だ。生きていてほしい、互いに交わされるその願いは、誓いなんかよりもずっと大事な、命の契約。私は、間違ってない。それに、アンジェロは決定的に間違ってる部分があるのを気付いてない。
廊下を歩く足を止めて、回れ右をしてアンジェロの部屋に歩き出す私にみんなも足を止めた。
「ミナちゃん、どうしたの?」
「もう一度、アンジェロと話してくる」
「でも、今は何を言っても無駄だと思うよ」
「でも私は間違ってない。アンジェロの気持ちはわかるけど、アンジェロが間違ってる。それを正しに行くの」
「でも・・・」
「いいの、今わかってくれなくても、私の話を聞いて後から考え直してくれたら、それでいいから」
不安げに見送るみんなに背を向けて、アンジェロの部屋に向かった。
いつも通りノックもしないで部屋に入ると、アンジェロはソファに寝そべって煙草を吹かしていた。
「なんだよ、でてけっつったろ」
「命令の実行力は私の方が上だよ。私は話がしたいの」
「俺はお前と話したくない」
アンジェロは相変わらず姿勢も直そうとしないし、目も合わせてくれない。やっぱり怒ってるみたいだし、下手したら嫌われたのかもしれない。でも、それでもわかってほしい。
アンジェロが乗っけていた足をぐいっとどかして勝手に隣に座ると、凄く嫌そうな顔をされた。
「じゃぁ、聞いてくれるだけでいい」
「なんなのお前、うぜぇ」
「うざくていいから、聞いてよ」
とうとうシカトだ。でも耳がついている以上は勝手に聞こえるはずだ。アンジェロに聞く気がなくても勝手に話すことにした。
「アンジェロ、勝手なことしてごめんね。本当はアンジェロもジョヴァンニに生きててほしかったってわかってるよ。できれば人間のまま生きててほしかったって。それなのに吸血鬼にしてごめんね。私がしちゃってごめんね。
「でも、あの状況じゃそれ以外にジョヴァンニを生かす術はなかったんだよ。それはアンジェロもわかってると思うけど。アンジェロが許せないのはそんな事じゃないんだよね。ヴァチカンと神様とジュリオさんに立てた誓いを破らせた私を許せないんだよね。ごめんね」
「あのね、誓いも大事だと思うよ。でも、ジョヴァンニは仲間だから、大事なの。死んじゃうくらいなら、たとえどんな姿になっても生きていてほしいと思ったの。私はジョヴァンニに生きててほしいと思ったし、ジョヴァンニも生きたいって言ったんだよ。きっと私とジョヴァンニが逆でもそうだと思う。それは誓いよりも大事な、人同士の命の約束なんだよ。
「誰かが生きてって願ってる内は死んじゃだめなんだよ。死んじゃったら約束を破ったことになっちゃうんだよ」
「もしあの時アンジェロなら死を選んでたかもしれないけど、でもそれじゃダメなんだよ。ジュリオさんと約束したなら尚更ダメなんだよ。誰かの為に死ぬくらいなら、誰かのために生きた方がずっとずっといいよ。その方が大事だよ。いくら命を捨てるって誓っても、本当に死んじゃったら裏切りになっちゃうよ。ずっと生きていれたら、ずっとその人の為になるよ。役に立てるよ」
「人が生きたいと思うのは、大事な人に生きていてほしいと願うのは、人間も吸血鬼も一緒だよ。大事な人が生きていてくれるなら、誓約を守ることよりもずっとずっと大事で嬉しいよ。ジョヴァンニが吸血鬼になってしまって、聖職者だし、それを快く思わないのはわかるよ。だけど、それでも生きててほしかったの。人間のまま死んでしまうくらいなら、吸血鬼として、どんな姿になっても生きてて欲しいと思った。これからジョヴァンニも辛い思いをすることがあるかもしれないけど、マスターとしての責任は果たすから、だから・・・」
「わかった。つーかお前に言われなくてもわかってっけど」
黙っていたアンジェロは急に起き上がって煙草を消して、すぐにまた新しく火をつける。
「別に俺はジョヴァンニが死んだ方が良かったなんて思ったわけじゃねぇし、吸血鬼になったからってジュリオ様に背徳したわけじゃねぇってのはわかってる。ただ、お前の迫った選択が、あまりにも残酷だと思っただけだ」
「それは私もわかってる。だからちゃんと責任はとるよ。ジョヴァンニが苦しまないように、ちゃんとマスターとしての責任は果たすから」
「俺に誓え。アイツにはもう神はいなくなった。神に見捨てられた存在になった。祈りも懺悔も捧げる相手はいない。だからお前がアイツの祈りも懺悔も願いも苦しみも呪いも何もかもすべて引き受けると、俺に誓え」
「うん、誓う。約束する。絶対にジョヴァンニは私が守るから」
アンジェロの目を真っ直ぐ見てそう言うと、ならいい、とアンジェロは視線を外してソファに背中を預けた。
「ねぇ、アンジェロ、許してくれる? 勝手な事した事まだ怒ってる?」
「しょうがねぇから許してやる。つーかそうせざるを得ねぇだろ。でも、約束破ったらソッコーぶっ殺すからな」
「うん、その時は大人しく殺される。でも絶対破らないよ、約束する。許してくれてありがとう。アンジェロはジョヴァンニが大好きなんだね」
「別に」
「さっきの聞いたらジョヴァンニ喜ぶよ」
「んなことより、問題はこれからだ」
そう言うとアンジェロは急に立ち上がって、ドアに向かった。アンジェロがドアを開けると、みんながその勢いにつられて中に雪崩れ込んできた。
「みんな、いたの? ていうか聞いてたの?」
「あ、あはははは、なんか心配で・・・」
「それよりお前らも話に加われ。ジョヴァンニの今後について対策を考えなきゃいけねぇからな」
みんなで集まると、アンジェロがその場の進行を始めた。
「とりあえず、ジョヴァンニの今後の生活指導はミナに一貫して任せるからな」
「うん、そうだね。色々注意点とかもあるし」
「そっかぁ、そう言えば俺今日からご飯血液なんじゃん・・・なんかヤだなぁ」
「・・・そのうち慣れるよ」
がっくりと肩を落とすジョヴァンニを見ていると、初期の頃の自分を思い出して何となく懐かしい。そう言えば私も極端に拒否ってたなぁ・・・懐かしい。
「問題は、ジュリオ様にこの事を報告するべきか否かだ」
「あ、そっか。そうだよね。って、普通に報告した方がいいんじゃないの?」
「バカ、お前良く考えても見ろ。そもそもお前が俺らの意見を無視して突っ込んだせいで招いた事態だ。今のこの現状、ジョヴァンニが死にかけて吸血鬼化したのはお前のせいだ」
「・・・そうですね、すいません」
「多分ジュリオ様は相当怒るぞ。下手したらキレるぞ。お前は隊長解任どころか完全に戦力外通告だな」
「確かに・・・」
「そうなると、困るのはジョヴァンニと俺らだ」
「どうして? 元に戻るだけじゃない」
「そうもいかねぇだろ。今後締め上げを食らうのは俺らだ。もし教皇の耳にでも入ったら死神解体は免れねぇし、下手すりゃジョヴァンニは処刑される」
「えー!? そんな!」
「教皇は絶滅主義者だから絶対そうする。で、最悪の場合ごちゃごちゃ言い訳つけられてジュリオ様にも飛び火する」
「それヤバいじゃん! じゃぁ黙っとこうよ!」
満場一致で秘密にしようってなってるのに、アンジェロは渋い顔をしてみせる。
「最初はそれでいいかもしれねぇけど、せいぜいもって10年だろ。それ以上は隠し通せねぇぞ」
「なんで?」
「なんで!? お前本当バカだな! 吸血鬼なら老けねぇだろうが! 不審に思うに決まってんだろ!」
「あ、そっか・・・」
「ハァ、ったく。しかもそれだけじゃねぇだろ。生活習慣の違い、食糧の問題、諸々懸念すべき事項を挙げたらキリがねぇ。ジュリオ様だけなら極秘裏にことを進めてくれるだろう。でも、屋敷の他の奴らや教皇庁の奴らまで欺くのは到底不可能だ」
アンジェロの言葉にみんな、うーん、と考え込んでしまった。
そこまで考えてなかったなぁ。あの時は必死で先の事まで考える余裕なかったしなぁ。ていうか余裕あっても考えなかったかも。
「んーじゃぁ、いっそのことジョヴァンニ脱退しちゃうとか?」
「10年経ったら死んだ風に見せかけるとか?」
「なら別に今でもよくね?」
「オイオイ、今からっつーか10年後もだけど、失踪した後ジョヴァンニはどーすんだよ。せめてミナちゃんと一緒じゃなきゃダメじゃねぇか」
「だよなぁ、つーか同居解消してジョヴァンニが消えたと見せかけてミナちゃん側に着くくらいしねぇと隠し通せねぇだろ」
「イヤイヤ、それはムリなんじゃねぇの? 大体同居解消するなら隊長がどっちの嫁になるか決まらなきゃ解消されねぇじゃん」
「どっちのっつーか、この場合なら伯爵以外に選択肢ねぇだろ」
「確かに。てことで、隊長、アンタ伯爵の嫁になれ」
「えー!! ヤダ!」
「イヤイヤ待て待て! 何言ってんの!? お前らジュリオ様の味方しろよ!」
「んなこと言ったって、なぁ?」
「なぁ」
なんてこった。隊員たちは話し合いで勝手に私の嫁入り先を決めてしまった。確かにこれ以上の案は浮かばないけど、でも、でもー!
「つーかお前ら何ジュリオ様裏切ってんの!? あり得ねぇんだけど!」
当然アンジェロもお怒りだ。今回に限ってはアンジェロに味方したい。別にジュリオさんの嫁になりたいわけじゃないけど。ていうか、誰の嫁にもならないけど。
「だってさぁ、それ以外にどうしろっての?」
「そうだよ。別に本当に嫁にならなくたってさぁ、フリでいいじゃん、フリで。それに10年も先の話だしさぁ。その内好きになるかもしれないじゃん」
「えー・・・そうかなぁ。想像つかないんだけど」
「つーか俺は許さん! ミナが伯爵に嫁入りするなんて認めねぇぞ!」
「なんか副長親父みてぇだな」
「誰が親父だ! こんなアホな娘を持った覚えはねぇ! 大体ジュリオ様が気の毒すぎるだろ!」
「そこはもう、涙を呑んでいただいて」
「そうそう、ジュリオ様ならすぐにいい女捕まえるって」
「人生長いんだし恋するのは一度きりじゃねぇしな」
「もう慰めモード入ってんの!?」
私がアルカードさんに嫁入りすることは何故か満場一致で可決されてしまった。要するに、私がアルカードさんを選んで同居解消、ジョヴァンニがヴァチカンから失踪し、私の下へ、という筋書きだ。どれほど長く見ても10年先の話。周囲の雲行きが怪しくなればすぐにでも、ということらしい。
まさか、こんなネタの延長で次期旦那候補の話題が出るとは思わなかった。まさか急にアルカードさんが一位に躍り出るとも思わなかった。
「大丈夫だって! 別に今すぐってわけじゃないんだし!」
「なんとかなるって! これは俺たちだけの秘密な!」
「いやーめでてーな。結婚式には呼んでよ」
「ミナちゃんのウェディングドレス姿は可愛いだろうなぁ」
なぜか隊員たちに口々に励まされ、祝言を述べられる。
「大丈夫だって! ジュリオ様も自殺級ショックまではいかないから!」
「なんとかなるって! 見たとおりジュリオ様はいい人でカッコいいじゃん」
「まぁ、今回はご縁がなかったつーことで。俺らで合コンでも開いてやろうぜ」
「ぶっちゃけジュリオ様の恋よりジョヴァンニの処遇の方が重要だしな」
なぜか隊員たちは口々にアンジェロに言い訳とジュリオさんへの慰めを始める。
呆然とする私とアンジェロを無視して、みんなは言いたい放題言って部屋から出て行ってしまった。
「え、ウソ。あ、あれで決定しちゃったの?」
「あり得ねぇ・・・」