表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9



 聖女の力を失ったリラが戻る家はなく、

ギムレット伯爵家に居場所はないのです…


聖女の務めを終えたというのも……建前…


…事実は態の良いお払い箱です。


というのも…




光魔法から聖魔法と、神聖魔法まで極めたリラ。



「癒しの光よ。ここに、ヒール」 


……プスン


「慈愛の御手よ、回復リカバリー


……プス


「聖なる大地の息吹よ。言祝ぎを。浄化ピュリフィケーション


……プー


「天に満つる聖なる光、収束せよ。蘇生エキストラヒール


……ツー …



 慈愛の神アエス神に感謝を捧げても、白い光がふっと沸き立ち

輝きがじわじわ増していくかと思うと、

プスン…と 消える。



優れたリラが使う必要もなかった星の聖杖を媒介にしても何も起こらない。


通常ならば、聖杖に力を流せば長い銀の髪が大気にふわりと揺れ、

聖女の服ははためき、神々しい光が幾重の後輪を描き眩く聖女を包み

威力を増幅していきます。


聖杖からは霧雨のように大気を柔らかい光がキラキラと扇状に広がり、

範囲内にいる全ての者を癒したと思えば、

天から聖環を下ろし、あまねくものに浄化の奇跡をおこすのです。




明けの明星、宵の明星、癒しの神アエス様の光を浴び沐浴。

神殿での神への祈りを捧げ、数々の教会へ出向していましたが、

今は聖女の奇跡で、病に苦しむ者を治癒することも、

肉体の欠損を回復することも、瘴気溜りを浄化することも…


神事において八神に捧げる祈りを奏でることも最早できない。


誰しもがうっとりと聞き惚れたあの子守歌のような美しい調べは

もう二度と聞くことはできないのでしょう…



リラは聖女としての力を全て失ってしまったのです。



 数々の功績によって、表向きは療養という形で

神殿から退くことになりましたが、事実は態の良いお払い箱。

報われることもなく…

神殿に使い古され捨てられたのです…



神殿長からの言渡しに、リラアンニュの顔は翳り、眼は虚ろ。

何を応えるでもなく、首を項垂れ跪いていました。



凛とした姿からは崇高な神秘さを纏い、微笑みは春の柔らかい風を運ぶ。

そう言われた、あの聖女の面影は露とも感じられません。

他の追従を許さなかった随一の癒しの力を持ったリラ。




力を失くした聖女の変貌に、聖女付き側使いという役目であったにも

旅に同行することもなく、何も世話もしなかった神官修道士、修道女。

彼等は己の失態を隠し神殿長に報告。


儀式でしか会うこともない神殿長はすぐさま修道院魔法部に要請。

その道に特化した修道士達が鑑定アナライズ透視クレアボヤンス看破ディテクト、光のバリアで検査を施したその結果。

魔力量と魔力回路に異常がみつけたのでございます。


それを受け、子供の枯渇症を引き起こす魔力暴発が頻発していた折、

修道院魔道具部の魔術師、魔道技士らが総力をあげての研究で、昨今

開発されたばかりの異常を早期発見する魔道走査具スキャンなる

ものを使い、診察した結果、病名が判明したのでございます。



『 内心的外傷による魔力枯渇症 』



 必要以上の魔力は休みなく使えば、魂を支える内心、精神が傷を…

スキャンで内心、精神系も分かるのでしょうか!?…


…まあ、細かいことは良いでしょう。

魔法が何でもアリなら、魔道具も何でもアリ、ですわね?



 判明はした。なれど、事は重大。

魔力不足症なら十分な休養で回復の見込みは望めますが、

枯渇症となれば絶望的なのです。


『魔力無し』になってしまうのですから…


幸い命を落とすまでには至らない。

ゆっくりと心の傷を癒し、身体を安め養生すれば余命は繋げる。

しかし、命を削った力を出し続けたことで、早逝は免れない… 



リラは魔法がつかえなくなるだけではなく…



 魔素の流れるこの世界、魔法を使えない者も多くいます。

私もその一人なのでございます。


この世界の者は誰でも体内に魔力回路というものが張り巡らされ

魔力はこの世界の生きる命として皆がもっております。

しかし、魔力があっても魔法として精製できない者も。特に平民多く。


魔法が使える者は自然と発現する力の強い子供もいます。

そういう子供は血流を大切にする貴族の子に多くなります。


発現すれば滅多とでない市井には神殿が修道士を派遣。

貴族は魔法士を雇用し教えますが、大方は『六歳の儀』の祝福で

芽生えるものです。


『体内で魔素を魔力回路に循環させ魔能をもって魔法に変換させる』


これが一般的な魔法の抽出法。

魔力回路はあっても変換させる魔能がない者には魔法が使えない。


魔力回路とは魔力が躰中に指先にまで循環する為の魔力の路。

空気に漂う魔素を吸収しこの魔法回路に循環させることによって

魔素を魔力に変換させ魔力を放つ仕組みが構築されています。


魔力回路は個人によって数は其々ですが、優れた魔法使いになるほど

巧みに他の回路と接合部で交わり回路間で情報共有し、練り上げられ

複合拡大混成されていくことにより数を増やし続けるものもあれば、

精密な魔力回路を形成。

太く大きくなれば量も莫大、威力強化とになるのです。



魔能とは精神活動力によって培われる。

持って生まれた能力といわれています。

この持って生まれた火・地・水・風・光・闇、又は錬金と、

魔力を魔法に変換させるのです。


一つの魔能だけを持つこともあれば数個、

極めれば、混成、上位互換と魔能は派生し、新たな魔法の覚醒を

呼び起こします。

魔能の媒介によって魔力の質と量の融合とをはたし魔法を創り出すのです。



 これら、魔能とは異なり、

聖女となる躰には、新たな光の魔力回路が構築されます。

そして、光の最上位である神聖なる力の発現には

神々の恩寵、精霊の加護に呼応する聖能が必要であり不可欠なのです。


その重要な聖能の源は魂、原初の白い輝きとされています。

聖女であるべき身体にはアエス神の御心に魂が呼応させるのでしょうか。

何よりも気高く慈愛の心をもつ聖能が必要なのでございます。


そこから繰り出される神聖魔法。


神聖魔法と一言に言っても防御攻撃癒し回復補助と千差万別。

回路が多くなれば、

その分、聖能を酷使し消費し命を削ってしまうのです。



肉体に傷がつけば、誰でも眼で見ることができ直ぐに対処もできますが

内なる魂が傷ついても誰も眼で見ることはできない。

不幸なことに本人さえも分からない。


大丈夫、まだ動ける、まだ大丈夫と酷使していれば気がついたときは、

プツンと糸が切れたように、身体が動かなくなっているのです。

魂が澱み傷つき手遅れとなってしまうのです。


聖女の力の源をなす原初の輝きは穢れなき真白な魂からです。

魂は強くもありますが、一旦傷つくと儚く脆いものなのです。


このような大事に至るまで誰も気がつかなかった…

姉である私も自分自身の迂闊さに、心が張り裂ける想いでございます。



 リラは、緊張の中に絶えず身を置き、命を削られるほど疲れ、

安らぎがなかったのでしょう…




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ