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 そうこうしてそうこうしていると三年が経ち、

私は十歳、リラは六歳になりました。



 

 子供の命は儚く、六歳までは戸籍がありません。

春の初めの月、その年六歳になる子供たちは親に連れられ、

教会を訪れ『祝福の儀』を受けるのです。

教会は六歳となった子供に祝福をあたえ戸籍に入れるのです。


 国の人口把握と神殿の人頭税収の関係でしょう。

司祭の祝福を受ければ、「才』が芽生える子供が多く出るのです。

『才』はギフトと呼ばれています。

民は税が増えるのを懸念するより、子供へのギフトに期待が増さり、

皆、挙って子供達を教会に連れて行きます。


 私の六歳の儀。

私の番が回ってくると、私の手を握る母の手を強く感じました。

私も同じように強く握り返しました、

母も私も期待したのです。


しかし、『才』も何も発芽しませんでした…

その時、眩暈を感じただけでしたの。

ショックではなく。




『六歳の儀』がやってきました。


 ウォッカもリラと同じ六歳。

父とマルガリータとウォッカは馬車に乗り込んでいました。

馬車のなかで、ウォッカは何かを抗議するように父に言っていました。


私は歩いて、リラを教会に連れて行くことにしていますが…

戸籍となると、どうしていいのか分からず…

思わず、薄情な父を睨みつけてしまいました。


リラは聡い子です。私が困っているのが分かったのでしょう。

私の手をぎゅっと掴んでくれました。


「そうね。なんとかなるわね」

「うん」


リラの明るい笑顔が勇気をくれました。


 リラには魔法が使えます。

小さな傷もリラが手を翳しただけで消えまいた。

きっと、大丈夫。

私は前を向きました。

その時、父と眼が合い慌てました。


「バレンシア、その子を連れ馬車にのりなさい」


何を思ったのか父は私とリラに馬車に乗るようにいいました。

ウォッカが…そう思いました。

この時、私は初めて父の声を聴いた気がしました。

私は今まで、話しかけられたことも無かったのです。


今更、どうでもいいことです。

十二歳になれば文官見習いの試験があります。

それに受かれば、リアとこの屋敷を出るつもりでしたから。


私はリラを連れ、直ぐに馬車に乗り込みました。

ウォッカはリラが座るのに席を空けると、安心したようにリラを見て

いました。マルガリータは不満そうにしておりましたわ。



 教会の中では、六歳になった子供達は順に並びます。

見慣れた教会が、いつもと違う荘厳さを感じます。

こんなに天井が高かったのかと、改めて見上げました。

ステンドグラスから差す虹の陽光に眼を細めました。


 神々の像の前には飾られた祭壇。

この世界は八神が順を決め世界を見守ると言われています。


神々を祀る祭壇を後ろにしたミトラを被る司祭の前に進みで、

子供達は一人一人膝をつき首を垂れるのです。

司祭は権杖クロジャーを六歳になる子供の頭上にとめ、

祝福を授けます。


『私のようにならないで』


リラは大丈夫と思っていても心配になり、

リラの番になると、私は胸に手を当て祈りました。

司祭の祝福にリラの身体が神々しい白い光に大きく包まれ輝いたのです。


「こ、これは、聖女の輝き!」


 司祭が告げました。

リラは聖女としての『才』に目覚めたのでございます。


この国には光魔法を使えるのは極稀な存在。聖魔法となれば国に数人。

神聖魔法をつかえる聖女は記憶に数える者ほどもいない。

聖女が現れれば修行を積むため、神殿修道院に送られるのが申し送りです。


神官を多く輩出してきたギムレット伯爵家。

父は分かっていたのでしょうか?

父はリラを正式に養女にし、神殿に差し出したのでございます。



「くっ!」


私の横でウォッカが声を押さえ、顔を歪めていたのを思い出します…

リラたち女の子の前は男の子たちでした。



 ウォッカの身体からは、

幾重の黄金の光と紫黒の闇の靄が発したのです。

まるで、二つの光が対抗し凌ぎ合うようでした。

そんな光を出したのはウォッカだけです。


司祭が驚き父を見て、ぱくぱくと口を戦慄かせました。

何か言おうとしましたが、いきなりバタンと司祭が倒れたのです。


脱兎の如くかけよった父が治癒魔法をかけた?

私は一瞬、頭がぼやけ眩暈を憶えました。

教会にいる人達も意識がそがれたように朦朧とした表情。

焦点が合わない眼をむけていました。


この感覚、この眩暈のような感覚が前にもあったような…



 司祭がすくっと立ち上がりました。

治癒魔法?がきいたのか司祭は直ぐに意識を取り戻したようですが、

司祭の目もまだ焦点が決まらず虚ろです。


それは良いのですが…


司祭は何ごともなかったように、次の子供に祝福を与えました。


「おおっ!」


次の子供は少し光り、親御さんでしょうか、歓声をあげました。

教会にいる人達は全員、そちらに注視するのです。

ウォッカには眼もくれず…


…父が治癒魔法を使えることも驚きでしたが、それよりも…

教会にいた大勢の大人も子供も、眩い黄金の光と闇の靄が混ざり

ぶつかり合いをしていたのを見なかった!?


その光の渦にいたウォッカに意識がむかないのは何故?

小さな光が発しただけで、皆歓声をあげ大騒ぎしているというのに…


ウォッカのあの幾重にも波状を出し凌ぎ合う光に誰も反応しないのが、

気味が悪く不思議でした。

私は、得体が知れない違和感を覚えました。



それを知る、きっかけを私は何か掴んでいるようなのに…

それは何かを、思い出しそうで思い出せない…

むずがゆさを憶えました。



 ウォッカのことなら大騒ぎするマルガリータでさえ、

何事もなかったかのように、普通にしているのですから…


只、ウォッカが父を睨みつけ、父もなにやら焦っているようで…

二人の間に、なにかがおこった?



リラの眩い光には、司祭に体調の変化はありません。

いえ有頂天、嬉々としています。

喜びすぎて今にも卒倒しそうでしたが……


私が不信な思いでマルガリータを見詰めると、マルガリータは、

私を見て笑みを浮かべました。

その顔からは、邪魔者が一人いなくなると喜んでいるのがわかりました。



その日の内に、神官に馬車に乗せられたリラは神殿に…


私もその日から、ギムレット伯爵家に戻ることはなくなりました…



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