5.処刑と誓い
ルーシュの処刑です。
ふと気が付くと、ルーシュの視界は真っ暗で何も見えなかった。
ルーシュは父と母、そしてマリアを陥れる為に協力者となった貴族達と牢屋に閉じ込められ毒殺による処刑を言い渡された。抵抗も虚しく処刑当日になり、兵士が毒薬を持って牢屋の中にやってきた。死んでしまうという恐怖と絶望に震えるが、毒薬を飲まないという選択は出来なかった。意を決して飲み干すと急激な眠気に襲われた。思っていたような苦しみがなく穏やかに終われるのだと心の何処かで安堵しながら意識を失った。そして死んだと思っていたのだが、何故か視界は布か何かで目隠しをされているようで何も見えない。口も布を噛まされてくぐもった声しか出せず、椅子か何かの上に座っている状態となっていた。手足は一括りされているようで動かせなかった。
「っん、んぐぐっ…。」
「気がついたか。」
「んっ!? んんっ!!?…んがぁっ!!」
誰かの声が聞こえた瞬間、ベラドンナは背中に衝撃を受けて地面にドォンッ、と叩きつけられていた。痛みよりも何が起こったのか分からない状況に恐怖した。そして髪を乱暴に掴まれて起こされた。
「っ!?」
突如目隠しを外されると、外は夜で暗かった。所々に草が生えている地面と塀で囲まれた場所、どうやら此処は城の兵士の訓練場のようだ。塀の近くに松明が設置されていて明るく照らしている。そして辺りには国王、王妃、国王の側近達、そして何故か頭皮を露わにしている貴族達がいた。
「…少しはナタリアの痛みが分かったか?」
後ろを振り向くと、そこにはスティーブがルーシュを睨みつける姿があった。スティーブの近くに兵士がいて、髪を掴んだのはその兵士なのだろう。少し離れた場所にはナタリアとルナ子爵、そしてラビスタ公爵とマリアがいた。
「…まだまだ足りないようだな。」
スティーブがそう言うと、再びルーシュは目隠しをされた。引きずられて階段を上がるように登ったと思うと、また背中を押されて落下した。
「っ、んぐぅっ!!」
顎や腹が地面に叩きつけられる衝撃に呻くと、また再び起こされて同じ事を繰り返された。再び目隠しを外されると、ルーシュは恐怖と痛みから涙を流していた。ルーシュの目に岩と削られた木で作られた階段が見えた。高さは2メートルくらいだろうか。
「お前がナタリアにした事を体験させてやろうと思って用意したんだ。本当は階段から落としてやりたかったんだが、万が一にでも死なれたら面倒だからな。」
スティーブの冷酷な声にルーシュは身体を震わせた。
「ルーシュ・ベラドンナ、貴様の罪は改めて言う必要はないだろう。お前は毒薬による処刑の予定だったが、ラビスタ公爵令嬢の提案を受け入れて処刑方法を変更した。」
「…んっ!?」
国王の声にルーシュは唖然とした。思わずマリアを見ると、マリアは冷たい笑みを浮かべてルーシュを見ていた。マリアなんかの提案を国王が承認したなんて信じられなかった。
ガサガサと何かを準備する音が聞こえてきて後ろを振り向くと、手足を縛られて地面に転がされている両親と協力者達がいた。そしてそのすぐ側で木や枯れ葉を集めたり、太い木の柱を運ぶ兵士達が居た。
「あやつらには、貴様よりもとても強力な睡眠薬を飲ませた。まだまだ起きぬだろうし、起きたところで脳に何か後遺症が出ているかもな。」
あっさりと話す国王にルーシュは信じられないとばかりに目を見開いた。兵士達は木や枯れ葉の中心に太い木の柱を差し込んだ。戸惑うルーシュを兵士は乱暴に引き摺り、木の柱に近づいていく。
「ッ?!!…ん、んんっ~!!! んぐぅ~っ!!!」
ルーシュはこれから何をさせるのか理解し泣きながら喚く。だが抵抗出来ずに柱にロープでグルグル巻きにされて拘束された。意識のない罪人達は手首をロープで厳重に拘束すると、同じ木の柱に厳重にくくりつけられた。
「ではこれより、火炙りの刑を執行する!!!」
声高らかに国王の声が響き渡った。誰も何も言わず、ルーシュのくぐもった悲鳴だけが響く。そんな中、マリアがルーシュの正面に立った。
「ルーシュ・ベラドンナ。何故、貴女だけ意識があるのか疑問に思いませんか? 最後に教えてあげますね。貴女が、一番罪深いからです。」
マリアがそう言うと、ナタリアも歩みを進めてマリアの隣に立ってルーシュを見た。
「私を陥れた事については、全員平等な罪を受けるべきだと思います。でも貴女はスティーブ王子の愛する大切な令嬢、未来の側妃となるナタリア・ルナ子爵令嬢に直接手を掛けました…計画したのが誰であっても、直接手を出した貴女が最も罪深いと判断したからです。」
ルーシュには分からなかった。マリアにとってナタリアはよく想わない相手の筈だ。それなのにナタリアを理由にルーシュが一番罪深いと言っているのだ。そしてこの公の場で、ナタリアを側妃と公言した。スティーブとナタリアの事は周知しているが、直接言葉に出した事なんて今まで誰もいなかったのに。
「ナタリア嬢はお優しいです。本当は貴女に鞭打ちの刑も入れるべきだと思ったのですが、そこまでは望まないと慈悲をかけてくださったのです。心から感謝して下さいね。」
マリアとナタリアが仲良さそうにお互いの顔を見合わせてからそう言うと、兵士達が何かの袋を持ってやって来た。そして袋の中身をルーシュの周りに、寝転がる罪人達の上に被せるようにぶち撒けた。
「それは髪です、貴女の嘘に踊らされた罪人達の罪の証のようなモノです。」
マリアの言葉にルーシュは頭皮が露わになっている貴族達を見た。
「元凶の貴女達と共に、罪を燃やす事で償って頂こうと考えてこの刑にしました。」
マリアはにこやかに微笑んだ。ルーシュはそんなマリアを化け物でも見るかのように怯えた目で見た。全ての髪をぶち撒け終えると、兵士が火を灯した松明を2つ持ってマリアと、スティーブに手渡した。
「卒業と同時に、我が息子スティーブとラビスタ公爵令嬢の結婚式を挙げる予定だ。だがその前に、2人による誓いの儀を執り行う。」
“誓いの儀”、そんなものは聞いた事がない。婚礼前どころかそんなモノはいつ何処でやるのかも分からない。困惑する空気の中で、スティーブとマリアはお互いを見つめ合った。
「私、スティーブ・ブラスターズはマリア・ラビスタ公爵令嬢を王子妃として尊重し、より良い関係を築き協力していく事を誓います。」
「私、マリア・ラビスタはスティーブ・ブラスターズ王子の事を敬い、支え、より良い関係を築き協力していく事を誓います。そして、王子の最愛であるナタリア・ルナ子爵令嬢ともより良い関係を築く事を誓います。」
マリアの言葉にナタリアは嬉しそうにお辞儀をした。ルナ子爵は拍手をし、ラビスタ公爵も拍手をした。それに続くように貴族や兵士達も拍手をし、誓いの儀を見届けた。その異様な光景を、ルーシュは涙を流しながら見届ける事しか出来なかった。そして、マリアとスティーブは松明の火を寝転がる罪人の近くに傾けて火を灯した…。
寝転がったまま焼かれた者、途中で意識を取り戻した絶叫を上げる者、火で拘束が破れて暴れて逃げようとした所を兵士に刺された者、最後まで泣き叫んでいた者…元凶達の処刑は終わった。
そしてマリアの新しい人生が始まりを迎えたのだった。
表現って難しいです。ルーシュ達への罰は王道の火炙りでした。次で最後になります!
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