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馬鹿にされない為に、罰を変えます  作者: 徒然草


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4.罰の始まり

 罰の始まりです。


「全員集まったようだな。」

 

 城の中心にある玉座に間。王と王妃が玉座に座り、傍らには息子であるスティーブと婚約者であるマリアがいる。少し離れた場所にはラビスタ公爵とハマスもいて、室内の端々には兵士達が待機している。そして王と王妃が見下ろす先、玉座の間の中心には複数の貴族達が落ち着きない様子で集まっていた。国王の言葉に貴族達は静まり返り、国王の言葉を待った。


「そなた達は此度のルーシュ・ベラドンナの犯した事件で証拠がないにも関わらずマリア・ラビスタ公爵令嬢が犯人だという言葉を鵜呑みにし、表立ってラビスタ公爵令嬢を侮辱する言動をして冤罪を負わせる事に加担した。その罰としてラビスタ公爵家に慰謝料を支払うように命じるつもりだった。だがラビスタ令嬢の提案で罰の内容を変更する事にした。」


「…ラビスタ公爵令嬢の提案で…?」


 貴族の誰かが呟く。()()マリアの提案を国王が受け入れたのか、と信じられない様子で貴族達はざわついた。


「早速だが今から罰を受けてもらう。まずは…ダニー・ボロス。」


「なっ!? おい、何をするんだっ、離せ!!」


 国王が兵士達に目線を送ると、ある1人の兵士が他の兵士達に拘束されて引きずられるように真ん中に移動してきた。拘束された兵士、ダニーは抑えつけられて床に跪かせられた。ダニーは訳が分からず身動きが出来ないまま狼狽えており、貴族達も何事かと兵士を戸惑いながら見る。


「その男、ダニー・ボロスはラビスタ令嬢が冤罪で牢屋に入れられた際、身の程を弁えずに公爵令嬢に暴言を吐いた者だ。」


 国王の言葉に辺りは静まり返った。ダニーは恐る恐る顔を上げるとマリアと目が合った。マリアはただ冷たい目で見返してきて、ダニーは怯えたように震え上がった。


「…ラビスタ令嬢を牢屋に入れたのは王家の判断であり、牢屋に閉じ込めるまでの行いに罪はない。だがラビスタ公爵令嬢が罪人と確定していない状態で兵士であるにも関わらず、公爵令嬢が犯人だと決めつけ暴言を吐いた…それも王子の婚約者である令嬢にだ。よって、まずお前に処罰を与える事にする。」


「ひっ、ま、待って下さい! わ、私は…っ、がぁっ!!」


 兵士達に押さえつけられながら何かを言おうとしたダニーの髪を兵士の一人が鷲掴み、床に勢いよく押し付けた。ガァンッ、という男の額が床に激突する音と男の漏れた声が響いた。


「抵抗するな、大人しくしろっ!!」


「うっ…うぁ…。」


 ダニーは額を打った衝撃で目眩を起こしたのか、虚ろな表情で大人しくなった。ダニーが抵抗しなくなったと判断したのか兵士達は互いに目配せをすると、兵士の一人が懐から銀色の鋏を取り出した。


「…な、何をするつもりなの?」


 貴族達の中の誰かの声が漏れるが、その疑問に答える声はない。兵士はダニーの短い髪を掴み真っ直ぐ伸びるように引っ張ると、ジョキッ…と迷いなく髪を切り落とした。そしてそのまま手を止める事なくジョキジョキと鋏は音を鳴らして男の髪を切り落としていった。


「ひぃっ!?」

「な、なんだ一体!?」


 貴族達から悲鳴や声があがる。突如始まった異様な光景に、沈黙している事が出来なくなったのだろう。だが国王達は何も言わずに男をただ見ている。暫くすると兵士は鋏を持つ手を下げた。ダニーの髪はあまりにも短く、長さも不揃いな見窄らしい頭部となった。ダニーはようやく終わったのかと思いながら、様子を窺うようにゆっくりと顔を上げた。


「……っ。」


 顔を上げて見えたのは、銀色の剃刀を持った兵士の姿だった。ダニーはもう、次に何をされるか嫌でも理解した。


「…っ、痛い!」


「黙れ。」


 今度はジョリッ、ジョリッ、と頭皮に残っていた毛を削がれていく音がした。時に強く刃を当てられて痛みが走り、ダニーが声を上げると兵士に脅されてしまう。ダニーはただ早く終わってくれと心の中で祈る事しか出来なかった。


「…これが罰だ。」


 数分後、髪は全て剃り落とされて頭皮の所々に剃刀の刃でつけられた傷をつけたダニーが、項垂れたまま拘束されて連れて行かれてしまった。事の成り行きをただ呆然と見届けていた貴族達は、恐る恐る国王を見た。


「この場に呼ばれた罪人達全員、今から髪を全て剃り落とさせて貰う!!」


 国王の声が響き渡ると、貴族達が今まで以上にざわめき出した。


「っ、な、何を言っておられるのですか陛下!!?」

「髪を剃り落とす?!…そんな罰など聞いた事がありませんっ!!」

「い、意味が分かりません!!!」


 貴族達の中でも令嬢達からは罰に対する非難の声が上がった。素直に従おうとしない罪人達に、国王は顔を顰めた。


「…陛下、この罰を提案した私から話をさせて頂いても宜しいでしょうか?」


 その時、マリアが口を開いた。マリアの声にまたその場は静まり返った。国王はマリアに許可を出すとマリアは罪人達を見た。


「この罰を受ける殆どの方は私と同じ学生です。私が陥れられた時、証拠などないのに私が犯人だと決めつけて各々の当主に私が犯人だと言い、私を罪人に仕立て上げる手伝いをした方達です。」


 この場にいる貴族たちは約40名。そのうちの約8割はマリアと同い年か1、2歳違いの学園に通う令嬢と令息だ。あとは子供の言葉を鵜呑みにし、家の力を使ってマリアの罪を重くしようとした当主達が呼ばれたのだ。

 

「皆さんにお聞きします。私が犯人だと決めつけた時にラビスタ公爵家も共犯なのではないか疑った方はおりましたか?」


 マリアの質問に全員が沈黙した。


「まぁ、もしそう思ったとしてもこの場で正直に言えないかもしれませんね。ただ、殆どの方は公爵家を疑わなかったと思います。私が聞いた話によると多少悪い噂が広まった程度でラビスタ公爵家には殆ど被害がなかったそうです。ですよね、公爵様?」


「…あぁ。」


 マリアがラビスタ公爵に目線を合わせると公爵は頷いた。


「私達貴族は当主でなくても日頃の態度や行いは家の評価に繋がり、時には家が責任を負わなくてはなりません。スティーブ王子様と親しい子爵令嬢が階段から突き落とされるという大きな事件、その犯人が私だと思われればラビスタ公爵家に大きな影響を与える筈なのに、公爵家は何事もなかったのです。何故なら、皆さんは私を“ラビスタ公爵家の令嬢として見ておらず、マリアという個人を見ていた”からです。」


 貴族達の振る舞い、発言は家にも影響を与える。当主の子供が勝手にやった事だとしても家の品位や価値を下げる事が殆どだ。また誰かを陥れ濡れ衣をきせるという行いともなると、当主が指示を出したのではないかと考える事も多い。


「皆さんは、私が独断でナタリア・ルナ子爵令嬢に危害を加えたのだと思い込んだのでしょう? そして“公爵家の責任ではなく私個人の責任”と考えたという事です。」


 マリアの言葉に貴族達全員が気不味そうに顔を逸らす。ラビスタ公爵は顔を逸らさないが何とも言えない顔をしたままマリアを見た。ハマスはただマリアを見届けるように静かにしている。


「慰謝料というのは家の資金を使いますよね。“個人の責任ではなく家の責任”として支払う罰なのではないかと私は思いました。今回私は個人の責任として陥れられました。だから、皆さんにも同じように個人の責任として罪を償って欲しいと考えたのです。そしてその罰は髪を剃り落とす…“髪剃の刑”です。」


 罪人達は呆気にとられたようにマリアを見た。


「…皆さんは私をラビスタ公爵令嬢として見ていない。マリアという個人を見て軽んじ、馬鹿にして犯人だと決めつけた。だから今回の罰は個人に直接与えるモノにするべきだと考えたのです。でも鞭打ちでは一生消えない傷跡をつけてしまうかもしれません。流石にそれは酷いと思いましたので、髪を剃り落とす事にしました。髪ならまた生えますからね。」


 にっこりと晴れやかな笑みを浮かべるマリアの言葉は、まるで慈悲をかけたようにも思えた。しかし底知れない恐怖が罪人達の心に広がっていった。顔を青褪めさせて誰も何も言えない中、1人の令嬢が声を上げた。


「ま、待って下さいっ、お願いしますっ! その、私は1週間後に隣国にいる婚約者との顔合わせがあるのです! か、髪を剃り落とされるのは困ります!」


「っ、わ、私も3日後にパーティーがあります。い、慰謝料は幾らでも払いますからやめていただけませんか!?」


「お、俺も、いえ私も慰謝料で許して頂けないでしょうかっ!!」


 令嬢の声を始めとし、次々と髪剃の刑を拒否する声が上がっていった。だがマリアも国王達も表情一つ変えなかった。


「…っ、せ、せめて延期して頂けないでしょうか!? 1週間後ならば刑を受け入れ…。」


「黙れっ!! 罪人が、罰に対して文句を言える立場だと思うのかっ?!」


 スティーブの怒声が響き渡る。罪人達はビクッと身体を震わせて口を噤んだ。


「これは罰だ。お前達は何の証拠も根拠もなく、ルーシュ・ベラドンナの言葉を鵜呑みにしてマリアを追い詰めた。マリアは私の婚約者、未来の王妃なんだぞ…どうやら反省していないようだな。ラビスタ公爵、どう思う?」


「…大変遺憾に思います。我が娘を、ラビスタ公爵家を愚弄しているとしか思えません。」


 スティーブの言葉に同意するように頷くラビスタ公爵を見て、罪人達はようやく自分達の現状を理解した。公爵家に大切にされておらず、王子から愛されないお飾りの婚約者だと馬鹿にしていた。しかし今、公爵と王子、そして王家から公爵令嬢並びに王子の婚約者として尊重されている。自分達はそんなマリアに、一体何をしてしまったのか…。


「…罰は今、この場で受けて貰う。延期も変更も認めない。それと今日から1ヶ月の間、頭部を隠すために帽子やカツラを被る事を禁ずる。破った場合はより重い罰を課す事になるから肝に銘じておくように。」


「1ヶ月というのは、ラビスタ公爵令嬢が冤罪で牢屋に閉じ込められていた時間と同じです。」


 国王の言葉の後に王妃の言葉が続いた。もう誰も何も言えない。ある者は俯き、ある者は顔を蒼白にさせた。国王が大扉の前にいる兵士に合図を送ると、兵士は大扉を開けた。大扉の入り口から椅子を持った城の使用人が5名、布や鋏などの道具を持った使用人が5名、そして貴族の間で有名な理髪師が5名入ってきた。


「皆も知っているであろう、腕の良い理髪師を5名呼んだ。怪我などさせずに速やかに剃り落としてくれる。名を呼ばれた者から順番に刑を行うので前に出ろ。」


 ダニーとは違い、貴族として最低限のやり方で刑を行うという事なのだろう。間をとって椅子が置かれ、呼ばれた罪人は椅子に座る。理髪師達はプロというだけあって速やかに迷いなく髪を剃り落としていった。令嬢の中には泣き出す者もいたが、誰も気に掛けたりなどしない。玉座の間の床に落ちている髪は定期的に使用人に回収され、刑を終えた罪人は他の罪人が終わるまで待機する。


「…これで、そなた達への罰はあと1ヶ月待てば終わりだ。」


 全員の髪剃が終わった。全員の頭皮が露わになり、遠目から見れば誰が誰なのか分からない。派手な服装に似合わない頭部はとても浮いていた。そんな罪人達の様子をマリアは満足そうに眺めた。


「…明日は最も罪深い罪人であり元凶の、ルーシュ・ベラドンナとその協力者達の処刑を行う!」


 明日の処刑で全てが変わる、マリアは明日がとても待ち遠しくなった。


 



 

 城の表現難しいです…。すいません、作者は書きたいものを衝動で書いているので文才はありません。読みにくい、分かりにくいなどあると思いますが広い心で許していただけると嬉しいです。罪人達が丸坊主になった事さえ伝われば大丈夫です 笑


ここまで読んで下さりありがとうございました!

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