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羽衣の七分  作者: 剛申
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第二章 第三節 西の空が黒く淀み

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



「そうか! それがいい! ジョギングだな。うん!」


宮野さんが何か思いついたように、声を上げる。


明け方の警戒室。

時計の針が縦に並ぶ。


「ね? いいと思わないかい? 有瀬さん」

「え?」


しばしの沈黙。

突然名前を呼ばれて、きょとんとする。


「…失礼しました。なんのお話でしたか?」

「ジョギングだよ!」

「ジョギング?」


ソファで葉山先輩があくびをする。


「みんなで、朝のジョギングをするのさ」


ばっと、葉山先輩が起き上がって、宮野さんを見る

私も宮野さんを見て、固まってしまう。


「我ながら妙案だよ。な! 葉山君!」


しばし沈黙。


「…いや、俺はパス」


葉山先輩はまたソファに寝転んだ。


「いや! だめだ! これはチーム作りに欠かせないことだ!」


葉山先輩は聞こえないふり。

宮野さんの口ぶり、本気のようだ。


「そうと決まれば、善は急げだな! ユーキも交代の時間だ、呼びに行くぞ!」


宮野さんが立ち上がって、葉山先輩の肩を掴む。


「いや、いいって。やめろって。ほんとに」


嫌がる葉山先輩を、後ろから抱きかかえるように持ち上げる宮野さん。


「さあ! ユーキを呼びに行こう!」

「だから、ほんとにやめてって。わかった。わかったって」


葉山先輩を抱えて、宮野さんが警戒室を出ていく。

私も後についていく。



私たちの自室は、警戒室と同じ廊下に並んでいる。

加藤君の部屋は、4つ向こうの扉。

大人しくなった葉山先輩が、ポリポリ頭をかく。


「あの、宮野さん。警戒室、空になって大丈夫でしょうか?」

「問題ないさ。サイレンは何処でも聞こえるし、この庁舎を回るだけだからね」



加藤君の部屋の前についた。


ダン!ダン!ダン!


「たのもー!」


早朝の廊下に、宮野さんの豪快なノックが鳴り響く。


「…おはようございます」

「ああ! おはようユーキ!」

「あの…。交代にはもう少し、時間があると思いますけど」

「ああ! その前にジョギングをしよう!」


グイっと加藤君の腕をつかんで、部屋から引きずり出す。


「さあ! 行くぞ! 今日はまず5周!」


葉山先輩と加藤君の背中を、バンっと叩く宮野さん。

きょろきょろと、私と葉山先輩の顔を見る加藤君。

葉山先輩が、両手のひらを上に向けて、首をかしげる。



一周は大体400mぐらいだろうか。

雀がちゅんちゅんと鳴く中、4人がゆっくりと走る。


「なあ、加藤。お前出身どこだよ?」

「なんですか? …明石です」

「え? 関西か」

「知ってるんですか?」

「俺ら関西方面から来たからな」


私の前を行く、葉山先輩と加藤君。


「いいものだろ? 誰かと走るというのは」

「はあ、はあ、…そうですね」


育成施設にいたとき、ミナモと走ったのを思い出す。

他愛もない話をしていたように思う。


「訓練のとき、こうして、よく話したように、思います」

「そうだろ。体験を共有することで、距離が近づくのさ。大げさじゃなくていい。

ちょっとしたことでもね」


前を走る、葉山先輩と加藤君の大きな身長差。

凸凹な私たちの距離は、走ることで縮まるのだろうか。



上がった息を整える。

アヴァロンを見るように、私たちは並んで座る。


「みんな! よく頑張ったな! これは僕からのねぎらいだ! 受け取ってほしい!」


警戒室に常備されているペットボトルの水を持ってきて、宮野さんが配る。


「いや、これ…。まあ、ありがとな」


葉山先輩が、不満そうにそれを受けとる。

私も軽くお辞儀して、水をもらう。

火照った身体。

喉を通る、冷たい感触が心地いい。


「あの…。聞いてもいいですか?」


隣の加藤君がこちらを見る。


「なに?」

「ハルカさんは、いつから、かぐや姫と戦ってるんですか?」


ぴくっと身体が反応する。


「ごめんなさい。言いにくかったら…」

「んーん。ほんの少し前からだよ」

「…そうですか」


悩むようなそぶりの加藤君。


「どうして?」

「僕は明石市の出身です。ハルカさんは関西で戦っていたんですよね?」

「うん」

「僕は目の前で、かぐや姫を見たことがあるんです」

「そう…」


日の昇りきらない、ぼんやりと暗い空を見上げる。


「ハルカさんは、その時、戦ってくれた人かなって」

「ごめんね。でも、葉山先輩はそうかもしれない」

「葉山さんも知らなかったそうです。随分前のことなので」


加藤君が葉山先輩を見る。


「そう…。関西にはベテランの人がいるよ。ここに来ていればよかったのにね」


加藤君はうつむいて、ペットボトルを見る。


「…いえ、会わなくてよかったんです。複雑な気持ちになるかもしれないから…」

「え?」


空を見上げる加藤君。


「そのとき、母は亡くなりました。商店街で火事が起きて、逃げ遅れていたんです」

「…」

「かぐや姫の光線で建物が壊れて、下敷きになりました」

「そう…」


私と加藤君は、境遇が似ているのかもしれない。

並んでアヴァロンを眺める。




「さあ、今日も張り切っていこう!」


宮野さんのジョギングは、次の日から毎日続いた。

非番で寝ていても、大きなノックで起こされて強制参加。

一週間もしたころには、もう慣れっこになっていた。


「はあ、はあ、ハルカさんはいつから訓練を?」

「施設に入ったのは、5年前ぐらいかな?」

「長いですね。僕は4年。収容されて、すぐに育成施設です」

「そう。私は育成施設に行くまで長かったな。まだ小さかったからね」

「いつ高濃度汚染者に?」

「10年、経ったかな」


加藤君とは色んな話をした。

私の過去の話も。

母の話も。



“先月の杭州での空間崩壊以降、軍部の乱れから、難民流入が激化している問題で―”


モニターのニュース映像。

加藤君がそれを見ていたかと思えば、

壁に貼られた世界地図の方へ歩いていく。


「ねえ。加藤君は、どこか行きたい場所とかあるの?」

「どうしてですか?」

「真剣に見てるなーと思って」


地図を見る加藤君の眼差しが、年下らしくなく凛々しく思える。


「…海外旅行が憧れだったんです」


加藤君が私へ振り向く。


「ハルカさんは、行きたい場所はありますか?」

「そうだね…。地元はどうなったのか。見たいような、見たくないような?」

「地元…。いつか、行けるといいですね」

「うん…」


私と加藤君は、黙ってお互いを見る。


「なにしてんだよ加藤! 年上のお姉さんに惚れちまったか?」


葉山先輩が入ってきて、私たちの様子を見ては、

加藤君の頭をくしゃくしゃと撫でまわす。


「ち、違いますよ! やめてくださいって葉山さん!」


二人はよく茶化しあいをしている。

加藤君の暗い表情は消えた。

よく話す、賢い男の子。

それが今の加藤君。

葉山先輩から逃げる様に、加藤君は私の隣に座る。


「はあ…」

「大丈夫?」

「はい。葉山さんは僕の天敵です」


加藤君が葉山先輩を笑いながら見る。

葉山先輩は向かいのソファーに寝転んで笑う。

私もつられて笑う。


「二人の仲がよさそうで良かった」

「そうですか?」


加藤君がキョトンとしながら私を見る。


「うん。宮野さんは、チームのみんなが仲良くしてるのを、望んでるみたいだから」

「…それは、かぐや姫と戦うためのチーム作りとして、ですよね」


加藤君がうつむく。


「そうじゃないかな。助け合える環境づくり…、だと思う」


私は天井を見上げる。


「僕は、出来ることなら、かぐや姫と戦いたくありません」

「うん…。私もだよ」


三人とも黙り込む。




静かな夜。

ポチャポチャと外から雨音が聞こえる。

宮野さんは休憩に入り、三人で待機。


「フルハウスです」

「うっわ、まじかよ」


加藤君と葉山先輩は、警戒室でポーカーをしている。


「はぁ~。今月の支給無くなっちまう…。ここで負けられんねぇ。もう一回」

「いいですよ。次、葉山さんが勝ったら全部チャラでも」


どや顔の加藤君。


「え…。まじかよ?」

「はい。その代わり、お互いに下りるのは無し。全ベットの、全力勝負です」

「いいぜ。受けてやるよ」


加藤君がトランプをシャッシャと手際よく混ぜる。


「でも、葉山さんが負けたら、質問に一つ答えてもらえますか」

「なんだよ質問って」

「葉山さんが負けても、答えてくれたらチャラにしますよ」

「え、そんなんでいいの? もちろんいいぜ」

「約束ですよ」


なんか面白そうだな。

私はルールを詳しく知らない。

加藤君の隣に座って、本を読みながらチラチラと見る。


パラ、パラ。

トランプをお互いがめくる。


「…よし。オープン。ストレートだ」


葉山先輩の、数字が並ぶ手札。

6,7,8,9,10。


葉山先輩が加藤君をみて、ニヤリと笑う。


加藤君も手札を見せる。

10,J,Q,K。そして、ジョーカーのカード。


葉山先輩が驚いたようなそぶりを見せる。


「まじか…。はあ…。でもチャラにしてくれるんだろ?」

「ええ、質問に答えてくれたら」

「いいぜ、なんでも聞けよ」


加藤君がトランプをまとめて、

束をトントンと机の上で整える。


「…では、はい、か、いいえ。でお願いします」

「もったいぶるなよ」


少し悩むそぶりの加藤君。

私の方にチラと目をやる。

しばらく黙ったあと、加藤君は葉山先輩を見つめる。


「逃げませんか。僕たちで。ここから」


沈黙。

神妙な顔つきに変わる葉山先輩。

私は唾をゴクっとのみ込む。



カチカチと時計の針が進む。


「…逃げるって、どうやってだよ」

「はい、か、いいえ、です」


腕を組んで、考えるような葉山先輩。

長い静寂。



「…いいえ、だ。…現実的じゃない」


加藤君と葉山先輩は見つめあう。


「…そうですか」


加藤君が宙を見つめる。

彼は今、何を考えているのだろう。

私にはわからない。




ウウウウウウウウウウウ!!!

大きなサイレン音。


九州の仮配属から、もうすぐ、ひと月という頃。

とうとう、その日が来てしまった。

全員のチョーカーの小さいランプが光る。


「…出撃だな。みんな、モニターを注意して見よう」


みんな黙って情報を見る。

粒子濃度マップの表示。

宮崎市のようだ。


「20分ほどの距離だな。急ごう!」


宮野さんを先頭に、白いアヴァロンへ駆け出していく。


「各自、装備を整えて!」


宮野さんのハキハキとした指示が、まるで水野先輩のようで頼もしく思える。


私は加藤君を見る。

備え付けられたハンドガンを、手際よく確認している。

私やミナモと同じように、彼も訓練期間を経てきたのだ。

到着までの準備に、手間取りはしないだろう。


「対応隊! 発進いいか?!」

「…お願いします!」


機長の問に、宮野さんが私たちをクルっとみて答える。

間髪入れずに、浮上するアヴァロン。


私にとっては3度目の。

私たちにとっては、初めての戦闘が始まる。



一通りの銃器の確認を終え、私はフライトユニットを装着しようと、壁に背を向ける。


「皆さん、動かないでください」


加藤君の声。

何事かと彼を見る。


加藤君が、ハンドガンを機長に向けている。


「貴様!」


副操縦士が反射的に、ハンドガンを加藤君に向ける。


「ユーキ! なにをしているんだ!」


宮野さんが一歩加藤君に近づく。


カチャ。

加藤君の、もう片方の手のハンドガンが宮野さんに向けられる。


「動かないでください。」


手を止める私。

じっと加藤君を見る宮野さんと葉山先輩。


「本部! 適合者の反乱だ! 本部!」


パン!

乾いた銃声。

宮野さんに向けた銃が、天井を撃つ。

全員が黙りこむ。


「メインパイロット。両手を上げてください」


両手を上げる機長。

副操縦士を横目で見る加藤君。


「操縦はあなたがしてください」


副操縦士は加藤君をひと睨みしたあと、

銃をしまい、操縦桿を握る。


「反転して進路を西に。海を越えます。最大高度を取ってください」

「…EEZを越えれば撃墜されるぞ。それでなくても―」

「そうかもしれませんね」


機長の言葉を加藤君が遮る。



”Twenty minutes”


「ユーキ。何がしたい。このままだと間に合わなくなるぞ」

「そうですね」

「崩壊が起きれば、また多くの人が死ぬだろう」

「ええ」

「それでいいか? 君は」


じりじりと、にじり寄ろうとする宮野さん。

加藤君との距離は3mほど開いている。

私と葉山先輩は、後ろから加藤君を見ている。


「それ以上動けば、撃ちます」


微動だにしない加藤君。

宮野さんは飛び掛かる機会を伺っているようだが、

加藤君の真剣な目に、たじろいでいるのかもしれない。


「…目的はなんだ?」


葉山先輩がむくっと立ち上がる。


「軍から逃げるのが目的か?」

「…そうです」

「もし国外に逃げれても、世界中似たような状況だ。どうせ、まともな生活は送れないぞ」

「やってみないとわかりませんよ」

「逃げて、隠れて、誰にも接触せずに生きることになるぞ」

「…ええ」

「そんなことが出来ると、本気で思うか?」

「…やってみないとわからない、と言っているんです」


加藤君は黙って、葉山先輩を睨みつける。


アヴァロンが雲を抜け上昇していく。

宮崎から離れていく。


「…加藤君。教えて」


私は加藤君に向き直る。


「なんですか?」

「加藤君はどうして、ここから逃げたいの?」

「……ハルカさんは、かぐや姫と戦いたくて、戦っているんですか?」

「…違うよ」

「戦わなくていいなら、戦いたくないんじゃないですか…!」


加藤君の語気が強まる。


「そうだね」

「なんで僕たちが、戦わないといけないんですか?」

「…私たちしか出来ないからだよ」

「見ず知らずの人の、家や街を守ることに何の意味があるんですか?」


加藤君の怖い目つき。

目をそらしてしまいそうになる。


「………あるよ」

「なんです?」

「私たちと、同じような人を出さないようにだよ」


私は唇を少し噛みしめる。

左腕のブレスレットを隠すように、静かに握る。


「僕はそうは思えません」

「加藤君。お母さんがいなくなって寂しいでしょ。私もそうだよ。多分、他の人だって…」

「僕は、見ず知らずの人よりも、身近な人を守りたいんです」

「身近な人って?」

「…皆さんのことです」

「……」


葉山先輩が加藤君を睨む。


「俺はそんなもん、頼んでねーよ」

「ええ、わかっています。自己満足だということも」


葉山先輩が一度うつむいた後、あらためて加藤君に向き直る。


「俺な。昔は仲間といつも馬鹿やってさ、楽しかったよ。もちろん面倒なこともあった」

「…それが何か?」

「高濃度汚染者だって言われてさ、苦しかったよ。もう、アイツらとは二度と会えないんだってな」

「…」

「教えてくれ、加藤。お前の案に乗れば、またアイツらと会えるか? またライブできるか?」

「…」


加藤君も、葉山先輩も、苦しそうな表情を浮かべる。


宮野さんが手のひらを加藤君に見せる。


「ユーキ。一つ聞かせてくれないか」

「…なんですか?」

「この後どうするつもりだ。俺たちはどうすればいい?」


加藤君は、宮野さんと機長や、副操縦士を交互にチラチラと見る。


「迎撃不能な高度を維持し、山岳地域上空の超高高度から、パラシュート降下します」


加藤君は宮野さんを睨む。


「大陸は空間崩壊以降、防衛網が弱っています。難民の流入も激しい。今なら可能でしょう」

「……そうかな? あちらの軍事力は強大だ。降下中に狙撃される可能性もある。山脈の真ん中に降りても、十分な食料もないぞ」


宮野さんがじりじりと、加藤君ににじり寄る。


「成功率は低い。それで誰かが死ねば、君の言う、みんなを守りたいという思いはどうなる?」

「…それ以上近づけば撃ちますよ」


カチャと加藤君の銃が宮野さんの頭部へ向けられる。

宮野さんは尚も加藤君へにじり寄る。


「有瀬さんや、葉山君が死んだら、それで君は納得するのか?」

「…いいえ」

「なら―」

「今考えられる、もっとも成功率の高い案です」

「しかし―」

「かぐや姫と戦えば、いずれ死ぬ。終わりのない戦いじゃないですか。それよりも、生き残れる可能性は高いと思いませんか」

「だが、必ずじゃない。それでいいわけがないだろう」



“Thirty minutes”


あと30分でかぐや姫が現れる。

時間が迫ってくる。

私たちは宮崎から離れていく。

急がなければ。

戻らなければ。


…なぜ?


私は、かぐや姫と戦わないといけない。


どうして?


どうして、私は、かぐや姫と戦わないといけないの?



“見ず知らずの人の、家や街を守ることに何の意味があるんですか?”

“かぐや姫と戦えば、いずれ死ぬ。終わりのない戦いじゃないですか“

“僕は、見ず知らずの人よりも、身近な人を守りたいんです”


“逃げて、隠れて、誰にも接触せずに生きることになる“

“苦しかったよ。もう、アイツらとは、二度と会えないんだってな”

“またアイツらと会えるか?“


……。


加藤君を真っ直ぐに見る。


「加藤君。私は、行きたくない」

「…」


加藤君は悲しそうな顔を見せる。


「私はまた会いたい。関西にいる、みんなにも。ここにいる、みんなにも」


静寂。


加藤君の表情が少し和らぎ、笑顔のようなものを見せる。


「わかりました。ごめんなさい。ハルカさん」


宮野さんに向けられた銃口は、加藤君のこめかみに向けられる。


「ユーキ!!」 「加藤!!」


宮野さんが、加藤君に飛び掛かる。


パン。


銃弾が空を切る。

宮野さんが加藤君を、床に押さえつける。

間髪入れず葉山先輩も、足元を押さえつける。


「は、放してください!」

「だめだ! 死ぬな!」


宮野さんがぎゅっと押さえつける。


「もういいでしょ!」

「だめだ! 行かせない!」


ばたばたと、もがく加藤君を必死に止める二人。


そのときだった。

ピピピピと加藤君のチョーカーが小さく鳴る。


「ぐ! お! おえ!」

「ユーキ?!」

「お、お、お、」

「加藤!」


押さえつける力を緩める宮野さん。


加藤君は首に巻かれたチョーカーを掴もうと、

爪をガリガリと立てる。


「く、くそおおおおお!」


葉山先輩が加藤君のチョーカーを外そうと、必死に掴みかかる。

しかし、喉に食い込むチョーカーを掴みあげることができない。

宮野さんも、チョーカーと首の間に指を入れようとするが、

隙間がなくて入らない。


「死ぬな! ユーキ! 死ぬな!」


加藤君は、口から泡を吹いて動かなくなった。

そのあとも、二人は必死にチョーカーを外そうとしている。

何分そうしていただろう。


私は口を押えて震えるしかなかった。


※ありがとうございました。

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