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英雄  作者: ゲシンム
第二章 抗えぬ欲
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宇宙人たちとご対面

 眩しさで塞いだ瞼をゆっくりと開ける。そして、空の目に新たな情景が飛び込む。


 いつの間にか動くようになっていた体を動かし辺りを見回す。そこは、壊れたビルが立ち並び、塗装された道路が抉られ、人が住んでいる気配など微塵も感じさせない、そんな場所だった。廃れた惑星。確かにゼウスの言った通りの惑星だった。


 しかし、空は初めて来たはずのこの場所に見覚えがあった。このような廃れた場所など訪れたことのない空。立つことも見たことすらないはず。しかし、空はこの場所を確かに知っていたのだ。


「ちょっと待って! ここ、テレビで見たことあるかも!」


 空の代わりに代弁したのは、まさかのメイだった。その内容は、メイらしいおかしなもの。このような廃れた場所、ましてや他の惑星のことをテレビが取り上げるはずなどないのだから。


 しかし、メイの言葉に確信を持ったのか、ギハンは何かに気が付き、そして自身の目を疑った。


「ここは…… まさか……!」


 目の前の光景が衝撃的過ぎたのか、ギハンは絶句した。見たことのある壊れたビル、見たことのある抉られた交差点、見たことのあるひび割れた銅像。ギハンはその景色が東京の一部と重なって見えた。


「驚いたかい?」


 言われた通り驚いていたギハンの耳に声が入る。声のした方向に顔を向けると、やはり、そこに居たのはゼウスだった。


 ギハンは目の前に存在するありえない景色について問い質そうと、ゼウスに声を掛けようとした。しかし、ゼウスの目線を見て、声を掛けられたのが自分だけではないことに気が付き、メンバーの方に視線を向けた。


 驚いている者、そうでない者が半々と言ったところ。その反応が当然のものだ、と驚く者たちに共感を覚えていた。一方、驚いていない者に対してはどんなメンタルをしているんだ、と別の意味で驚きを示した。


 そんな驚いている一同を一通り眺め、ゼウスは続けて言葉を発した。


「君たちも薄々感づいていると思うんだけど、ここは地球の東京…… じゃないよ。ただ似ている場所ってだけ。ここは今から百億年以上も前に滅んだ地球によく似た惑星なんだ」


 今地に足を着いている惑星が地球とは異なる、と説明されても、中々信用することができなかった。それほどまでにこの地は東京と似ているし、ここが滅んだ東京だと言われても信じられるほどだった。


「これが東京じゃないだと? それにしてはあまりにも似すぎている。こんなことが本当にあり得るのか?」


 ゼウスの言葉に、ギハンよりも先に異議を唱えた者は、スーツを着た女性だった。気の強そうな女性は、その見た目通りに神が相手でも敬語を使っていない。それはともかくとして、やはりギハン同様、この惑星の存在を信じられない様子だった。


「全く似た惑星が見つかるほどに、宇宙は広いってことさ。宇宙人だって、現在に至るまでに科学技術を駆使しても見つけられなかっただろう?」


「宇宙人はまだ見ていないから、『宇宙が広い』(その)判断材料にはならんな」


「も~。シンスイは頑固だな~」


 スーツの着た女性、シンスイはゼウスという存在にも怯まず、ため口で会話を行う。しかし、気丈な言動を振舞う彼女でも、景色に圧倒され、驚きを隠しきれていなかった。


「そんなに疑うなら自分の目で確かめてみればいい。ほら、相手チームのご登場だよ」

 ゼウスが一言そう言うと、壊れたビルとビルの間から次々と人影が姿を現した。


 宇宙人の出現、と誰しもが息を呑んで見守る中、現れたのは触覚が生え、肌の色が緑色の見たまんまのエイリアン! などではなかった。激烈な登場が期待される中で現れたのは、人間の姿をした生命体だった。


「これはこれは。わざわざ皆さんでお出迎えとは。随分、お待たせしてしまったみたいで」


 現れた十人の内の一人は、一歩前に出て挨拶を交わす。惑星代表と呼ぶには後ろの屈強な面々と比べると、大層ひ弱な老人に見えた。腰を曲げて手を後ろに回し、装いものは白衣と眼鏡。おまけに白い長髭で、服の隙間から覘く四肢は華奢という言葉が相応しいほどだ。傍から見ても、とても戦えるようには見えなかった。


 一方、後ろで待機している九人は、黒色の防護服に身を包み、それぞれが銃を携えていた。表情を殺し、規則正しく立ち並ぶその姿はまさに戦場兵、つまり「人」だった。前に立つ老人含め、十人はとても宇宙人には見えず、そのフリをするエキストラだと言われても信じられるほどだ。


「……よくもまぁ、堂々と嘘を付けたものだな」


 相手のメンバーを見て、シンスイはゼウスに呆れたように物を言った。彼女もまた、前に立つ彼らが宇宙人だということを信用できずにいた。彼らを問い詰めるでもなく、その矛先はゼウスへと向いた。


「まぁまぁ。それを言うにはまだ早いんじゃない?」


 ゼウスはシンスイの反応を想定していたように振舞う。セッキの時といい、宇宙人出現の時といい、ゼウスは終始、全てが想定内だと言わんばかりの話し方をする。全てを見透かしたような態度と相まって、ゼウスが神であるという事実がより、現実味を帯びさせた。


 二人の会話を聞き流し、老人は辺りを見回す動作をした。戦場視察か、あるいは敵情視察か。ギハンは老人の動きに気を配った。


 しばらく、老人が見回した後、再びゼウスの方を向き直した。その後に老人が放った一言は、ギハンが想定だにしていなかった言葉だった。


「おや、私たちが二番目ですか。他の二チームはまだ着いていないのですかね」


 ギハンは目に続いて、耳を疑った。彼は今、なんと言った? 他の二チーム? 今回参加するのは二つの惑星だけではないのか? 参加する惑星は四チームなのか?


 頭が混乱した。そして、混乱しているのはギハンだけではなかった。リギラやリエガ、さらに他の地球軍代表メンバーも、老人の言葉に引っ掛かりを覚え、動揺していた。


「あいつ。今、なんて言った?」


「他のチームだと?」


 セッキとシンスイは、自分が聞いた言葉を信じられず、確認のための言葉を口にする。その言葉はギハンが抱いた疑念と同じ。ただ、言葉を声に出しても、未だ処理が追いつかないでいた。


「ゼウス!」


 戦う相手チームが複数あることを悟り、シンスイは怒りの矛先をゼウスに向けた。


「あれ? 言ってなかったっけ。今回、この戦いに参加するのは、僕らのチームを含めて四チームだよ」


 能天気に答えるゼウスに、ギハンはまたも絶句した。そんな大事なことを話さないゼウスに対して、怒りを通り越して呆れの域に達するほどだった。


「ほら、そうこう言ってる間に他のチームが着いたよ」


 ゼウスは何度目かの悪びれる様子のない声を出して、意識を別の方へと向ける。老人率いるチーム一同は、ゼウスの声に引っ張られて視線を同じ方向に向けた。動揺に駆られていたシンスイたちも、怒りを抱くことが無駄だと悟り、渋々顔を同じ方向に向けた。


 視線の先にはこちらに向かって歩いてくる十の影。ぼやけた輪郭しか見えていなかった影は、近付くにつれて徐々にその姿形がはっきりと二十一人の瞳に映る。


 鋭い牙に、セッキよりも強面な人相。巨大な体躯からぶら下がる腕には、こん棒や斧などが携えられていた。その全貌を目の当たりにして、シンスイは静かにゼウスの話が真実であることを悟った。現れたその姿を見ては、流石に宇宙人であることを認めなければいけなかった。


 それは異世界小説で頻繁に出てくる架空のモンスターと類似していた。「異世界」、つまりは他の惑星である。


 そしてその真なる生物こそ、オークである。軽い振動を地面に響かせていたオークたちの足音は、二チームの前まで来ると、やがて止まった。オークたちは鋭い目つきで空たちのことを睨んだ。


 しかし、地球軍メンバーも老人率いるメンバーも、誰一人として怯むことはなかった。空の中にいる天使以外は。凶悪な面に、圧倒的な体格。そんな容姿を持つ彼らを前にしても一切怯まないのは、惑星代表である何よりの証。彼らは黙って、オークたちの行動を観察していた。


 皆がオークたちに興味の眼差しを向けていると、一体のオークが老人と同じように一歩前に出た。他の者と異なり、そのオークは一際目立つ重そうな大剣を、軽々と片手で肩に担いでいた。


 好奇の目に晒されていたオークは、ゆっくりと大きな口を開いた。


「時間通りに来たつもりだったが…… 予定の時間を履き違えていただろうか」


 重低音の声が、体の芯まで響き渡る。迫力。存在感。たった一声出しただけでそれを感じる。先ほどのセッキの怒りが子供だましに思えるほどだ。その佇まいを見て、その場に居る誰しもが同じ感想を抱いた。


 今、この場に居るどの惑星代表よりも、このオークは強い。


 二十人が大剣を持つオークの迫力を感じ取っている中、ゼウスは高みの見物を決め込む。


 そして、皆がそのことを悟ると、興味の目つきから敵を見る目つきへと変えた。悪という感じはしないが、彼は紛れもない敵なのだ。これから戦いが始まれば、最大の障壁となるのは間違いなく彼だろうと。

目の前のオークの強さを理解しても、怖気づく者などなかった。それどころか、闘争心を剝き出しにする者さえいた。


 流石は惑星代表と言うべきか。オークを観察する者や作戦を練る者など、この場には逃げることなど一切思わず勝つことのみを考えている者しか居なかった。


 オークは気にする素振りなど見せず、堂々と立っていた。


「大丈夫じゃよ。わしらも今着いたところじゃ。時間もちゃんとあっておる」


「そうそう。それに、まだあともう一チーム残っているしね」


 多くの者が現最強角に殺気立つ視線を送る中、老人とゼウスは温厚な対応を見せた。


 オークは二人の言葉を聞いて、周囲を見回す。途中、自分に警戒する目を向ける者たちが視界に入ったが、それでも気にする様子がなかった。


「どうやら、そのようだな。それでは、残りのチームが来るまでゆるりと待つとしよう」


「いや、その必要はないみたいだよ。噂をすればなんとやら、だ」


 ゼウスは真っ先に視線をずらし、またも他の者の視線を誘導した。一同は同じ方向に顔を向け、最後のチームの登場を待った。するとすぐに、建物の影から十の人影が現れ、空たちの下へと近付いて行く。


 その集団は他のチームとは違った異才さを放っていた。構成メンバーは全員が女性で、その中には小さな女の子の姿もあった。全員が同じ軍服を着て、それぞれが武器のようなものを所持していた。荒々しさを演出しながら登場したオークたちとは異なり、女性たちは静かに、そして優美に姿を現す。


 女性だらけのチームを率いるのもまた女性。一番前に立ち先導するその女性は、腰まで伸びた黒く美しい髪をなびかせて、悠然と歩く。腰にはその美貌に似合わぬ剣を携え、片方の手で鞘をしっかりと握りしめていた。鋭い目つきの奥に覗かせるのは紫の瞳。その目は真っ直ぐに前だけを見据える。凛とした佇まいは気品さを感じさせた。



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