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英雄  作者: ゲシンム
第一章 善と悪、成長と童心
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死神戦・第三幕

 両者の第一撃は見事に相打ち相殺された。


 死神が一度に一撃しか攻撃できない大鎌であるのに対し、空は一回で二度攻撃を可能とする拳闘士であるため、次の攻撃は空のターンであることは当然だった。


 空が第二の拳を繰り出す。


 死神はこれを軽くいなし第三の攻撃を空に繰り出す。


 空もこれをいなし攻撃を繰り出す。


 互いに攻防を繰り返し一撃を入れるために奮闘する。拳闘士である空は手数の多さで死神に攻撃を仕掛ける。一方の死神はリーチの長さを活かし空に攻撃を行う。


 両者の力量が拮抗しお互いに攻め手に欠け時間だけが過ぎようとした矢先、死神が先に仕掛けた。


 なんと、死神は持っていた己の唯一の武器、鎌を上へと放り投げたのだ。空は上空に投げられた鎌に視線を誘導され、一瞬気を取られて隙を作る。その隙を見逃さず死神は空に攻撃を仕掛ける。


 死神の両手には小さな鎌が二つ握りしめられていた。それは空が死神に見せた双剣の具現化と同じものだった。死神は空の闘い方を観察し自身のエネルギーで武器を具現化することに成功していたのだ。


 両手に備わった小さな鎌は双剣ほどの大きさでリーチは短くとも、機動力は大鎌より高かった。死神は両手に小鎌を握りしめ怒涛の攻撃を空に仕掛ける。


 手数の多さが五分となった今、一歩遅れを取った空は防戦を強いられることとなった。止まぬ死神の攻撃は留まることを知らず、空に反撃の隙を与えない。


 ここで、防戦一方の空に更なる死神の攻撃の手が加わる。先ほど投げた大鎌が空めがけて落ちてきたのだ。死神は空を鎌の落下地点すぐ下まで追いやり、空に気付かれないように誘導していたのだ。


 しかし、死神は投げた鎌と誘導に気が向くあまり、小さな鎌での攻撃にまで意識が回らず、無意識のうちに攻撃を緩めてしまっていた。


 空は死神の攻撃の手が緩んだことに気が付いた。優勢であるはずなのに攻撃を緩めた死神に妙な違和感を感じふと上を向いた。先ほど死神が投げた鎌が空の目の前にまで迫っていた。


 空はこれをギリギリで回避した。鎌が地面に突き刺さる。空はすぐさま死神の方を向いた。


 死神は次の攻撃を仕掛けようと空に二つの鎌を横から振りかざしていた。空はこれをもバックステップで避ける。からぶった二つの鎌は突き刺さった大鎌に当たるも、死神は気にせずそのまま大鎌ごと振り切った。大鎌は地面から抜け出て空中で回転した。


 死神はすぐに小鎌を放り捨て、大鎌に持ち替え空に振りかざした。空は片手でこれを受けもう片方の手で反撃した。死神は空の拳を自身の拳で捉え防御した。


「流石、やりますね。今のは割と自身があったのですが!」


 死神は取っ組み合いの中、空に賛辞を述べる。最後の「が」の文字を放つと共に鎌を振り切り空と距離を取った。


「ならこれはどうでしょう」


 死神は両手で鎌を担ぐように構えるとその場で勢いよく空の方に振り下ろした。鎌が空に届くには距離が足りない。しかし、死神はこれで正しいと言わんばかりに鎌を豪快に振り下ろす。


 鎌には死神のエネルギーが先ほどより多く纏わり付いていた。そのエネルギーは死神が振り下ろすと鎌から引き離され、空にめがけて発射された。放出されたエネルギーは刃の形を保ち地面を削りながら空との距離を縮めていく。


 空は放出された死神のエネルギーを見て受けるのではなくとっさに避けた。行き場を無くしたエネルギーの刃は空の後ろの校舎にぶつかり、煙と瓦礫を作って盛大に破壊した。空は後ろで壊れる音を聞きながら死神から目を離さなかった。


「賢明な判断ですね。今その腕で受け止めていたらあなた、今ごろ片手がありませんでしたよ」


 死神は脅すように空に話しかける。


「初めてやってみましたがこれはエネルギー消費が激しいのであんまり使いたくはないですね。しかし、そうも言ってられない相手であることも事実。出し惜しみはしてられませんからね」


 死神は相手を認めていることを空に伝える。空はいつも通り無反応で返す。


(そうはいってもあなたがよりエネルギーを纏えばガードできたでしょうが。それに今のはエネルギー量をかなり使用して放出しましたからね)


 死神は心の中で冷静に自己分析した。怒りに囚われて目の前が真っ暗になる死神の面影はすでにそこには無く、的確な判断を下せる強敵がそこには居た。


「今、空のことを認めたの?」


 死神の発言に驚きリギラが事実確認のために聞き返した。


「ええ」


 死神は淡白に返した。


「人間なんか認めていいのかよ。プライドが許してねぇんじゃねぇか。」


 続けてリエガが死神に煽るように言葉を発する。


「今、この状況において不要なものだと判断しました」


 死神はリエガの煽りにも怒りを見せず、淡々と返した。死神の反応をみて悪魔の舌打ちが聞こえてきた。


「さて、ではどんどん行きますよ」


 死神がそう宣言すると、死神は鎌を目の前に翳してプロペラのように振り回す動作を行い、鎌を構え直して空に振り切った。同時に死神のエネルギーが放出される。


 しかし、今度は先ほどよりエネルギーの刃が小さく、複数になって空に襲い掛かった。空は今度は避けずに少しだけエネルギーを腕に纏って、手で振り払うように一つ一つ破壊していった。無数の斬撃の音と共に砕け散った小さな鎌は光の泡となって消失していった。すべての鎌を破壊し終えた後、空は死神に向かって飛び出した。


「今度は振り落とすなんて、察しが良いですね」


 死神が二度目の賛辞を述べると、突撃してくる空に再び鎌からエネルギーを放出した。放出されたエネルギーはまたも、切れ味の良い刃でなく無数の小さな刃の形をしていた。空は突撃する足を止め、その場で立ち止まると同じように鎌を振り落とし始めた。


 しかし、今度は空が振り落としている間に死神は二度三度と鎌を振るった。死神は大小様々な形をしたエネルギーの刃を放出した。空は一度目の刃を振り落とすことに意識が集中し、続く刃の攻撃に気付くことができず、一太刀分の切り傷を腕に負ってしまった。幸いにも死神がでたらめにエネルギー放出した分切れ味が低かったため腕の切断は免れた。


 空は二度同じことを起こさないよう、今度は避けながら死神に近づこうとした。まっすぐに突っ込めば無数の刃の餌食となることは明らかだったため、空は中庭を駆け回りながら死神に近づこうとした。死神も走り回る空に対してエネルギーの刃を放出しぶつけようとした。


 しかし、人間には到底出すことなど不可能な速度で走り回る空を狙い撃つことは至難の技であった。飛び散った無数の刃は校舎を無残に破壊していった。


 死神は空を狙い打って止めることができないと判断すると、その場で自身を中心に鎌をむやみやたらに振り回して四方八方に小さな鎌を放出した。


 空は死神の攻撃を見て中庭を走り回ることを止め、その場で跳躍した。その後、空は校舎の壁を軽い窪みが出来上がるほど力いっぱい蹴りあげて死神に突撃した。腕を顔の前でクロスし、エネルギーを腕に蓄え、鎌が顔に当たらないように防御した。


 空は体中に小さなかすり傷を残しながら小鎌の嵐を突破していく。空の勢いを小鎌で止めることはできず、空はクロスした勢いのまま、避けることができなかった死神の腹に激突した。


「ぐッ‼」


 死神は鈍い声を出すと空が衝突した勢いそのまま、後方へ吹き飛ばされた。死神は地面に削られながら後ろに飛ばされるも、地面だけの摩擦力で動きを止めることはできず、鎌を杖代わりに地面に付き差しその勢いを殺した。


 死神が顔を上げるとすぐ目の前に空の姿があり、飛び蹴りの姿勢で自信を踏みつけようとしている姿を捉えることができた。死神はすぐさま起き上がり空の攻撃を避ける。空が踏みつけた足元の地面が凹む。


 空は避ける死神に追撃を仕掛ける。死神は空にやられた腹部のダメージと無理やり体を起こしたことにより空の攻撃を避けることができずまともに喰らってしまった。空は絶え間なく攻撃を仕掛け続ける。


 拳を振るい、蹴りを入れた。空中へ逃れようとする死神のローブを引っ張り死神を逃すことなく一撃一撃を死神に入れる。


(このままではまずい……!)


 空の止まらない攻撃から逃れられない死神は危機感を感じていた。鎌を手放し、防御の体勢を取ろうにも、空の攻撃はそれすら許すことはなかった。死神は咄嗟に空と自身の間に両手を翳した。


「はぁ‼」


 死神は掛け声とともに両手からエネルギーを溢れさせると、そのエネルギーを暴発させた。空と死神はそれぞれ後方に吹き飛ばされた。両者は地面に倒れ込んだ。


 また、両者体を起こそうとするも酷使し、傷を付けすぎたその体は立ち上がることを困難にさせた。両者は体を無理矢理に起こすと相手を捉えて突進した。大鎌を遠方へ吹き飛ばされた死神の両手には小鎌が握りしめられていた。闘いは再び近距離戦へと変わり、両者手数で相手に攻撃を仕掛けた。


 殴り、斬り、蹴り、裂け、受け、避ける。ボロボロの体に鞭打ち両者一歩も引かず拳と小鎌を振るう。


「ッ、ああああああぁぁぁぁ!!!!!」


 死神は雄叫びを上げる。自身を奮い立たせるため。自身を奮い立たせるのは体を動かすため。体を動かすのは目の前の強敵を倒すため。死神は言葉に出さずとも、頭で考えずとも心で思っていた。


 目の前の相手に勝ちたい、自身が認めたこの人間に勝ちたい、この強敵に勝ちたい。


 勝ちたい、勝ちたい!勝ちたい‼


「……ッ!」


 傍観することしかできない二体の観戦者は唾を呑む。観戦者たちは二人の戦士の激しい戦いから目を背けることができなかった。


 そんな二人を中に住まわせる戦士の一人は拳を振るう。相手のように雄叫びを上げずとも、心に情熱を宿さずとも、その拳を振るい続ける。彼が拳を振るい続ける理由はただ一つ。天使に与えられた目の前の死神を倒すという課題を遂行する、それだけ、ただそれだけのために彼は闘い続ける。


 両者の攻撃が止まぬ中、空の拳と死神の小鎌がぶつかりあったその時、両者の持ち武器がひび割れ砕け散った。両者はすぐにもう片方の武器で相手に攻撃を仕掛けた。再び武器同士がぶつかり合い、ひび割れ砕け散る。


 両者、武器を失いながらも臆することなく拳にエネルギーを蓄え相手の顔を殴った。両者は殴られた衝撃に耐えることができず後ろに飛ばされた。


 しかし、今度は倒れることはなく空は地面に足を付け踏ん張った。死神は遠方まで飛ばされないように両手を広げ空気抵抗を作ることによって空中で静止することに成功した。


 両者は倒れずとも肩で息をしていた。それでも俯くことなくその目は相手を捉えていた。


 しかし、今度はすぐに相手に突進することはなかった。同じように攻撃を仕掛けても決め手に欠け相手を倒すことができないことを共に理解していたからである。


 死神は手を少し後ろに反らすと何かにぶつかる感触があった。死神は直感でそれが大鎌であることを理解し、それを手に取り眺めた。そしてすぐさま空の方に目を戻した。


 死神はその身を天高くへと持ち上げていった。空にそれを止める術はなく、空は黙って死神を目で追いかけた。


 死神は校舎全体を見回せるほどの高さに到達するとその場で停止した。月が雲に隠れその姿を見ることはできなかったが、雲を通過して漏れ出た残光が、死神の姿を影として映した。


 影になった死神は校舎に向かって叫んだ。


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